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鳥取・岩井窯の本が出ます

11月、鳥取の岩井窯・山本教行(のりゆき)さんの本『暮らしを手づくりする 鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)が刊行されます。

出版の話が出てから2年、企画の段階から携わってきました。岩井窯という場所と山本教行さんという人について、発売にさきがけ5回くらいの予定で綴っていきたいと思います。

岩井窯は、鳥取の岩井温泉の近くにある窯元です。「窯元めぐり」のガイドブックがあるように窯元さんを実際に訪れ、つくり手に会って作品を買うことができるところはけっこうあります。でも「クラフト館 岩井窯」は一般的な窯場とは違います。

約千坪の敷地には山本さんが50年以上かけて蒐集してきたありとあらゆる工芸品が並べられている美術館顔負けの参考館があり、奥さんの房江さんがつくる美味しい料理やコーヒーが楽しめる喫茶もあります。折々にイベントも開かれ、もはやひとつの観光スポットになっています。

窯主の山本教行さんは1948年生まれ。私が初めて会ったのは、いまから10数年ほど前、岩井窯を訪れたときのことです。

いまでもはっきり覚えている、くりくり頭にまんまる眼鏡、ジーンズにサスペンダーといういでたち。

岩井窯の砂利の敷いた中庭で、サスペンダーをぱちんとやりながら(あ、「ぱちん」は記憶の捏造かもしれません!)独特の間で話す姿は、失礼を承知で書くと、とらえどころのない不思議なおもしろおじさん、という第一印象でした。

それから取材で訪れたり、個展に足を運んだりして、何度お会いしたでしょうか。気がつけば、

「不思議なおもしろおじさん」は、
「色気のあるかっこいいおじさん」

に私のなかで変化していました。

18歳で東京までヒッチハイクして、バーナード・リーチさんに会いに行った話。個展の売上をぜんぶ注ぎ込んで、李朝の白磁の壺を買った話。

くわしくは本に書いてありますが、とにかく話のスケールが大きい。話を聞くたび、いつも「自分は、うつわが小さいなあ」と思わされてきました。

でもだからといって、こちらを圧倒するようなところは微塵もない。とかくそうしたエピソードってのは、自慢話に聞こえがちです。でもそんな鬱陶しさはなく、むしろ聞いたあとに痛快な気分にすらなる。なぜだろうと考えてみると、山本さんはいつだって、「ははは」とやんちゃな自分を笑い飛ばしていることに気づきました。

笑いながら、そんなことまでできちゃうんだ。

自分の「いいなあ」や「やりたい」という気持ちに、そのとき、そのとき正直に生きて、「クラフト館 岩井窯」という城を築きあげた。そんな山本さんと話していると、まわりを気にして、ときに自信をなくす自分が、山本さんの「ははは」と一緒にかるーく吹き飛んでいくようで、ああ、もうちょっと自分の感覚に素直になってもいいんだなあ、と思えてくるのでした。

というわけで出版にあわせ、本をつくることになった経緯を正直に書いてみることにします。


■イベントのお知らせ
『暮らしを手づくりする――鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)刊行記念 山本教行×澁川祐子 トークイベント「自分らしい暮らしってなんだろう」

2019年11月18日(月) 19:30~21:00
於・蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/humanities/10387-1908071016.html

*終演後に蔦屋書店から徒歩5分、山本さんの個展が開かれている「SML」にて懇親会があります。房江さんもこの日にかぎり駆けつけ、本にレシピを載せた料理を含め、ちょっとしたお料理を出してくれる予定です。この機会にぜひ。

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