澁川祐子

食や工芸を中心に書いたり、編集したり。(Twitter:@y_shibu)

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最近の記事

20年前、能登で

お正月から落ち着かなかった。遅れていた新書の原稿をやっていてもニュースが気になってしかたなかった。やっと小休止できたので書く。ちょうど20年前の旅のことを。 ヤケクソな気分で何も決めずに旅に出ようと、夜になって身のまわりのものだけを持って新宿駅へ向かった。いま考えると、ちょっと自分に酔っていたところはあった。30手前の悩みのタネなんてだいたいがアレだから、なんでヤケクソだったかはお察しください。あと突然ふらっと旅に出る、という気障なことを一回やってみたかったというのもある。

    • 盛られることを知っているうつわ

      11月に刊行される岩井窯・山本教行さんの本『暮らしを手づくりする 鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)にまつわる第4回です。 「岩井窯の山本教行さんが作るうつわは、料理が盛られることを知っている。」 中目黒のSMLの本『もっとうつわを楽しむ』にライターで参加し、岩井窯について書いたときの冒頭です。どう書こうかと考えたとき、ぱっと浮かんだフレーズでした。 家にある、岩井窯の白い鉢。小ぶりで、きんぴらや青菜のごま和えとか、なんてことない副菜を少量盛るのにちょう

      • 昔ながらの民藝の人

        11月に刊行される岩井窯・山本教行さんの本『暮らしを手づくりする 鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)にまつわる第3回です。刊行にあたり、エッセイストの平松洋子さんは次のような帯文を寄せてくれました。 「山本教行さんはその人生をもって「民藝」の道のりを生きてきた最後のひとです。――平松洋子」 ちなみに平松さんとは、取材でいらしてからのお付き合いだそうで、平松さんがアイデアを出して制作した土鍋もあります。 この帯文を読んだとき、ああ、そうだった、初めて岩井窯

        • 刺さったのは鮎の小骨だけじゃなかった

          11月に刊行される岩井窯・山本教行さんの本『暮らしを手づくりする 鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)にまつわる第2回です。 10数年前、私がどうして岩井窯に行こうと思い立ったのか。はっきりとした理由は、いまとなっては思い出せません。ただ「クラフト館 岩井窯」では、若手のつくり手を集めた催しが時々開かれており、その名前をちょこちょこ耳にしていたのはたしかです。 取材で西方面に行く機会に、ついでに足を伸ばしてみよう。HPを見ると、「事前に営業についてお問合せを

        20年前、能登で

          鳥取・岩井窯の本が出ます

          11月、鳥取の岩井窯・山本教行(のりゆき)さんの本『暮らしを手づくりする 鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)が刊行されます。 出版の話が出てから2年、企画の段階から携わってきました。岩井窯という場所と山本教行さんという人について、発売にさきがけ5回くらいの予定で綴っていきたいと思います。 岩井窯は、鳥取の岩井温泉の近くにある窯元です。「窯元めぐり」のガイドブックがあるように窯元さんを実際に訪れ、つくり手に会って作品を買うことができるところはけっこうあります

          鳥取・岩井窯の本が出ます