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Claude×シナリオ: 悪そうな主人公に冒頭で共感させるSave the Cat演出

Claudeでキャラの描き方をブラッシュアップしよう

漫画に限らず物語の世界では、主人公が観客や読者にいかに魅力的に映るかが、その作品の成功に直結します。

ブレイク・スナイダーの提唱した「Save the Cat」の法則は、主人公に初期の好感を持たせるテクニックを具体的に示したものであり、映画、テレビドラマ、漫画に至るまで、幅広いメディアで効果的に用いられています。

本記事では、この「Save the Cat」理論の概要を説明しつつ、LLM(今回はClaude)を使ってどのように自分の作品に応用すれば良いかまで実例を使って解説したいと思います。


Save the Catの法則とは

「Save the Cat」はブレイク・スナイダーによって提唱された脚本執筆の方法の一部で、映画や物語の主人公が観客に好感を持たれる瞬間を作ることを重視します。

この理論の名前は、主人公が猫を救うような行動を示すことから来ており、それによって観客が主人公に感情的な共感を抱くきっかけを作り出します。
主な目的は、観客が主人公の成功を応援するように感情的に引き込むことです。

事例: パルプ・フィクションとマクドナルド

猫を救うというベタな展開は少ないですが、実際にこの手法がどのように使われているか見てみましょう。まずはパルプ・フィクションこの冒頭のシーン

ヴィンセント「パリじゃチーズいりのクォーターパウンダーをなんていうか知ってるか?」
ジュールス「チーズいりのクォーターパウンダーじゃないのか?」
ヴィンセント
「あいつらはメートル法だ。クォーター・パウンダーなんてわからないのさ」
ジュールス「じゃあ、なんていうんだ」
ヴィンセント「チーズ・ロワイアルさ」
ジュールス「チーズ・ロワイアル?ビッグ・マックは何ていうんだ?」
ヴィンセント「ビッグマックはビッグマックさ。でもル・ビッグ・マックな」
ジュールス「ル・ビッグ・マックかよ!ハハハ」

パルプ・フィクション

実はこの二人は薬物中毒で殺し屋です。普通の人ならなかなか感情移入できないですが、タランティーノ監督は得意の軽妙なやりとりをいれて好感を持たせることに成功しています。

事例: 有名な映画の主人公の演出

では他にも同じような手法をとられている映画の事例をClaudeに聞いてみましょう。


1. 『スパイダーマン』(2002)

主人公: ピーター・パーカー(スパイダーマン)
オープニングアクション: ピーターがスクールバスに乗り遅れそうになり、一生懸命追いかけるシーンでは、彼の社交的な不器用さと孤独が描かれ、観客の共感を呼びます。

2. 『シュレック』(2001)

主人公: シュレック
オープニングアクション: オープニングでシュレックが自分のスワンプ(沼地)でリラックスしている姿を見せ、語り手が童話を読む中、シュレックがその本を便所紙として使うユーモラスなシーンがあります。この行動は彼の粗野でありながら愛嬌のある性格を示し、観客に彼のキャラクターに好感を持たせます。

3. 『アルマゲドン』(1998)

主人公: ハリー・スタンパー
オープニングアクション: ハリーが彼の掘削チームを率いているシーンで、彼のリーダーシップとチームに対する深い愛情が描かれます。このシーンは彼の職人技と責任感を強調し、観客に彼の人物像を好印象にさせます。

4. 『タイタニック』(1997)

主人公: ジャック・ドーソン
オープニングアクション: ジャックがポーカーゲームでタイタニック号のチケットを勝ち取るシーン。彼の自由奔放な性格と冒険心が強調され、彼のラッキーな性質と魅力が観客に示されます。

5. 『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)

主人公: ハリー・ポッター
オープニングアクション: ハリーがダーズリー家の階下の戸棚で暮らしている様子を描くことで、彼の困難な状況と孤独感が強調されます。この背景は観客に彼への深い同情を引き出し、彼の冒険に対する応援感を生み出します。

これらの映画では、オープニングシーンがそれぞれの主人公の性格、状況、または道徳的価値を効果的に観客に訴えかける方法として使われています。これにより、観客は物語の初めからキャラクターに感情的に投資することが容易になります。


