見出し画像

週間手帖 五頁目

画像1

2021.10.20

LOST CITIES / AM4:44 / LIBERALISM / PHASE 999 / LEAVE ME LONELY

2021.10.21

何度目かの合図も当たり前のように夜に放り投げて、耳から甘いノイズを垂れ流した。曖昧な吐息も些細な布の擦れも、余すことなく再現するけれど、どれもこれも偽物ばかり。似ているだけじゃ、もう満足できないみたい。寝返りを打ってとろけた君は、いよいよ深淵に落ちてゆく。電気仕掛けの赤い糸も解けて、明日には忘れているくらいがちょうどいい。

2021.10.22

あれから随分と時が経って、年相応に酸いも甘いも味わって、清らかなふたりも記憶のかなたに消えた。もう傷つくことはないけれど、いつかの棘がふと痛むことはある。根も張らなければ茎も生やさず、花をつけることもない。それでもけして枯れることのない断片を後生大事に労わり続けるわが人生、一片の悔いなし。

2021.10.23

どこまで同じ気持ちになれるんだろうね。どこまで同じものを味わえるんだろね。「まだまだだよ、はやくここまで落ちてきてね」鉛のように重いおまじない。ぎらりと光る目で、骨の髄まで溶かしてみて。

2021.10.24

ぼくたちの頭の中は形容しがたいものばかりで、すべてが伝わるなんて思ってすらいない。それでも心の奥の方にある柔らかいものに触れてしまうくらいあなたを知りすぎてしまったから、宛がう言葉が見つからなくたって、きっとすべてが届くと思っているんだ。「魔法をかけてあげる」きっと初めて会った日からずっと魔法にかかったままで、ここまで来れたんだよ。しゃんと姿勢を正して、真っ直ぐにあなたを見つめることができるようになったら、すべての日のありがとうを伝えるから。それまではどうか温かい目で見守っていてよ、哀愁。

2021.10.25

揺れる金色に、甘い桃の香り。青い文字で愛をしたためて、可憐な薔薇を一輪添える。空白だらけの浪漫飛行。予定調和を予定しない無計画実行。純粋こそが、この世のすべてを翻弄してゆく。

2021.10.26

興味なんて一ミリもなさそうに目を細めて、へぇ、なんて最低限の愛想をひとつ。いかにも真っ当な理由をつけて、混み合う人々を一掃。去り際にそっと、ぽってりとした唇が歪な半月を描いたのを見た。面白くないとそっぽを向くのならこちらとしては大満足なんだけど、実際のところどう?ひとまずは親指で嫌味を贈り合って、おかしな約束を取り付けて。答え合わせはその後で。

2021.10.27

早送りで過ぎていく一息の間に、ロマンは崩れ落ちる。憧れは完全無欠、現実は着信拒否。「夢は夢のまま終わらせたい」と我儘を遠吠えして、過程を見失う。次々とやってくる夥しい一過性の群れに脅かされて、自分の正解はおざなりに。十人十色といわれようと、多様性の名の下に押し付け合う精神は途切れぬまま。そんな世の中で、私はワタシを選びたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?