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台湾のジェンダー平等施策、なかでも「ITで男女比を公開する仕組み」についての報告資料を公開します。

最近、ボランティア案件で台湾のジェンダー平等施策、なかでも「ITで男女比を公開する仕組み」について、30分で報告するための資料を作成しました。

お相手の方からご了承をいただきましたので、簡単なものではありますが資料を公開させていただきます。台湾政府がネット上で公開しているものを粗訳しただけですが、どなたかの参考になれば幸いです。

(誤訳や、もっとこうした方がいい、入れるべき項目が抜けている等ございましたら、ぜひご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。)

※上記資料に記載した日本語翻訳は、資料作成者による取り急ぎの粗訳・意訳であり、内容を保証するものではありません。あくまでご参考程度にてご覧いただき、引用される際などにはご自身で翻訳されることをお勧めいたします。
※CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) 商用含め、引用などに特に許可は必要ございませんので、ご自身の責任でご自由にご利用ください。
※資料はこちらからダウンロードも可能です。

アジアでトップレベルを誇る台湾のジェンダー平等パフォーマンス

背景

国連への再加盟を未だ認められていない台湾ではあるが、1979年の国連総会で採択された「女子差別撤廃条約(CEDAW)」を国内法に取り込む形で2011年に「消除對婦女一切形式歧視公約施行法(意訳:女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約施行法)」を制定。2012年1月1日より施行。

1995年の第4回世界女性会議・北京宣言のコアバリューである「※ジェンダー主流化(Gender Mainstreaming)」を礎に、2005年から政府内で「ジェンダー主流化」を推進する動きが高まっている。

※ジェンダー主流化とは
『ジェンダー主流化とは、すべての開発政策、施策、及び事業の計画、実施、モニタリング、評価の各段階で、ジェンダー視点に立った上で開発課題やニーズ、インパクトを明確にしていくプロセスのことであり、ジェンダー平等を達成するために必要な手段であると認識されている。
なお、ジェンダー平等とは、男性と女性が同じになることを目指すものではなく、性別にかかわらず人生や生活において、さまざまな機会が平等に与えられ、自己実現の機会を得られるような社会の実現を目指すことを指す。また、ジェンダー(平等の)視点とは、「男女の固定的役割分担や力関係が社会的に作られたものであることを意識していこうとする視点」のことである。JICAの事業においては、例えば、計画・実施されている活動が、男性と女性の社会的な役割の違いや力関係によって生じる課題やニーズの改善・充足に役立つものであるかどうか、新たにジェンダーによる格差を生じさせていないかどうか、意思決定に女性が参加することを促進しているかどうか、と言った視点から事業を捉え直してみることなどを含む。』

(引用元出典:JICA 事業におけるジェンダー主流化のための手引き
【都市開発・地域開発】(2015)年2月)

2005年には憲法の改正によって、比例区の議員当選者の男女比を同数とすることが定められた=「クオータ制」の導入。(中華民國憲法增修條文
日本語の参考記事:西日本新聞『台湾の女性国会議員38%に クオーター制着実に効果 西南大 王貞月さん講演 「男性中心の選挙文化を変えたい」』

2010年に学者や民間の団体などが連帯して草案を作成し、2011年に行政院が制定した「男女平等政策ガイドライン」では、各省庁及び地方政府が、制作や法律に関わるプロジェクトを始動する際、参加メンバーの男女比率等を示す資料を提出することが義務付けられた。

台湾のジェンダー平等のパフォーマンス関連トピックス

立法委員(国会議員に相当)の女性比率が4割を突破。世界ランキング18位はアジアでトップ。日本はシンガポール(56位)、中国(85位)、韓国(122位)に次ぐ166位。(2020年時点)

行政院(内閣に相当)「ジェンダー平等委員会」(2012年設立)

行政院(内閣に相当)ジェンダー平等委員会

■ 目的:人権保障、性差別の解消など、ジェンダー平等促進のために結成された組織。

■ 任務:

