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読書「2030年半導体の地政学」 太田康彦著 日経BP/日本経済新聞出版局  ムーアの法則は生き延びる?/その時日本は??

1 本書
タイトルの”2030年”がいいですね。ちょっと先の設定。直ぐだど、日本の半導体の復活はありえないけど、2030年なら、あるかもしれない。そう願いたい、多くの人の心情をうまく汲んでいます。技術、科学、マーケット、サプライチェーン、政治との関係・・。生半可な知識と経験では書けない本で、著者の太田さんは、全体を把握しつつ、ディテールも書ける数少ない人材。ライターでありながら、大学で半導体の基礎にあたる量子物理学を学ばれています。
各章の見出しに使われているワードが、”ホワイトハウス”、”バイデン”、”台湾争奪”、”習近平”と・・・どれも政治ワードであり、ベル研でトランジスタが生まれて、シリコンバレーで発展・・・てな話しではありません。それでも、あくまで半導体が主役の話しです。
この本の後で、翻訳書も含めて、半導体関連の本をいくつか書店でみたのですが、私は他は読みませんでした。私が購入したのは2022年1月の4刷版。初版が2011年11月なので、わずか2ヶ月で3回増刷されています。それだけ、多くの人が読んだ本です。

2 本書との出会い
元上司の60歳のお祝い(昔で言うと定年のお祝い)の集まりで、元仕事仲間と久々に顔合せた時に、参加者の一人が、この本が、面白いと教えてくれました。紹介してくれたのは、デジタル系ASIC開発のリーダーだった人で、私は隣の部署で、アナログ系ASICと各種センサーの研究開発に関わっていました。こんな人には楽しい本です。
懐かしさを感じ、将来への予想(展望)には、なるほど!と感じたり、そうかな?そんなに簡単だろうか?と疑問をもったりです。一般の人にはどうでしょう?

3 ムーアの法則は生き延びる?/その時日本は??
半導体の集積度に関する有名なムーアの法則、それがいつまで続くのか。終焉は半導体技術の限界でおきるのか?半導体を必要とする製品が増えない限界でおきるのか?そのどちらも、当面はなさそうです。問題は、その時、日本の半導体産業がどうなっているのか?この本の最後の章でも論じられています。
ルネサスのCEOの柴田さんの講演を聞きました。飾らず、本音をズバッと言うスタイルに好感を持ちました。ラピダスのCEOの小池さんの講演を聞きました。海外にも通じる英語とプレゼンが素晴らしかったです。ソニーがイメージセンサで頑張っています。最終製品としての日本の半導体の世界でのシェアの低さ、これ以下はないぐらい落ちました。失敗しても、いいじゃないですか。実行部隊を若い人に任せてあげて、次の世代で新しい世界を作っていって欲しいです。

写真 本書の表紙(著者撮影)


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