確かに!って感じですね。作品を見る時はあまり分析モードにならずに純粋に楽しみたい派なんですが、こうやって抽出してみると非常に参考になります。

事例: 悪そうな主役の映画

上記では有名どころを挙げましたが、正直みんな演出以前に本当にいいやつらなのでまだSave the cat自体の説得力にかけますね。

というわけで悪そうなやつらが主人公のものも分析してみましょう。Claudeさんお願いします。


1. 『ジョーカー』 (2019)

  • 主人公: アーサー・フレック(ジョーカー)

  • オープニングアクション: アーサーが病院で子供たちのためにピエロとしてパフォーマンスをするシーンです。彼のこの行動は、彼がまだ社会の正常な一員であり、善良さを保っていることを示しており、彼のその後の暴力的な変貌に対する深い背景を提供します。これにより、観客は彼の精神的な苦痛と社会に対する反抗に同情しやすくなります。

2. 『ゴッドファーザー』 (1972)

  • 主人公: マイケル・コルレオーネ

  • オープニングアクション: マイケルが第二次世界大戦の英雄として家族のクリスマスパーティに登場するシーンです。彼のこの背景と家族への献身は、観客に彼の人間性と責任感を感じさせ、彼が後に見せる冷酷な決断も何らかの正義感に基づいていると理解させます。

3. 『華麗なるギャツビー』 (2013)

  • 主人公: ジェイ・ギャツビー

  • オープニングアクション: ギャツビーが自身の豪華な邸宅で華やかなパーティを開き、多くの人々に夢と楽園を提供するシーンです。彼のこの行動は彼の隠された孤独と、デイジーへの一途な愛情を背景に持つものであり、彼の表面的な成功の影にある善意と悲哀を観客に感じさせます。

4. 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』 (2002)

  • 主人公: フランク・アバグネイル・ジュニア

  • オープニングアクション: フランクが父親に愛されたい一心で、チェック詐欺を行い始める背景が描かれることです。フランクが経済的に困窮する家族のために詐欺を始めたという事実は、彼の犯罪行為に対する同情を誘います。

5. 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』 (2013)

  • 主人公: ジョーダン・ベルフォート

  • オープニングアクション: ジョーダンが証券会社での最初の成功を遂げ、その収益で自分の家族を支え、友人たちに雇用を提供するシーンです。彼の成功が彼と彼の周囲の人々に幸福をもたらす様子は、彼の後の過剰な生活や非倫理的な行動に対してもある種の理解を観客に与えます。

これらの例は、いずれも主人公が観客に初期の好感を与えるシーンを描いており、「Save the Cat」の理論が如何にして複雑なキャラクターにも共感を生むかを示しています。


これは映画名は指定しました。(最後3作品は全部レオナルド・ディカプリオ…笑)

もうジョーカーなんて、あれだけ人の感情を引き寄せる悪役主人公がいるでしょうか。頑張れ!って思いますもん。 

ギャツビーは主人公ではないですが、まあ主人公みたいなものでしょう。パーティで花火があがるシーンは印象的ですが、超絶すごい人なのに一般人のように主人公に近づくあの仕草。かっこいいですね。

事例: 悪そうな主人公の漫画

では漫画も見ていきましょう。実際はゲスい主人公でもしっかり共感させることで主人公として確立させているのがわかります。


1. 『デスノート』

  • 主人公: 夜神月(ライト)

  • オープニングアクション: この物語は月が高校の授業中に退屈している様子から始まります。彼の優れた学業成績と他の生徒との距離感が描かれ、すぐに「デスノート」が彼の前に落ちてくる。このシーンは、月の日常と非日常の突然の交差を描くことで、読者の好奇心を強く惹きつけます。彼の最初の「正義」に対する考え方が垣間見え、彼の行動原理に対する理解を深めます。

2. 『進撃の巨人』

  • 主人公: エレン・イェーガー

  • オープニングアクション: 物語の開始時、エレンは激しい悪夢から目覚めます—巨人による破壊の夢です。彼の故郷が巨人に襲われ、母が犠牲になる直前のシーンが描かれることで、エレンの復讐心と人類への奮闘が強調されます。この衝撃的なビジュアルと感情的な打撃は、読者に強烈な印象を与え、彼の物語に深く引き込まれることになります。