  1. ジェンダー平等のための基本政策、法案、計画、報告及び関連措置の統合・協力及び協議。

  2. ジェンダー関連の政策、計画、戦略的な開発に関する協議と審議。

  3. 女性に対するあらゆる差別を解消するための公約やその執行法の推進と指導。

  4. 各機関・機構がジェンダー平等を推進する際の協力や指導。

  5. その他、主要なジェンダー平等を議題とする統合・協力及び改善措置に関する話し合い。

■ 組織:
委員会は25〜35人で構成され、行政院長(首相に相当)が召集人、副行政院長(副首相に相当)が副召集人、行政院(内閣に相当)の政務委員(無任所大臣)が執行秘書を担当する。その他の委員は行政院長が指名及び招聘した関連部会(省庁に相当)の首長、民間の専門家、ジェンダーや女性団体の代表などが担当する。任期は2年、無給。

■ 歴代の委員会名簿や活動内容(会議議事録を含む)、成果報告等は、行政院のオープンデータ宣言に従い、委員会の公式Webサイト上ですべて公開されている。

行政院「ジェンダー平等委員会」公式サイト(https://gec.ey.gov.tw/Index.aspx
第25回委員会議前の協商会議議事録への出席簿へのサイン
会議内容は、各出席者の発言まで記録されている。出典:第25回委員会議前の協商会議議事録

「ジェンダー平等委員会」による最新の報告書より一部を抜粋

出典:行政院「ジェンダー平等委員会」による報告資料「開啟性平之眼-我國性別平等重要政策及推動現況」(2022年4月21日)(※クリックするとPDFがダウンロードされます)

国政における意思決定への女性参加は、10年前と比較して僅かに増加。男女差が縮小。
地方政府の意思決定においての女性参加について。 2020年末、地方政府における責任者クラスや首長の女性割合は24.7%。一部エリアではすでに1/3以上が女性を占めるようになったが、一部には15%にも満たないエリアも。
2020年、公衆に対して有価証券の募集を行っている企業(上場企業を含む)の女性取締役は2,542名で、14.4%。男性取締役は15,159名で85.6%。2013年と比較すると女性取締役は611名・割合でいうと2.6%増加。まだ男性が多くを占めている。
2020年、商工会の理事やボードメンバーにおける女性の割合は、2013年の28.4%から33.4%まで増加。
女性の就業率は、25〜29歳でピークに達した後、徐々に低下。50歳以降は世界の主要国よりも低い。 15歳以上の女性の就業率は2012年以降50%を突破し、2020年では51.4%に達している。
男女の平均時給格差は、2010年の17.1%から2020年には14.8%まで解消され、日本の30.7%、韓国の30.4%、米国の17.7%を下回っている。
男性の育児参加比率。 「ジェンダー就業平等法」で会社員が無給の育児休暇を申請できることが定められているほか、2009年5月からは社会保険に無給の育児休暇中の手当が支給されるようになった。2020年にはこの手当が支給された件数が8.3万件を突破した。うち6.8万件(81.8%)を女性が占めるものの、近年では男性による申請も増加傾向にある。

プラットフォーム「重要ジェンダー別統計データベース」(行政院運営)

行政院「重要ジェンダー別統計データベース」
https://www.gender.ey.gov.tw/gecdb/

2011年に行政院が制定した「男女平等政策ガイドライン」では、各省庁及び地方政府が、政策や法律に関わるプロジェクトを始動する際、参加メンバーの男女比率等を示す資料を提出することが義務付けられた。

提出された資料は「ジェンダー平等委員会」によって審査され、基準を満たさない場合は却下される。

私のインタビューに対する、デジタル担当大臣オードリー・タン氏のコメント:
「重要なのは、すべての公務員たちが『自分たちが関わる仕事が、どれだけジェンダーの平等に影響するだろうか』と考えるように鍛えられたこと」

