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一つの波周り、詩やその周縁。

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    ギルド

    「終幕があたらしい幕開けとなる」35編の詩の記録武田地球・ケイトウ夏子・中川達矢・渡辺八畳の四人で、前の詩作品の終わり二行に繋げて連詩を行いました。初売 文学フリマ東京372023年11月11日 発行A5 76P
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    汽水域3

    汽水域の3号です。スマートレターにて発送します。追跡は出来ないので、ご了承ください。*発送通知を受け取ってから10日経っても届かない場合は、お問い合わせください。2023年10月20日発行A5 124ページ発行人 沙羅樹
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    水路二号

    ケイトウ夏子の個人詩誌二号です。今回は珍しく、短い期間に生まれた五篇を収めました。“ねえどこからどこまでが 草原だったでしょう”B6 14p発行日 2023年10月25日
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記事一覧

静謐なピアノを水のように携えて、今日は
https://youtu.be/ci53bEL8KWA?si=yAZkQU4mscw9rk_h

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1日前
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その歩み

GWの後半。駅のポップアップショップに紅茶の店が出ていた。見たこともない茶葉がたくさん並んでいた。 「これは何の茶葉ですか?」という店員に向けての質問に、隣に立っ…

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7日前
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一人が一つの星とは限らない、これは自分にとってとても新鮮なできごとだった。「ふたりの」終わり方もあるんだね。/映画「異人たち」

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12日前
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ずれていく薄桃色

今は廃線になった路線。 ずっと見過ごしていたが、今回初めて踏切の部分だけコンクリートで固められていることに気付いた。気付けてよかった。 その後、本屋で三田文学を立…

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2週間前
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2月の仙台、「火星の庭」。そこで、榎本櫻湖さんが書いた萩野なつみさんの詩誌月評を読んでいました。

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3週間前
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きみの無言歌

ピアノ線 奏でる場所にはたてあり戸惑うばかりのきみの無言歌 見晴らしの良い場所の柵がピアノ線に見えたので、北村太郎の「ピアノ線の夢」をほんのり思い出しながら作っ…

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1か月前
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降るものと降らないもの

葉がへたってしまったが、それでもいい。部屋で組み直すこと、場と空気を組み替えること(あるいは組み替えられると信じること)。 キキョウラン、バラ、レースフラワー …

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1か月前
10

積荷のように生命を搭載して。「病気から逃げてね」と言う。積載量を無視して進む。質量保存の法則無視の女を演じ続ける。

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1か月前
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2024.3.14

新幹線。 席を間違っていた人と間違われた人が「降りる場所が同じなのでこのままでいましょう」となっていて良かった。 この人以外にも、なぜか私の周りの人たちが綺麗に…

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2か月前
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痛まない反射

「こっちの鳥居から入るとミモザ、あっちの鳥居から入ると桜が見れるけどどちらがいい?」 声にふわふわと誘われて、詩集の冒頭に出てくる東京の街で会った。 「関東ではn…

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2か月前
6

この生を一度きりの肉体でやっていることだけで褒められたい日も、まあ、ある。

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2か月前
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暗緑色のいいところ

「127段?」「そんなにはないよ、91段」「93段かな」上りきった石段の段数を互いに問いかける子供たち。「96段だよ」と答えを明かしながら老人が下りていく。 看板に書か…

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2か月前
11

踏切の音を楽器として

 昨日は髪を切った(切られてきた)。そして今日は朝の活動を終えた後に、茎や枝を切ってきた。雪柳とラナンキュラス。当然のことだが、刃と刃が触れ合う時の音が全然違う…

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3か月前
11

きざはし

 使っている路線は何本かに一本、親しい色の電車がやってくる。私はその電車がとても好きで、乗れると、例え遅刻しているときでも「ああ、遅れて良かったな」と嬉しくなる…

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3か月前
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揺籃期

踏切を待つ間に夜を洗う風が吹く 通り過ぎる電車に浮かぶ 方々へ別れる予定の人々は 灯台の顔をして揺れている 遮断機があがると道が生まれた 真っ直ぐに進むことをこばむ…

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3か月前
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何度も衣をつけて高温で揚げ直して、嫌気がさしてくる直前で凍らせる、その温度感、その手触りをいつも持つことができたらどんなにいいかと思う。

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3か月前
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静謐なピアノを水のように携えて、今日は
https://youtu.be/ci53bEL8KWA?si=yAZkQU4mscw9rk_h

その歩み

GWの後半。駅のポップアップショップに紅茶の店が出ていた。見たこともない茶葉がたくさん並んでいた。
「これは何の茶葉ですか?」という店員に向けての質問に、隣に立っていた女性が答えてくれた。自分に背恰好が似ている人だった。ワンピースの色も同じ。珈琲店で働いているが、紅茶が好きだという。生活に香りがないとくるしいですよね、という会話をできてよかった。

