【FGO EpLW 殷周革命】第七節 称名無間幽冥聲

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塗山の頂。ウシミツ・アワー。空飛ぶ馬車でやって来た一行は――――

「見つかった! それも三つ! やった!」
「やれやれ、くたびれさせやがって。結局ここに纏めてあったとはよ」
『塗山……ああそうか、たぶンあれだな、夏と殷と周の三代ゆかりの場所にあわせて置いただな。なるほど』
「今のところ敵サーヴァントの襲撃もなく、怪物どもも拙者だけで充分。どうもうまく行き過ぎるが……」

エピメテウスとチャーナキヤ、二騎のキャスターが魔力反応を探し当てた。最初の天柱山では、人や鳥獣を混ぜ合わせた怪物が何十体と出て来た。なんとか撃退したものの、鼎は一向に見つからない。そしてついに、ここ塗山で鼎の反応があったのだ。一行は安堵し、かつ警戒する。

「あの洞窟ですね。……待った、別の魔力反応が『動いて』います」
「また怪物か、それとも野良サーヴァントか……体調も魔力も万全、打ち破るのみ」
ランサーが注意深く洞窟を観察する。タイガーの尾を踏まねば蜂蜜は得られぬ。いかなる罠が張られているか、行ってみねば分からない。
「おう。なんかあったら、全員しっかり俺を護れよ」
忍術スキルで罠を看破できるランサーを先頭に、チャーナキヤをしんがりにし、洞窟へ入っていく。

「来たか」
暗闇の中、彼はぎらりと目を光らせた。血走り、狂熱に浮かされた眼だ。手に握った武器を、強く握りしめる。

この三つの鼎を狙う不届き者、『かるであ』の連中。
何やら分からぬがこの場に喚び出され、申公豹と名乗る者に「ここで待っていろ」と告げられたが……。手ぐすね引いて迎えてやろうわい。既にこの洞窟とそのまわりは、罠の巣だ。

◇◇◇

姿勢を低くし、槍で前方を探りながら、抜き足でランサーが進む。
「気をつけられよ。そこかしこに罠が仕掛けてある。落とし穴、仕掛け縄、鳴子……」
「まるでニンジャだな。おめぇの知り合いじゃねぇのか、ランサー」
「マスター、そこを踏まれるな。弩が発射される」
振り返らずにランサーが指摘。カラテ警戒できるランサーはともかく、キャスターズとマスターは不用心だ。

不意に、洞窟の天井が高く、広くなる。その奥、断崖の中のくぼみに、黄金色に輝き、魔力を放つ三つの鼎。鼎の前には竹格子がめぐらしてある。
「おお、あったぞ。だが、サーヴァントはどこだ」
ここだ

聞き慣れぬ低い声に、ランサーとマスターが振り向く。キャスター・チャーナキヤの首元に、背後から腕が回され、赤錆びた鉈が!
「ヒッ!?」
「隙だらけだ。わしがお前たちを不意打ちで殺す機会は、ここまで何度もあった。だが、そうしなかった」
嗄れた男の声。ただならぬ眼光をギラつかせ、ランサーとマスターを睨み据える。
「そこのランサー殿に用がある」

異様な風体。目の下に黒い隈。頬が痩け、無精髭を伸ばし、陰気な顔の中年男。ボロボロの水浅葱を纏い、ざんばら髪は抜けて薄く、青褪めた皮膚には死斑。首元には黒ずんだ血。周囲には冷たい瘴気を漂わせ、燐火を浮かべている。英霊というより、怨霊、幽霊だ。

マスターは両手を上げ、引き攣った笑顔で挨拶する。
「よ、よう。俺がカルデアのマスターだ。殺さないでくれてあんがとよ。見たところあんた東洋人だが、ランサーの知り合いか」
「いや、名は聞いておるが、生前会ったことはない」

ランサーが前に進み出て、アイサツする。自分の名を聞いていたとは、未来の英霊か、あるいはウォッチャーからか。
「ドーモ、ランサーです。拙者と同じ、日ノ本の英霊とお見受けするが……今は争っている場合ではござらん。人類の危機を救うため……」
「ぬしの仲間にはなりませぬぞ、『服部半蔵正成』殿。わしはサムライが嫌いでな。人類の危機とやらも、どうでもよいこと」
ぐつぐつと暗く笑い、彼はキャスターを放り捨てた。キャスターは尻餅をつき、慌てて逃げる。彼は目もくれない。

