マガジンのカバー画像

旧き文明の地の諸相について

68
noteやTwitterの外に存在する様々な異世界の紹介です。つのはこうした場所にもうろついています。
運営しているクリエイター

記事一覧

【白蛇ロワ】The Great Rock 'n' Roll Swindle

ダカダッダッ、ダカダッダッ、ダー、ダカダッダッ、パッパパーパパパパー、パパパパー、パー、パー KADOOOOOOOM! (ダミ声)荒野を旅するセクシー美女バンド軍団、我らが女神、ブーブス・セクシー・ストライキング・バンド、BSSB! ドールハウス! 「まだダメ……まだ降りてこないの……トマトジュースちょうだい」 ソー・エキゾティック・ダークヘアード・ゴシック! ゴス! ゴシカル! ソー・ゴシック・キューティー・スプーキー・ビューティー・ベーシスト! 小さいが年齢はリ

【白蛇ロワ】Longarm of the Law

月を見上げ、佇む孤影。 目を細め、植え付けられた記憶を反芻する。 エンリコ・プッチ神父。素数。DISC。スタンド。少女の弾け飛ぶ頭。 白髪髭面の小柄な老人ながら、片眼鏡の下の眼光は炯々、背筋は伸びて矍鑠。その両腕が、だらりと伸びた。 「つまり……罪もない民間人(カタギ)を巻き込んでの"殺し合わせ"で御座います哉」 神父と名乗っているものの、彼にその資格があるようには思えない。無力な弱者を殺して顧みず、己の野望のために殺し合わせる。これが"悪"でなくて何であろう。自分が

【白蛇ロワ】Helldiver

君は夢を見ている。とても奇妙な夢だ。 自宅に魔法陣を描き、地獄へ降り立とうとしていたら、エンリコ・プッチと名乗る神父に喚び出された。殺し合いの儀式に乗って最後まで生き残れば、なんでもひとつ願いを叶えてくれるという。武器として「スタンド」という超能力を与えられた。他の参加者も同様に超能力者というわけだ。 目を覚ますと、君は知らない場所に立っている。どうやら夢ではないらしい。しかし、夢なら、願いならある。君は啓示を受けたのだ。まあ、簡単なことではない。命を落とすこともありうる

【白蛇ロワ】Bubble

「……ハァー……ったく、めんどくせェな」 白髪の青年は、ここに来てから何度目かのため息を深くついた。 唐突にどこかの孤島に放り出されて、脳に爆弾を入れられ、明らかに正気でない神父に殺し合いを強要される。殺しは随分してきたが、こういうのはあまりやりたくない。「優勝すればなんでも願いを叶える」などという言葉も胡散臭い。 が、ヘタに逆らえば死ぬ。仲間たちもいない。気が進まないが、悪党や怪物なら始末してもいいだろう。殺し合いたいやつは勝手に殺し合えばいい。殺し合いに乗り気でない

【白蛇ロワ】Breath of Bless

「……」 男は周囲を見回し、耳を澄ませ、においを嗅ぐ。 ここに喚ばれる前の持ち物は、ほぼすべて没収され、配下も皆いない。 問題ない。おのが身と頭脳がある。武器や配下は現地調達すればよい。 支給された品々を背負い袋から出し、改める。 地図、磁針、筆、紙、照明、水と食糧、参加者の名簿、時計。そして、数十本の釘。説明書きを読むと、男は釘の頭に口をつけ、ふう、と息を吹き込んだ。 すると、見よ。鉄製の釘は風船の如くに膨らみ、太く長く伸びた。 男はそれを指で捻り、形を整え、たちま

【白蛇ロワ】Egyptian Night Club

「やれやれ……私にハ、すべきことがあるのですガ……」 闇の中。ビルの屋上に潜む男がひとり。 浅黒い肌、神父のような出で立ち、銀色の短髪。長方形のサングラス。秀でた額と白手袋には赤い五芒星。主催者エンリコ・プッチによく似た姿であるが、彼は神に仕える者ではない。秘密組織「ファントム・ソサエティ」に所属する、邪悪な悪魔召喚師(ダークサマナー)だ。胸に下げているのもロザリオではなく、生命を象徴するエジプト十字「アンク」である。 手を握り、開き、魔力を確かめる。多少の制限を感じる

【荒野パロ】We Outnumber You

「…………」 困惑。これから「依頼」を果たさねばならないのに、なぜこんな場所に送り込まれたのか。敵の仕業だろうが、標的となるあいつらの仕業とも思えない。こんな能力があれば、それこそ望みのままだ。奇妙に未来的な板のようなものに、文字情報が流れていく。理解は出来るが理解不能。 「つまり……全員殺せばいいわけだ」 「残り一人になるまで?」 「そうだ。俺たちも、残り一人になるまで」 「そうすれば、願いは叶う」 「そうだな。そいつ一人だけ……」 帽子にコート姿の男たち、11人。ヒ

