第1話@【物語】パパの仕事は「むしょく」

【第1話 ボクのたんじょうび①】

僕は健太。
「健康になりますように。大きくなりますように。」
と付けたってパパは言ってた。

みー姉ちゃんは
「キラキラネームの時代なのにねー。でも私は健太って名前大好きよ。」
と笑っていた。

みー姉ちゃんは、お父さんのお姉ちゃんだけど
「おばさんて呼んだらコロッケにグリンピース入れちゃうからね!」
って言われたから、みー姉ちゃんって呼んでいる。

みー姉ちゃんのコロッケはとっても美味しいのに、グリンピースなんてついてきたら美味しくなくなっちゃうよ! 

今日は8月4日、僕のお誕生日なんだ。
このお家で初めてのお誕生日だから、コロッケにクリームを入れてくれるんだって。

「コロッケにクリーム入れたら甘くならないの?」
って聞いたら、甘くないクリームを入れるって言ってた。

僕はクリームって言われると、誕生日の時にもらえるシュークリームしか浮かばないから、甘くないクリームが分からないや。
甘くないのに美味しいのかな?


誕生日ってね、僕が産まれた日なんだけど、僕を産んだオカアサンはお金持ちと結婚したいから出ていったんだって。
ババさんが言ってた。

ババさんはパパとみー姉ちゃんのオカアサンなんだけど、パパもみー姉ちゃんもババさんのことを「ババア」って呼んでた。

僕が
「年上の人には『さん』つけなきゃいけないって、みー姉ちゃん言ってたのに、ババアさんにはつけなくていいの?」
って聞いたら、

みー姉ちゃんとパパが僕に
「ごめんなさい」
って謝った。
それからババアさんは「ババさん」になったんだ。


「健太、今からコロッケ作るからキッチンには来ちゃダメよ。油が散ると健太が痛いからね。」

リビングというところでご本を読んでいたら、みー姉ちゃんが入ってきて言った。

・・・このお家に来てすぐくらいに「来ちゃダメ」って言われていてのを忘れていて、パチパチって音がするから何だろう?と思ってみー姉ちゃんの側に行っちゃったんだ。

そしたら、すぐに火を止めたみー姉ちゃんに抱っこされて、ブラーンてなったままこのリビングに連れてこられてとっても怒られた。

両手を握られて、目をスッゴく見られて、みー姉ちゃんは膝をついてたんだけど僕はずっと立ったままで、手も全然離してくれなくて、火傷っていう怪我がどれだけ痛くて怖いかたくさん言われた。

僕は火傷よりもみー姉ちゃんの顔が怖いと思ったけど内緒にした。
女の人に顔のことを言っちゃダメだと、テレビの人が言ってたからだ。

顔が怖いの代わりに
「ごめんなさい。」 
って言ったら
「今度キッチンに来たら、コロッケ揚げてるときはお部屋から出るの禁止するからね。」
って言う。

1人でお部屋にいるのはつまらないから
「はい。」
って答えたら、みー姉ちゃんは恐い顔をやめてニコって笑って
「よし! 良い子。」
って頭を撫でてくれた。

それから、みー姉ちゃんがコロッケを作っているときは、キッチンに行っちゃダメを忘れないようになったんだ。

・・・今日も
「うん! キッチン行かないよ。」
って答えたら、みー姉ちゃんはニコッと笑って
「良い子。」
って言って僕の頭を撫でてキッチンに行った。

僕はみー姉ちゃんがニコッてするのが大好きだ。
頭を撫でられるのはもっともっと大好きだ。
だから僕は、みー姉ちゃんの言うことを聞くのが好きなんだ。

ー 2話に続く ー

「プロローグ ボクのパパのおしごと」
はこちらから
     ↓ ↓ ↓
プロローグ@【物語】パパの仕事は「むしょく」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?