「するってぇと、あんたはサムライじゃねぇのか……ええと」
「さしたる者にあらず。ただの、賊徒の亡霊よ。まずはそちらと、ひとつ手合わせしたい」
「よかろう。マスター、キャスター殿、下がっておられい。―――では、名乗られよ」

ランサーが大身槍を構える。相手は鉈を捨て、両腕を大きく広げ、その背後に何かを顕現させた。十字に組まれた竹槍だ。それをつかみ取り、両手に一本ずつ構える。
「ドーモ、ランサー殿。ランサーです。いざ、参る」

◆◇

じり、と間合いを測る。広さは充分、長槍で戦えるほどはある。敵の構えを見たところ、さしたる使い手ではない。だが、ここは敵地。罠を含め、フーリンカザンは相手にある。鼎は今、彼のものだ。加えて異様な怨念。先に戦った将門公には比べるべくもないが、近い存在。刑死者の怨霊か。

アサシン殿なら引導を渡してやれそうであるが、今はおらぬ。しからば拙者、鬼半蔵が鬼退治と行くか。

「イヤーッ!」

先に仕掛けたのはランサー・半蔵! 竹槍のランサーは迎え撃つ!

ランサーは大身槍で突き、薙ぎ払う!ランサーはしゃがみ回避!低い姿勢から突進、右手竹槍で足払い!ランサーはジャンプ回避!薙ぎ払った勢いを利用して空中で回転、ドリルめいたキックで急襲!ランサーはバック転回避しつつ左手竹槍をサブマリン投擲!ランサーは紙一重でこれを空中回避!

空中で竹槍が回転、鎌が生えて飛び戻る!ランサーは片手を地につけブレイクダンス回避!逆に鎌竹槍を蹴り飛ばしランサーに弾き返す!ランサーはチョップで受け、回転を加えて投擲!続けてもう一本!ランサーはブリッジ回避しつつ二つの竹槍を跳ね上げ、壁に突き刺さらせ止める!ワザマエ!

だが「グワーッ!?」ALAS!ブリッジで手をついた場所に生えていたのは鋭利なタケノコ!掌貫通!なんたるウカツ!否、読者が訝しまれるのも道理!洞窟の奥深くにタケノコが生えるものか!そして時間を遡って見てみれば自明だが、数瞬前までタケノコは存在せぬ!すなわち超常のタケノコ!

「奴の罠、いや、宝具か!」ランサーの袖口から新たな竹槍が出現!ランサーは竹槍やタケノコを魔力(カラテ)で生成できるのだ!「イヤーッ!」ランサーは両掌をランサーに向けシャウトと共に袖口から二本の竹槍を射出!さらに地面からは数十本のタケノコが伸びてくる!「ヌゥーッ!」

ランサーは再びブリッジ姿勢から両脚を跳ね上げ、竹槍を蹴り上げタケノコを回避!掌からタケノコを抜き去り空中へ回転上昇!「ノビヨ!」謎めいたシャウトと共にランサーが両掌を掬い上げるように動かすや、タケノコが伸び上がる!ランサーは空中で身を翻し、先端付近を両手で掴み逆立ち!

……両手で!?では、彼の大身槍は今……!?「グワーッ!?」ナムサン!タケノコを操るランサーの背を回転する大身槍が斬りつける!既にランサーが投げ上げていたのだ!しかし得物無しでどうしようというのか!第一このままでは急速成長タケノコと共に天井に激突必至だ!さらに!

「グッ……バカメ!バクチク・ジツ!

ランサーが手を叩く!KA-BOOOOM!!タケノコの先端部分が一斉爆発!
これぞ太平洋戦争においてニンジャが無数の爆撃機を竹槍数本で撃ち落としたバクチク・ジツ!「ヤッタカ!?」天井の破片が落下し、朦々と爆煙!おそらくランサーは爆発四散……否!

