八尋真昼

読書が好き。小説なら幅広く。たまにエッセイやノンフィクションも読みたい。 ほぼ読書感想…

八尋真昼

読書が好き。小説なら幅広く。たまにエッセイやノンフィクションも読みたい。 ほぼ読書感想文。

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ドルリー・レーンという人

エラリー・クイーン悲劇四部作すべて読んだ方対象に書いております。 『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』の四作でございます。 今回読んだのは角川文庫の訳者が越前敏弥さんのものです。 ネタバレしてますので、未読の方はお戻りくださると幸いです。 エラリー・クイーンの悲劇四部作を一気に読んでみました。 ちゃんと順番通りに読みましたよ。 『Xの悲劇』が初エラリー・クイーンの自分は、まったくエラリー・クイーンに詳しくないし、ミステリ自体にも知識があるわけでもないで

    • 『半席』青山文平(新潮文庫)

      ☆4.5 御家人から旗本への出世を目指し、徒目付の仕事に真面目に取り組んでいる片岡直人は、徒目付組頭の内藤雅之に外部からの頼まれ御用を度々任されてしまう。 出世に関わりない仕事であるのに、その面白さとやりがいに、自らの狭い視界を広げさせてゆく。 六編収録の連作短編集。 事件が起きても、犯人の自白とその処罰が決まってしまえば、それ以上の捜査は行われない。 しかし人情としては「何故」がわからなければ先に進めない人もいる。徒目付組頭の内藤はその「何故」を頼まれ御用として片岡に託

      • 『向日葵の咲かない夏』道尾秀介(新潮文庫)

        ☆4.0 夏休みを迎える終業式の日、休んでいたS君に届け物をするため彼の家へと向かったミチオ。 そこで見たのは首をつって死んでいるS君が揺れている姿だった。 学校に向かい事情を説明し警察を呼んでもらったが、刑事から聞かされたことにミチオは混乱する。 S君の死体などそこにはなかったというのだ。 S君は行方不明として捜査されている。 一週間後、妹のミカと過ごしていたミチオの前にS君は姿を変えて現れた。 彼は訴える。 「僕は殺されたんだ」と…… 再読だったけど、その怖さは新鮮に

        • 『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光(新潮文庫nex)

          ☆4.0 ミステリ作家の大御所、宮内彰吾が亡くなった。 彼は妻子ある身でありながら多くの女性と交際していた。 校正者をしていた母もその一人だった。 つまり僕はそんな不倫の末の子どもだ。 宮内の長男から未発表の原稿があるらしいと連絡を受け、成り行きでその遺稿探しに取り組むことになった。 交際していた女性や出版関係者に話を聞いてみるが、ろくでもない姿しか見えない。 でもミステリ作家として愛されていることもわかり、なんとも言えない気持ちになりながら捜索を続けるが…… 普段あま

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        ドルリー・レーンという人

          『ステップファザー・ステップ』宮部みゆき(講談社文庫)

          ☆3.6 金持ちだけを標的にしている泥棒の俺は、仕事のためある家に忍び込もうとした時、落雷のせいで屋根から落ちた。 それを助けてくれたのは中学生の双子の直と哲だ。 両親がそれぞれの愛人と駆け落ちしてしまい、残された二人で暮らしているらしい。 双子が暮らしていくお金を得るため、半ば脅される形で泥棒の手助けを双子がすることに。 上手く侵入できたターゲットの家の中で俺が見たのは、壁という壁につけられた鏡に囲まれた異常な景色だった…… というのが一編目「ステップファザー・ステップ

          『ステップファザー・ステップ』宮部みゆき(講談社文庫)

          『黄金蝶を追って』相川英輔(竹書房文庫)

          ☆3.8 SF・ファンタジーに属する作品群六編が収録されています。 どの作品もどこかノスタルジーを感じさせます。 掴みたいのに掴めない何かを、この中に探してしまう。 そんな気持ちになりました。 読み終わって考えると、その何かとは「希望」なのかもしれないなと思うのです。 「星は沈まない」 長くコンビニ業界の会社に勤めそれなりに出世するも、ある事件から不採算店の店長に降格され十年。 この店はAIを導入することでほぼすべての業務を代行できるシステムのモデル店舗になると決定された

          『黄金蝶を追って』相川英輔(竹書房文庫)

          『南の子供が夜いくところ』恒川光太郎(角川ホラー文庫)

          ☆4.0 ゆるーくつながる七編が収録されています。 語り口は淡々としているが、そこには確かに叙情が滲む。 南国の架空の島、トロンバス島が主に舞台となっているが、いつの間にか現実との境界を越えてあちらへ行ってしまいそうになる気持ちを体験できました。 「南の子供が夜いくところ」 一家心中による死を迎えようとしていた一家が、訪れたバスの露店で出会ったのは、120年生きている呪術師の女性ユナだった。 息子のタカシはユナに連れられていったトロンバス島で生活しながら、別々の島で働いて

          『南の子供が夜いくところ』恒川光太郎(角川ホラー文庫)

          『カッコーの歌』フランシス・ハーディング(東京創元社)

          ☆4.7 20世紀初頭、11歳のトリスは別荘滞在中に高熱を出して意識をなくした。 どうやら池に落ちてずぶ濡れになっていたらしい。 その上、熱のせいか前後の記憶がなくなってしまい、周りのことも少し曖昧に感じている。 目覚める時に聞こえた「あと七日」という耳ざわりな声や笑い声が頭に残るが、一体何のことかわからない。 なくした記憶に関係があるのだろうか。 時を同じくして、トリスの体にも異変が起こりはじめる。 恐ろしい飢えを感じるほどの空腹に悩まされるようになったのだ。 いくら食

          『カッコーの歌』フランシス・ハーディング(東京創元社)

          『嘘の木』 フランシス・ハーディング (東京創元社)

          ☆4.2  高名な博物学者の父を持つ14歳のフェイスは、尊敬する父の影響を受けて博物学を好んでいる。 しかし、父が発見し世界を熱狂させた"翼を持つ人類の化石"が捏造であると新聞に記事が出てしまったことで、人の目を逃れ一家でヴェイン島に移住する。 島の人々は一家を歓迎してくれたのだが、捏造の噂はすぐ島まで届き、その狭い人間関係はめちゃくちゃに。 そんなある日、父親が死亡してしまう。 周りはみな自殺と疑わないが、娘のフェイスは何かを隠していた父の様子から疑問を持ち、父の突然の

          『嘘の木』 フランシス・ハーディング (東京創元社)