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『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光(新潮文庫nex)

☆4.0

ミステリ作家の大御所、宮内彰吾が亡くなった。
彼は妻子ある身でありながら多くの女性と交際していた。
校正者をしていた母もその一人だった。
つまり僕はそんな不倫の末の子どもだ。

宮内の長男から未発表の原稿があるらしいと連絡を受け、成り行きでその遺稿探しに取り組むことになった。
交際していた女性や出版関係者に話を聞いてみるが、ろくでもない姿しか見えない。
でもミステリ作家として愛されていることもわかり、なんとも言えない気持ちになりながら捜索を続けるが……


普段あまり本を読まなかったり、ラストを先に読んじゃうもん、なんて人たちがいたら、是非この本を素直な気持ちで最初から最後までじっくり読んでみてほしい。
そんなあなたたちにきっといちばん届けたい物語なのだと思うから。
本ってこんなにもすごいんだって知ってほしいよ、私も。




以外ネタバレですよ。






これは紹介する時どうするか迷うのもわかる。
すごいことやってるんですよ、本当。
その苦労に涙する思いです。

物語としてもきちんと謎が用意され、それを読み解く手がかりも程良く配置されている。
その上でのこの仕掛け。
これ書いてる時、毎夜うなされたりしてそう。

献辞にもあるように、A先生に貰った特別な驚きを新鮮に覚えていて、それが杉井光さんの視界を広げた素敵な経験なのでしょう。
この作品でまた新たな世代へ向けて、より手を尽くした驚きを。
この思いのリレーがきっちりとバトンリレーで繋がったな、という感動がありますね。
「驚いたでしょ?」というミステリ愛に満ちた悪戯な表情が見えるようです。

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