「グワーッ!?」おおゴウランガ!ランサーの背中に先ほどの大身槍が突き刺さり、胸まで貫通!一体何者の仕業か!そこには甲冑を脱いだランサー!奥の奥の手、ウツセミ・ジツ。爆発で吹き飛んだのは甲冑だ。宝具『半蔵ノ門』の応用として、ランサーはこの槍のある場所へ瞬間移動できる!

「仲間にならぬというなら、このままカイシャクしてやろう。ハイクを詠むがいい、ランサー殿」「アバッ……バカ……メガ!」突如、貫かれたランサーが霊体化!槍から逃れようというのか!だが!「この槍も宝具。刺し貫いた相手は、霊体であろうと逃しはせぬ。往生せよ!南無阿弥陀仏!」

ランサーは魔力(カラテ)をこめ、ランサーの霊体を拘束!そのまま霊核を破壊01010010101010oooooO

◇◇◇

「おっと、あっけねぇが、先に決着がついたようだぜ。そんじゃ安心してもらっちまおう」
「ちと高いですな。ランサー殿が貴方を背負って運んだ方が……」
一足先に洞窟の奥に着いたマスターとキャスターズは、三つの鼎のある崖の下へ。その時!

【ノロイ!】

ランサーたちが戦っていた場所から、凄まじい怨念が放出!噴き上がる禍々しい黒煙!
「な……なんだァ!?断末魔の最後っ屁か!?」

◆◆◆◇◆◆◆oOOOooooOooOOOooooooOoo

何事だ。奴の霊核を砕いたと思ったが、奥の手があったか。死に際の呪い、か。黒煙に包まれ、何も見えぬ。身体が……動かぬ。心眼を……

【oOoo呪呪呪oOOoOoo呪呪呪OOoO呪呪OOoO呪OoOoOooOOoo】
【ooOOoo怨怨怨怨OooOo怨怨怨OoOoOo怨ooO怨OooOoOoOOo】
【恨恨恨恨ooOOoOoOo恨恨OooOooOo恨OoOo恨oOOo恨ooOoo】
【OoOoOooOOoOoOo苦苦苦oOOoooOOooOo苦苦Ooo苦苦苦苦O】
【ooOOooOooOo死ooOOooOoOoo死死死死oooOoOoo死死死死】

黒煙の闇の中から、数体の亡者が現れ出た。女がひとり、子供が女児を含め四人。―――おそらくは、奴の妻子。

さらに、奴の生首が闇の中に浮かび上がる。昏い喜悦の表情。
【ヒヒ・・・よくもわしを殺してくれたな。それも、槍で貫いて! そうして欲しかったのだ、わしは!】
怨霊の本領を発揮するため、わざと殺されたというのか。ならば……
【ウラメシヤ! 狂い死ぬがいい!】

無数の亡者が一斉に襲いかかる。こちらも鬼で亡者とはいえ、祟り殺されるわけにはいかぬ。御仏の加護を請い、音吐朗々と唱える。
南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!

【oOoOooOOooグワーワoOoOoOーワーワーワーoOoOoOワーワーoOoOワーooOッoOoO】

やはり、念仏は効くか。亡者どもが退く……いや。ひとり、残っている。奴ではない。死装束の若者だ。あれは……!
両眼を見開く。まさか、あれは。見間違えよう、はずもなし。

あのお方は……岡崎三郎、信康、様。

【魂消(たまげ)おったな。これでぬしの心の中に入れるわい】

奴の声が脳内に響き、視界が完全な闇に包まれる。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

意識を取り戻すと、空中だ。闇夜のように暗いのに、どこまでも見渡せる。
眼下に広がるのは大平原と丘陵地。大きな沼地があり、川が幾つも流れ、海に注ぐ。意のままに意識が動かせぬ。そのまま、意識が大川のほとりへ降りていく。三途の川でもあるまいが……。

河原には、幾つもの首が晒されている。奥には磔台。あのランサーの、あるいは拙者の、心象風景か。見ていると、首のひとつがカッと目を見開き、飛び上がった。奴だ。同時に、奴の声が轟く。

【ま・さ・か・ど・さ・ま・・・・・・・・・・】

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三宅つの

奥ゆかしさ◆ドーモ。noteで文章を書いています。ヘッズフロムアニメイシヨン。

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