パッションフルーツ。黄色い花を浮かべて飲む紅茶を

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一人が一つの星とは限らない、これは自分にとってとても新鮮なできごとだった。「ふたりの」終わり方もあるんだね。/映画「異人たち」

ずれていく薄桃色

今は廃線になった路線。
ずっと見過ごしていたが、今回初めて踏切の部分だけコンクリートで固められていることに気付いた。気付けてよかった。
その後、本屋で三田文学を立ち読みしたことと、今は亡き寝台のキーホルダーをカフェの店員に褒められたことは、地続きのように思える。

万歩計を持っていればよかったな、と思うくらい四月はよく歩いた。京都のとある通りの木の並びを見て、バルセロナの街並みに似ているなと思った

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2月の仙台、「火星の庭」。そこで、榎本櫻湖さんが書いた萩野なつみさんの詩誌月評を読んでいました。

きみの無言歌

ピアノ線 奏でる場所にはたてあり戸惑うばかりのきみの無言歌

見晴らしの良い場所の柵がピアノ線に見えたので、北村太郎の「ピアノ線の夢」をほんのり思い出しながら作った歌。


贈った口紅をくっきりとつけてきてくれて、無我夢中で二人で踊った。背景に星座が映し出されたとき、「お揃いね」と私の星座スカートをひらりと持ち上げてくれたときの世界のこと。
吹き溜まりの桜がひらり。
いくつも河を渡った。

降るものと降らないもの

葉がへたってしまったが、それでもいい。部屋で組み直すこと、場と空気を組み替えること(あるいは組み替えられると信じること)。
キキョウラン、バラ、レースフラワー

詩を少しだけ落とした。明るい夜にもう少しだけ目覚めていたい。

積荷のように生命を搭載して。「病気から逃げてね」と言う。積載量を無視して進む。質量保存の法則無視の女を演じ続ける。

2024.3.14

新幹線。
席を間違っていた人と間違われた人が「降りる場所が同じなのでこのままでいましょう」となっていて良かった。

この人以外にも、なぜか私の周りの人たちが綺麗に席を誤っていて、方々に散る人たちのおかげで視界がひらけて、すぐに座るべき人で席が埋まった。

昨年の夏に盟友と行った熱海を通過したところで、ふっ、と何かがほどけた。駅前に足湯があってすごく良かったんだよね。

痛まない反射

「こっちの鳥居から入るとミモザ、あっちの鳥居から入ると桜が見れるけどどちらがいい?」
声にふわふわと誘われて、詩集の冒頭に出てくる東京の街で会った。

「関東ではnさんになる気がする」
そう、女の人に言われたとき、自分がここに居を構えている意味もあるのかと思えた。

何軒もお店を回った後のドトールは世界で一番広い場所になった。

この生を一度きりの肉体でやっていることだけで褒められたい日も、まあ、ある。

暗緑色のいいところ

「127段?」「そんなにはないよ、91段」「93段かな」上りきった石段の段数を互いに問いかける子供たち。「96段だよ」と答えを明かしながら老人が下りていく。

看板に書かれていたから私も知っていた。
耳にイヤホンを挿さなかったから拾えた会話。
看板の存在を無視できるのが子供の特権だとしたら。

踏切の音を楽器として

 昨日は髪を切った(切られてきた)。そして今日は朝の活動を終えた後に、茎や枝を切ってきた。雪柳とラナンキュラス。当然のことだが、刃と刃が触れ合う時の音が全然違う。それは春を切り開く音にもなり得るだろうか。
 古井由吉の命日だ。この人の書くものを母国語で読めることのよろこびを噛み締めなければいけない、ということだけは分かる。

きざはし

 使っている路線は何本かに一本、親しい色の電車がやってくる。私はその電車がとても好きで、乗れると、例え遅刻しているときでも「ああ、遅れて良かったな」と嬉しくなる。多分一つの家だと思っている。知っている限り本を読むのに一番適した環境だと思うのだが、なかなか遭遇せず、区間が短いのが残念だ。
 電車全体が発している灯りは、昨日降った雪に生命をもたらす。乗らない人からはそう見えているのだと思う。
 今日も

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揺籃期

踏切を待つ間に夜を洗う風が吹く
通り過ぎる電車に浮かぶ
方々へ別れる予定の人々は
灯台の顔をして揺れている

遮断機があがると道が生まれた
真っ直ぐに進むことをこばむ足は
敷き詰められた小石に触れる
それは 未完の寄り道
いつか水底で
ねむっていた時間に繋ぐ
渡れる川を横断する

遠景にころがる果実に映された、いくつもの呼びかけ

皮を剥くように
拡がるとばり
手招きする一歩手前で止めて
転写され

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何度も衣をつけて高温で揚げ直して、嫌気がさしてくる直前で凍らせる、その温度感、その手触りをいつも持つことができたらどんなにいいかと思う。