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2022年の経済の予測を各調査誌から分析してみる

2022年2月下旬のロシアのウクライナ侵攻を受け、世界経済は新たな逆風に直面している、COVID-19のエンデミックはまだ先になりそうである。

ウクライナ戦争とそれに伴うロシアへの制裁措置は、エネルギーと商品価格をリフトし、世界のサプライチェーンのさらなる混乱を招いた。

Oxford Economics やEMI ltd (ユーロ社)のデータを参照すると、
世界経済の成長率は2021年の6.0%という力強い回復から2022年と2023年には3.1%に大きく減速する見通しで、インフレ率は2021年の4.3%から2022年には悲観的な着地点として7.6%にまで急上昇すると予測されている。これらの経済の見通しの悪化は、最終的に消費者や企業の信頼感に影響を与え、短中期的に民間投資や消費の重荷となると予測される

世界経済の見通しの大幅な引き下げ

ウクライナ戦争による世界的な負の経済波及効果は、主にエネルギー・商品価格の上昇、プライベートセクターの信頼感の低下、地政学的リスクの高まりによる金融市場のリスクプレミア効果の上昇などが予想される。短期的な経済への影響が最も大きいのは、エネルギーや商品の主要生産国の一つであるロシアの役割から予想するに、世界のエネルギーや商品価格であると思われる。専門家の見立てでは、世界経済がロシアのエネルギーと商品輸入から部分的に切り離された経済に適応する間、戦争は1-5年続くと想定しているようだ。

出典ユーロ社:①2022年以降のデータは予測値、予測値は2022年4月時点のもの
②PPP(購買力平価)を用いた地域別実質GDP成長率

欧州経済が最も影響を受ける

ウクライナ戦争の影響の深さは経済圏によって異なるが、ロシアのエネルギー供給への影響力(需要と供給)が比較的高く、戦争の激化を巡り、不確実性が高まっているユーロ圏が最も影響を受けると思われる。ユーロ圏の実質GDP成長率見通しは、前期の3.8%から2022年には2.9%に下方修正されている原因がここにある。ウクライナ戦争はユーロ圏に長期的な影響を与え、調査会社ユーロ社によると、2023年の実質GDP成長率は2.1%にさらに減速すると予想される。

アメリカは戦争の影響を受けにくい

米国については、エネルギー面で自立していることから、戦争による影響は緩やかであろう。しかし、一連のコロナやサプライチェーンの混乱などによる経済活動の縮小により経済成長は鈍化し、2022年の実質GDP成長率は3.0%(予想値平均を0.5ポイント下回る)、2023年は2.1%と予測される。(Oxford Economics、ユーロ社)

中国も下方修正必死

中国の経済見通しも、エネルギーや商品価格の上昇、最近のオミクロンによるロックダウン実施による主要都市での規制強化により、2022年に4.2%-3.7%(-0.5 ~ 1 ) に下方修正される見込みだ

経済の不確実性が高まる中、大幅なインフレ率の上昇を予想

ウクライナ戦争とロシアへの制裁措置は、民間部門の信頼と支出を減少させ、世界的な需要回復によるインフレ効果の一部を減衰させると予想されている。

しかし、エネルギー価格の上昇がインフレに与える影響は更に増加すると予想される。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給削減、変動性の増大、エネルギー・商品価格への上昇圧力により、2001年から2019年の世界平均年間インフレ率の3.8%~4%と予測される。

ユーロ社、Oxford Economics社などで意見が分かれているが、
2022年の世界消費者物価インフレ率は7.6%(レンジは6.3〜8.8%くらいで各社意見が分かれている)、2023年には5.1%(レンジ3.6〜6.6%)に向かっていくと予想されている。

参照)Oxford Economics & 文献調査 注:①インフレ率は消費者物価指数(CPI)で測定した消費者物価上昇率を指す ②地域別実質GDP成長率はPPPを使用。

ドイツ、スペイン、イタリアでのインフレ率上昇は必至

ドイツ、スペイン、イタリアなどエネルギー依存度の高い経済圏でインフレ率の上昇の傾向が見られる。

一方で、ブラジルや南アフリカなどの資源新興国では、インフレ率の上昇が一次産品価格上昇の影響を相殺している。

2022年から2023年にかけてインフレ率が高止まりすると予想されるため、先進国、途上国双方の消費者の方が、物価上昇の重圧を感じるようになり、企業はコストと利益率の上昇圧力に直面することになるだろう。

更なるリスクに備えよ

地政学的リスクや供給条件のリスクの高まりに加え、世界経済は依然としてCOVID-19のパンデミックによるリスクに直面しています。

Economist誌やNature誌でも紹介があるように、より感染力が強く、ワクチン耐性の高いウイルス変異が蔓延する可能性がある。

2022年から2023年にかけて再びロックダウンとソーシャルディスタンスを置く措置が再び必要になる可能性はないとは言えない。

より長期的で、より厳しい社会的距離の取り方は、2022-2023年の消費、事業収入、雇用、賃金をベースライン予測に比べ大きく低下させるだろう。この悲観的なシナリオの場合では、世界の実質GDPは2022年に0.1%~0.3%、2023年に0.7%~1%に低下する可能性も示唆されている。


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