この行政院「重要ジェンダー別統計データベース」は2015年から設置され、あらゆるジェンダー別の統計が公開されている。

■ 国内指標:「男女平等政策ガイドライン」に沿った6大領域を主軸にした各種機関・機構の統計データを公開。検索機能も充実している。

6大領域

  1. 権力、意思決定、影響力(政治参加、社会参加、国際問題、会議参加等。)

  2. 雇用、経済、福祉

  3. 教育、メディア、文化

  4. 安全と司法(安全、セクシャルハラスメント、性的暴行、家庭内暴力等。)

  5. 健康、医療、ケア

  6. 環境、エネルギー、テクノロジー(各分野における教育、雇用、意思決定者、防災と環境の救助等。)

■ 国際指標:HDI、GII、GEI、GGI、SIGIなど国際ジェンダー平等指数及び自国の状況
■ ジェンダー分析:様々な研究や統計分析
■ 統計図表:様々な統計図表
■ 参考資料:参考リンク

公開されている6大領域の統計データ例

例①「雇用、経済、福祉」内で公開されている「託児所スタッフの人数」

  • パラメータ:「統計期間」「各エリア(台湾の地方都市)」「性別(男/女)」「職位(主任/スタッフ/アシスタント」などが選択可能。

  • 表示内容:統計値/前年度比の増減数/前年度の増減比率などが選択可能。

  • 表示形式:「ウェブで表示/各種グラフ/地図」などが選択可能。

  • 出力形式:印刷、Excel形式・JSON形式(JavaScript Object Notation)での出力も可能。

「2020年度、台北市の託児所スタッフ数のうち、主任の人数は252名、うち女性は249名」であることが表示できる。

例②「雇用、経済、福祉」内で公開されている「低収入人数」

2020年度、台北市低収入人数が8,600名。うち男性は5,026名、女性は3,574名。

例③「権力、意思決定、影響力」内で公開されている「出国訪問」

2019年1月から12月までの期間中に、世界それぞれのエリアを訪問した政府スタッフ、民間代表、学術界の専門家、青年大使、外交員、その他それぞれ、総計及び性別ごとの人数、性別比率が公開されている。

例④「権力、意思決定、影響力」内で公開されている「外交機関館長」

外交機関館長の総人数及び、女性の人数、女性が占める比率。 2010年から毎年更新されている。提出元は外交部。

例⑤「権力、意思決定、影響力」内で公開されている「外交関連の各種訓練」

外交関連の各種訓練。

例⑥「権力、意思決定、影響力」内で公開されている「学術会議の出席人数」

性質別(テクノロジーや医療、アート、交通、レジャーといった産業別)、 学術会議の出席人数(政府・民間)などのデータもある。

例⑦「教育、メディア、文化」内で公開されている「各学校の校長人数」

2021年度の公立中学校の校長は合計722名。 うち男性が473名、女性が249名。
教育部によるデータ。

プラットフォーム「ジェンダー平等観測駅」(行政院運営)

代表的な指標のみ、視覚的に分かりやすく、シンプル化されたプラットフォーム。https://geo.ey.gov.tw/
各エリア別、地方議会議員のジェンダー比などが一目瞭然。
表示する年度もプルダウンから選べる。
「ジェンダー平等観測駅」のFacebookページ。 Facebookが人口比で日本の4倍近く使用されている台湾では、 Facebookで活動報告やリンクのシェアによる啓蒙などが活発に行われてる。

補足:インターネットで啓蒙しているサイト(オードリー・タン氏の推薦)

①ジェンダー指標データプラットフォーム(「財団法人婦女権益促進発展基金会」運営)

http://www.gender-indicators.org.tw/zh-tw/home

■ 掲載内容:

  • 台湾のジェンダー指数及びランク(2011〜毎年更新)

  • 行政院(内閣に相当)のジェンダー平等政策ガイドラインに関連したデータ

  • 国連「第4回世界女性会議 北京宣言」

  • 国連SDGsのうちジェンダー関連のもの

掲載されている各種統計データ
(掲載ページ:http://www.gender-indicators.org.tw/zh-tw/policy/index/GEPG