3. 『バスタード!! -暗黒の破壊神-』

  • 主人公: ダーク・シュナイダー

  • オープニングアクション: この漫画は、封印された伝説の魔導士ダーク・シュナイダーが少年の体を借りて復活するところから始まります。彼の自由奔放で傲慢な性格が強調されていますが、彼が実は国を守るために戦うことになるという矛盾が、彼に対する興味を引き立てます。ダーク・シュナイダーの圧倒的な力とカリスマが、観客に強烈な印象を与えることで好感を引き出します。

4. 『闇金ウシジマくん』

  • 主人公: 丑嶋馨

  • オープニングアクション: この作品では、主人公の丑嶋が高利貸しとして登場し、彼の冷徹で現実的なビジネス手法が描かれます。彼の行動は厳しさと冷酷さを伴いますが、彼が扱う客たちの背景と比較することで、彼の現実主義と世の中への皮肉な見方が際立ち、独特の魅力を生み出します。

3. 『チェンソーマン』

  • 主人公: デンジ

  • オープニングアクション: デンジは極貧のデビルハンターとして登場し、借金返済のために命がけで悪魔と戦っています。彼の生活が非常に厳しい状況にあるにも関わらず、彼が抱く小さな夢(普通の食事をすることなど)には共感が寄せられます。彼の素朴で人間的な願望と、状況に抗しながらも前向きに生きようとする姿勢が好感を呼びます。

4. 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』

  • 主人公: 三日月・オーガス

  • オープニングアクション: 三日月とその仲間たちは、火星の町で私設軍事会社の下働きとして苦労しています。序盤で彼らが孤児として厳しい状況下にあることが描かれ、彼らが仲間として互いに支え合って生きる様子が強調されます。三日月の戦いは生存のためであり、その強さと仲間への忠誠心が観客に強く訴えかけます。

5. 『どろろ』

  • 主人公: 百鬼丸

  • オープニングアクション: 百鬼丸は身体の多くの部分を鬼に奪われた状態で生まれ、孤独に生きる少年剣士として描かれます。彼が自らの体を取り戻すために鬼と戦う姿は、視聴者に彼の不屈の精神と挑戦に対する勇気を感じさせ、深い共感と興味を引きます。彼の孤独と闘いが、観客に強烈な感情的なつながりを提供します。

これらの作品では、主人公たちが表面的には「悪」と見なされるような環境や行動をしているにもかかわらず、その背景にある動機や状況が彼らに対する深い共感や興味を生み出しています。これにより、読者や視聴者は彼らの物語に感情的に投資することが可能になります。


この中でも最も共感してしまうのはデンジです。これはSave the catならぬdogなんですが、まんまやってますね。

1ページ目で内蔵売ってる主人公なんて他にいないと思いますが、単純に不憫なのではなく、ポチタに対する優しさを感じるからこそ無茶苦茶な行動にも共感できてしまうところはあります。

バスタードは、まあほんとにゲスなんですけどね。ティア・ノート・ヨーコに召喚直後から尻に敷かれている点でバランスとれています。笑

オルフェンズのミカも悪魔的でイっちゃってますが、やはり十五少年漂流記的で少年少女で助け合う、その中で頼りになるやつという位置に共感してしまいます。

よく考えたらオルフェンズ漫画じゃないですね。まあいいか。

どろろもSave the catならぬSave the どろろ。鉄板ですね。異形でも助けてくれたからには悪い人ではなさそう。

まんがも好きですが、個人的にはこのアニメも好きだったんですよね。まあ終わり方には異論あるかと思いますが、喋れない期間が多い反面感情を見せる演出が多く、非常に勉強になります。

応用: 自分の作品のSave the catをClaudeとブレストする

では実際に自分の作品に使うにはどうしたら良いでしょうか。こちらの漫画を題材に説明します。

(よく考えたらこの並びに自分の漫画を置くなんておこがましすぎる企画だといまさら気づきました…あくまで技術的な解説だと思ってください)

