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インドにいた数学の天才。映画『奇跡がくれた数式』イギリス、2016年

原題は、The Man Who Knew Infinity。それがなぜ陳腐な邦題になってしまったかは不明ですが、原作は『無限の天才 夭折の数学者・ラマヌジャン』とのこと。

シュリニヴァーサ・ラマヌジャン(Srinivasa Aiyengar Ramanujan)は、1887年に南インドのタミル・ナードゥ州タンジャーヴール県クンバコナムに生まれた人。敬虔なヒンドゥー教徒で、インドの悪名高いカースト制度の最上級のバラモン階級の家庭に生まれたけれど、生活はかなり貧しい。

でも、小さい頃から学業優秀で、特に数学がすごくて、大学に入学したものの、数学に没頭しすぎて授業あまり出席せず、試験にも落第。退学させられてしまいます。その後は港湾事務所の事務員をしながら、独自で数学の研究を行い、いくつかの数式をノートに書き留めていきます。

ラマヌジャンは、こうした研究成果をイギリスの何人かの教授に送りました。そして、ケンブリッジ大学のハーディ教授の目に留まり、イギリスに招聘されることになります。

当時、バラモンの戒律では海外渡航は戒律破り。カーストから追放され、友人や親戚を失い、社会的に抹殺されることにもなってしまいます。でも、周囲の支援もあり、神の特別な許しも得て、ケンブリッジ入りすることになるというあたりが、さすがインドという感じです。

菜食主義だし、バラモン以外の人が料理したものは不浄。海外でもまじめにヒンドゥー教徒の戒律を守ったことで、満足な食事をとることができなくて病気になってしまいます。今ならイギリスにはたくさんのヒンドゥーの人たちがいるから、食堂もあって便利だと思いますが、なんせ第一次大戦の頃のことですから、大変です。

ラマヌジャンは結局病気になって、インドに戻りますが、こちらはこちらで生活が大変。嫁姑問題なんかもあって、落ち着けません。生活も苦しい。結局、ラマヌジャンは若くして亡くなってしまいます。

時代がもうちょっと違っていたら、もっとラマヌジャンは活躍できたのではないかと思うし、ハーディ教授との友情も厚かっただけに、本当に色々残念です。あと、親とか宗教とか、才能を束縛するものは、本当にみていて辛いです。映画は派手ではありませんが、じんわりきます。仕事の合間に見ると、「自由で健康な私は、できることをがんばろう」って思える内容でした。

邦題:奇蹟がくれた数式(原題:The Man Who Knew Infinity)
監督:マシュー・ブラウン
原作:ロバート・カニーゲル『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』
出演:デーヴ・パテール、ジェレミー・アイアンズ
制作:2016年(108分)イギリス


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