  1. 権力、意思決定、影響力

    1. 行政院に所属する各機関の女性首長比率

    2. 女性立法議員(国会議員に相当)当選比率

    3. 司法院(最高司法機関)の女性大法官の比率

    4. 選挙によって選出された女性首長の比率

    5. 海外駐在機関の女性館長の比率

    6. 女性の簡任公務員の比率

    7. 公衆に対して有価証券の募集を行っている企業(上場企業を含む)の女性取締役の比率

    8. 大学・専門学校等における女性校長の比率

    9. 研究員の女性比率

  2. 雇用、経済、福祉

    1. 15歳以上の人口就業率

    2. 失業率

    3. パート・アルバイトや派遣スタッフの比率

    4. 就業者の毎月の収入

    5. 就業者の職位

    6. 中小企業の責任者における女性比率

    7. 農家経営管理者における女性比率

    8. 15−49歳の既婚女性で、3歳未満の子どもがいる場合の、家庭におけるメインの育児担当者

    9. 国民年金加入者数

    10. 国民年金給付者数

  3. 人口、婚姻と家庭

    1. 15歳以上の人口婚姻分配比率

    2. 家庭の組織形態

    3. 15−49歳の既婚女性で、3歳未満の子どもがいる場合の、家庭におけるメインの育児担当者(※項目が上記と重複)

    4. 15−64歳の既婚女性の1日の家事平均時間内訳

    5. 帰化して台湾(中華民国)国籍を取得した人の数

    6. 総合出生率

    7. 出生した子どもが、どの姓を取得したかの内訳

    8. 放棄された遺産相続人の数

  4. 教育、メディア、文化

    1. 小学生の就学率

    2. 中学生の粗就学率

    3. 高校生の粗就学率

    4. 大学等の粗就学率

    5. 大学等の科学領域における学生の女性比率

    6. 大学等の工学・製造・建設領域における学生の女性比率

    7. 大学等の教師における女性比率

    8. 15歳以上の人口教育水準

    9. 15−17歳の性行為経験者における避妊実行率

    10. 未成年(15−19歳)の女性出産率

    11. 小中高大学等におけるセクシャルハラスメントの統計

    12. 放棄された遺産相続人の数(※項目が上記と重複)

    13. インターネット使用率

  5. 安全と司法

    1. 成人女性が一年以内にDVを受けた割合

    2. 小中高大学等におけるセクシャルハラスメントの統計(※項目が上記と重複)

    3. 性的暴行の被害者数

    4. 性的暴行の容疑者数

    5. 警察によって調査された人身売買事件数

  6. 健康、医療、ケア

    1. 新生児の死亡率

    2. 15−17歳の性行為経験者における避妊率(※項目が上記と重複)

    3. 20−49歳の既婚・離婚女性の現在の避妊率

    4. 妊婦の死亡率

    5. 妊婦の産前検査の平均利用率

    6. HIV感染者における女性比率

    7. 成人の太り過ぎや肥満率

    8. 60歳の平均余命

  7. 環境、エネルギー、テクノロジー

    1. 15歳の科学のPISA(OECDによる学習到達度調査)平均

    2. 大学等の科学領域における学生の女性比率(※項目が上記と重複)

    3. 大学等の工学・製造・建設領域における学生の女性比率

    4. 中央気象局の高級官員等、管理者における女性比率

    5. インターネット使用率(※項目が上記と重複)

掲載例:上記は「司法院(最高司法機関)の女性大法官の比率」。 表示方法をグラフか表組みから選択でき、対象期間も選択可能。出典へのリンクも設置されている。

②「台湾女人」(「国立台湾歴史博物館」運営)

https://women.nmth.gov.tw/

■ 掲載内容:

  • 8大テーマに沿った各種コンテンツ
    (身体文化/婚姻地位/日常生活/風俗文化/教育/仕事/創作/婦女運動)

  • 台湾の歴史における女性関連の軌跡

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