【荒野パロ】King Princess

「むう……なんたることか」 彼女はスマホの文面を見て、苦虫を噛み潰したような顔をする。 長身で金髪ポニテ、碧眼で太眉、スタイルもよい美女であるが、暴君のような野性的な雰囲気を漂わせる。黒い肩出しドレスを纏い、腕や手首、首にはトゲつきの輪をはめ、王冠を頂く頭の横からは大きな角が二本。唇の端からは牙が覗く。背中にはトゲの生えた甲羅。スカートの下には爬虫類の太い尾。 彼女……否、『彼』は、もともとこのような姿ではない。もっと恐ろしげな、怪獣のような姿であった。ふとした出来心で

【荒野パロ】Flower of Carnage

「Damn Shit……!」 銀髪のタンクトップ女は舌打ちし、スマートフォンを握りしめた。やつらの仕業か。武器を拾って敵を殺し、生き残る。やることは同じだが、なんだ、この首輪は。ナメやがって。私の復讐を穢すつもりか。 いいだろう。殺して殺して殺しまくり、願いを叶えよう。やつらを皆殺しにするという願いを。私を衝き動かすのはそれだけだ。 「Son of a Bitch……!」 転がり込んだ廃屋を探すと、日本刀と拳銃は手に入った。あとはブーツか。タバコは今は不要だ。銃弾はガ

【荒野パロ】→→→荒野行動

「…………」 パラシュートでビルの屋上に降り立ったのは、白い美少女。白い肩出しワンピースを纏い、白いつば広帽を被っている。髪は薄紫色を帯びた白で、尻まで伸び、三つ編みおさげが二本。睫毛も白く、長い。瞳は赤く―――その瞳孔は十字型。口の中には爬虫類じみた鋭い牙が並ぶ。スマホの文面を確認し、ため息を一つ。 「……わけがわからないわ。これが"懲罰"ってこと?」 彼女は戦場で失態を犯し、祖国へ強制送還された身だ。あんな事態は想定外だったが、言い訳は出来ない。結果的に、任された三

【荒野パロ】I'm a Stain

「ハァ……気に食わんな」 彼は苛ついていた。何もかも、気に入らない。 爆弾付きの首輪をつけさせられ、落下傘で戦場に放り込まれ。武器を拾って殺し合いをして、最後の一人まで生き残れ、と。どこのアホが考えたデスゲームか知らんが、俺に対する……罰か?温情か? 悪趣味な。 確かにまァ、弱者は淘汰される。強者が最後に残り、すべてを手に入れる。戦場とは世の中の縮図だ。なんでも願いを叶えてくれるというなら、優勝すれば俺の願いも、信念も、実現するのだろうか。 だが。そうはいかん。俺が『

【荒野パロ】日本男児の生き様は

「うおおお、なんじゃあこりゃあーーっ!」 「驚き役やってる場合かよ……静かにしやがれ」 学帽を被り学ランを着たヒゲの男が、もうひとりをたしなめる。ここは戦場だ。いつ何時、誰が銃を撃って来るかわからん。抜け目なくチャカを拾ったヒゲ男は、ドスがないことに眉をしかめる。自前の武器は取り上げられてしまったようだ。 「で、乗るか? この殺し合い。なんでも願いが叶うってよ」 「どうするかな。どうせ悪党ばかりが放り込まれてるんだろうが……」 「そりゃそうだ。じゃあ、決まりだな」 彼ら

【荒野パロ】ROCK'N'ROLL 退屈男

「へっへへ……これ見たか。なんでも願いをかなえるとさ!」 「うふふ、いいね。やろう、やろう!」 見るからに悪人面の青年と、長髪の美青年が笑い合う。身に纏うのは囚人服。彼らは死刑囚で、脱獄囚だ。彼らにとって、人殺しなど日常茶飯事。しかもそれによってなんでも願いが叶うとは、天の恵みとも思えた。 「……けどさ。最後の一人になるまで殺しあえってんなら、どっちかは死ななきゃダメじゃない?」 美青年の言葉に、悪人面はきょとんとして、頬を指でひっかく。 「あ、そーか。どっちかを殺して

【荒野パロ】BE TOGETHER

「■■■■■……」 その存在は……不快と愉悦が半ばする感情を味わっていた。 不快は、自分に爆弾が埋め込まれ、戦いを強制され、行動を制限されているゆえ。武器であった鎌は奪われており、魔力も相当に減衰しているのを感じる。そもそもマナが少ない。魔法はこの領域では封じられているようだ。 愉悦は、ここが文字通りの戦場であり、他者を殺せるゆえ。秩序にして悪、生来の暴君である自分にとって、他者を虐げることは喜びだ。 両足で地面を踏みしめ、その存在は屋内を捜索する。頭頂の触手がうねう