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90分間、戦い続けた戦士たちへ

1月9日、新国立競技場に長いホイッスルが鳴り響いたその瞬間、両チームの選手たちがピッチに倒れ込んだ。いかに試合が激しいものだったかを物語る。

ガッツポーズを掲げる選手、仲間と抱擁し喜びを分かち合う選手、反動のあまり立てないでいる選手
彼らを画面越しに見ながら私は泣いていた。

この涙は一体何なんだろうか。
応援していた東山が負けて悔しいからだろうか。
泣いて喜ぶ選手にもらい泣きしたのだろうか。
分からなかった。
しかし、そこには私の心を強く揺さぶる感動があったのは確かだ。


決勝の舞台まで勝ち上がってきたのは
岡山県代表 岡山学芸館高校と京都府代表 東山高校だった。両者とも優勝経験は無く、決勝の舞台に立ったのも初めてだ。
このカードを予測できた人は一体どれくらいいただろうか。

さすがにここまで勝ち抜いてきたチーム同士の試合だ。見事な見応えだった。
試合結果は3-1。
頂点に立ったのは
岡山県代表 岡山学芸館高校
初優勝 おめでとうございます!!


正直 どちらも応援したくなる、そんな試合内容だった。
それでも私は東山高校を応援していた。
東山高校は私に高校サッカーの魅力を教えてくれたチームのひとつだからだ。

それは前大会の第100回全国高校サッカー選手権大会だった。
東山はベスト8でその舞台から姿を消した。
準々決勝の相手は松木玖生選手を筆頭に多くのタレント擁する青森山田だった。
多くの高校サッカーファンが青森山田に注目し、優勝を予想していただろう。
結果、負け知らずの最強チームは2022年1月10日、優勝カップを空高く掲げた。

しかし、そんなチームを最も苦しめたのが東山高校だった。
東山高校は青森山田相手に大会中、初の先制点を決めた。その瞬間で私は試合から目が離せなくなった。
「もしかしたら、青森山田を破るかもしれない。」そのような期待が胸をいっぱいにした。

だが、4年連続決勝への進出を目論む青森山田の実力は確かだった。準決勝で6点差、決勝でさえ4点の差をつけて勝利したのだ。

その後ペナルティエリア内でのハンドによりPKを献上するとあっという間に試合を振り出しに戻す。さらに勢いに乗った青森山田は逆転弾をゴールに叩き込んだ。
その後も両者競り合い、スコアは動くことなく、試合は2-1で終わった。

東山は確かに青森山田に敗れた。
しかし、そこには多くの希望があった。
昨年の東山高校はスタメンの半数以上が2年生の選手だった。

今年、
エースナンバーを背負った阪田澪哉選手、
キャプテンマークを巻いた新谷陸斗選手、
献身的な守備とその強度が魅力の仲里勇真選手、
圧倒的なサッカーIQの高さと確かな技術により中盤を支配した松橋啓太選手、
見事な得点力とハードワークの真田蓮司選手、
守護神としてチームを守り仲間を鼓舞し続けた佐藤瑞起選手。

昨年、2年生として3年生を支え、チームに勢いを与えていた選手たちがまたひと周り大きくなってこの選手権という舞台に帰ってきてくれた。

私はそれだけで胸が熱かった。
それがまさか、決勝まで駒を進めるとは。ドラマを見ているようだった。
だからこそ、日本一になる姿を見たかった。

しかし、過去に戻ることはできない。そして複雑だが、見事なプレーをみせた岡山学芸館の優勝も嬉しいというのが本音である。
もう次のステージに進むしかないのだ。

プロに進む選手、大学でサッカーを続ける選手、はたまた引退する選手もいるだろう。


たった1年だが、大学サッカーに触れて練習や部則の厳しさ、高校とはまた違った強豪チームならではの葛藤や挫折が存在することを知った。

貴重な大学生活だ。無責任なことは言えない。
体育会系の部活に所属しているわけでもないから説得力もない。
確かにそこにはまた厳しい世界が待っているだろう。

だけど、大学でサッカーを続けてみませんか?

大学サッカーには夢がある。
高校まで無名だったが、大学で花開きプロになった選手もいる。
私が大学サッカーと出会ったのは大学3年生の春だった。遅すぎた。
高校生の時に出会っていたならば、どんな形であれ関わっていただろう。

彼らに私の夢を託すのは間違っているかもしれない。
別の夢を追いかけてサッカーを辞める選手もいるだろう。
ただ、もし大学でサッカーを続けようか悩んでいる人がいるとするなら、ぜひ続ける挑戦をして欲しいと思う。

そして、どんな時も思い出して欲しい。
最も輝き続けた瞬間を。
そして、誇りに思って欲しい。
90分間、諦めることなく戦い続けたことを。


本当に感謝している。
大きな感動をありがとう。
全選手に大きなリスペクトと拍手を送ろう。




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