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恩田陸「愚かな薔薇」🌹

恩田陸「愚かな薔薇」(徳間書店)。紙版の表紙は期間限定で萩尾望都先生の描いたカバー絵。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B09NVK494J/
 夏が近づく季節、母方の故郷・磐座を訪れた奈智。十四歳になると参加することになる二か月に及ぶ長期キャンプは、栄えある職業「虚ろ舟乗り」となる適性を見極めるためのものだった。キャンプの本当の目的を知らないまま参加した奈智。磐座の地や両親の死にまつわる因縁に、彼女は翻弄され続ける。そして何より吸血鬼となった自分自身の無意識の行動に怯えることになる。
 恩田陸先生の作品は怖いのである。未知の世界からの見えざる恐怖がある。ヒロイン奈智の通る道は、女性として子供から大人になるための結界を踏み越えて行く行為。行間から血の匂いが漂う精神的な破瓜である。そして木霊が跳梁跋扈する暴力の限り。その行く先は、人類の未来と可能性を昇華するSF仕立ての宗教書として燐光を放っている。

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