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スイカズラ

走馬灯のような夜だった。
まるで、走馬灯のような夜だった。

背の高い建物は何もないのに、窓の向こうは深く霞んで、近くの街灯の灯りと、走る車ももういないのに、無意味に点滅する信号機の光が、放射線状に、万華鏡のように伸びているのだけが見えた。

真新しい建物に、装飾として植えられた、スイカズラの芳香が、鼻腔の奥に張り付くように香っている。
麻薬の如き芳香で、麻酔のような芳香。

街明かりの万華鏡が、くるくると回る度に、身体が脆く崩れる石膏になったり、何者にも壊せない液状になったり、はたまた堅固な金属に変容したりを繰り返した。

ぬるい微睡の中で、生まれて死んで、また生まれたりを幾度も幾度も繰り返す。
ミトコンドリアに組み込まれた、生命の進化の過程が、瞼の裏に何度も浮かぶ。

いつだか聞いた、パライソと、いつだか聞いた、永遠の命と、いつだか再び来るらしい、救世主の話を思い出す。

万華鏡、乱反射、教会のステンドグラス、精巧に描かれたピエタ、永遠、永続性のある自我。

巡りを続ける走馬灯の中で、不変のものを、愛せないことだけを、知った。

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眠れない夜に

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