こちらの主人公カレルは中世エストニアの兵士で魔女狩りを生きがいにしています。姉を殺した魔女を探すためですが、魔女に対しては少々過激です。

少々過激なカレル

彼の登場シーンで少しでも共感しやすくしたいので、Save the catな瞬間をいくつかClaudeに挙げてもらいました。


カレルは中世エストニアを舞台に魔女狩りに従事する兵士で、彼の個人的な動機は姉を殺した魔女を探すことです。以下はカレルのキャラクターに共感を抱かせる「Save the Cat」モーメントの演出案です:

演出案1: 負傷した子猫の世話

  • シーンの内容: カレルが市場を巡回中に、石にぶつけられ負傷した子猫を見つける。彼は子猫をそっと抱き上げ、自分のマントで優しく包み、家で手当てをしようとする。この行動が彼の内面の優しさと思いやりを示し、魔女狩りの厳しい仕事とは対照的な一面を観客に見せる。

演出案2: 年老いた元兵士への敬意

  • シーンの内容: カレルが村を巡回している際、戦争で負傷し乞食となっている年老いた元兵士を見かける。彼は自分のわずかな食料を分け与え、さらには自分の上着をかけてあげる。この行為が彼の尊敬と共感の情を観客に伝え、彼の人間性を浮き彫りにする。

演出案3: 孤児たちとのひと時

  • シーンの内容: カレルが巡回中に孤児たちが遊んでいるのを見つけ、彼らに手作りのおもちゃを配るシーン。姉を亡くした彼自身の孤独と喪失感から、子どもたちへの共感が生まれ、彼らに優しく接する姿が描かれる。この優しさが彼の内面の温かさを示す。

演出案4: 敵をも救う慈悲

  • シーンの内容: 魔女と疑われる女性が村人たちに攻撃されている場面にカレルが遭遇する。彼は女性を庇い、彼女が公正な裁判を受ける権利を持つべきだと主張し、女性を暴徒から守る。この行動が彼の正義感と倫理的な強さを示し、単なる兵士以上の深い倫理観を観客に印象づける。

演出案5: 古い友人の助け

  • シーンの内容: カレルが昔の友人である農夫が作物の収穫で困っていることを知り、手伝いに行く。彼は一日中農作業を手伝い、その晩、農夫の家族と共に食事を楽しむ。このシーンはカレルが地域社会に根ざした人物であることを示し、彼の親しみやすさと人々との強い絆を強調する。

演出案6: 市場でのラズベリーを眺める

  • シーンの内容: カレルが地元の市場を歩いていると、ラズベリーの露店に立ち止まる。彼はラズベリーを手に取り、幼い頃に姉と一緒にこの市場でラズベリーを選んでいたことを思い出して微笑む。この瞬間、彼の表情からは失われた無邪気な時代への懐かしさと、姉への深い愛情が感じ取れる。観客にとって、彼の優しさと喪失感が伝わり、彼のキャラクターに共感しやすくなる。

演出案7: 姉の墓参り

  • シーンの内容: カレルが一人で姉の墓を訪れるシーン。彼は墓に花を手向け、静かに祈りを捧げる。この行為が彼の内面の葛藤と、姉への未だ消えない強い絆を表しています。観客は彼の行動を通じて、彼の悲しみと復讐への動機を深く理解し、彼の人間的な側面に感情的に引き込まれます。


ここからラズベリーの話と墓参りの話を採用しました。

ラズベリーを眺めてにっこり


姉に似た人を見たことを姉の墓に報告

これは少し安直かもしれませんが、おかげでラズベリーを物語の重要な位置づけにしたら面白いかも?とか子供が出てくるサイドストーリーいれるか…など色々アイデアが湧きました。

Claudeを使ってSave the catモーメントを沢山考えよう!

ここまでSave the cat的な演出をすることで主人公のキャラの立ち上げをする方法を解説しました。

Claudeでもハルシネーションが起きる可能性は大いにありますが、演出方法なんてハルシネーションどんとこいです!笑
あくまで会話相手として、アイデアを一緒に練るのは楽しいですよ。

迷ったら自分の好きな作品を列挙して解説してもらいましょう。自分がその作品を好きになった理由は、実はSave the cat的な演出だったのかもしれないですよ。

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