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『おいしいごはんが食べられますように』


絶対食べれないよ。

冒頭から失礼な感想になってしまうことを承知で。この作品はあまりにもグロすぎた。というより、タイトルとの落差が凄すぎて驚いた。
どうしたものか。何故こうなってしまったのだろうか。
ほんわかした装丁こそが本作の1番のミスリードである。ひどい
中身を読まないでプレゼントとしてこの本を贈ろうものならば、残るのは嫌悪感である。いやまあ芥川賞受賞作なのはわかった。ただ気をつけなければならない。特に「職場の方に贈る」のは。

またネタバレをしない程度に書くことをモットーとしているが、内容に触れてしまうことは避けられない。その為予期せぬ間違いを起こしてしまうことがあるかもしれないので、ネタバレNGの方はここまでで回れ右をしていただきたい。よろしくどうぞ。


○あらすじ

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。
職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。

-Amazon書籍概要から引用-

○主要キャラクター


二谷・・・本作の主人公にして一番悪いヤツ。こいつの精神性の低さに辟易したまま物語は進む。
○したい

藤さん・・・既婚者。彼もまあまあ気持ち悪い

芦川さん・・・ヒロインにて諸悪の根源。ここまで好きになれないヒロインがかつていただろうか。いいや、いないだろう。こういう人と現実世界で出会ったことがない。

押尾さん・・・準ヒロイン枠。上の3人と比較すると高レベルの常識人。だがこの人も鼻につくところがある。こういう人、職場によくいる

支店長・・・冒頭一瞬しか出てこない。が彼こそが本作で一番オーソドックスな立ち回りなのではないか。空気である

○本作の特徴


私の主観だが、当作品の特徴として「登場人物の誰ひとりにも感情移入ができない」ことが挙げられる。なんかそういうアニメ以前にもあったな。「おいしいごはん」を想像し、
ほんわかした気持ちで臨もうものなら絶望の淵に立たされる。というか私がそうだった。これはただのクソ狭い職場内でおこる「陰湿な人間関係(井の中の蛙大海を知らず)シチュエーション」である。あまりにも限定的すぎてかわいそう。こんな人生やだよ。私は耐えられない。
大手の地方支店だとこういうシチュエーションあるのかね?
うーん。わからん。

○二谷のやばい精神性


二谷(おとなこども)が基本視点として物語が展開されていく。
彼はとても残念なことに「自分を優秀だと思っている」勘違い野郎である。
さらには上から目線、こだわりの強さ、陰湿、コミュ症と様々な病気を併発している。なんか聞いたことあるな。
これを書いていて私のとても好きな名言が強く当てはまったので、ここで引用しておく。

YouTuber はっしーの名言
5:08
「やっぱり食事がバグってる」やつは「バグってる。心も」
「心のバグりは食事から」

京大パチンカス列伝〜資本主義を諦めた男〜より引用


本当にわかる。言語化能力のプロ


まさにこの二谷の精神性がわかる名言となっている。
※殆ど、この一言でこの作品は完結するくらい大切な文脈なので、ぜひまだ見てない方はこの言葉を思い出しつつ読書体験に臨んでほしい。


○芦川さんのやばい精神性


その二谷とよくある雰囲気に流されて付き合うヒロインが芦川さんである。
実家暮らしで甘やかされて育ってきた箱入り娘。人間としての魅力、中身の深さが全くない
ちなみに私はこういう女の子が大の苦手である。
そしてこの子、料理が得意である。
手作りでお菓子を作り、職場に振る舞うなど現代には珍しい、少し浮世離れした距離の詰め方をしてくる。

いちおうおぼえておこうね
まあこんなもんか。

○見どころ


本作品はこの二谷と芦川、そして押尾の間に「愛情表現描写が一切ない」ことがポイントである。体を重ねる表現があるものの、それは食事や排泄と同じような温度感で描かれる。幸せな文脈で使われていない。

また、二谷が芦川さんと付き合ってることを全ての社員にバレていることが分かる瞬間の描写もグロい。こういう小さなコミュニティって噂も早い。
そして二谷が全く芦川さんのことを愛していないというところがクズ全開で良い。「アクセサリー感覚」で可愛い彼女をキープしている、そんな〇〇〇〇〇〇野郎(あまりにも攻撃的な表現のため脳内で補完下さい)が本作の見どころである。

○本作から読み解く<パーソナルスペースの重要さ>

ここまで書いていて気づいたこと

二谷はよくいるクソ野郎ってだけでそこまで性格が破綻しているわけではないと思った。
冷静になって考えてみた。
私が思うに彼はとても潔癖なのだ。人が作った料理をどこかで「汚い」と思っている。
作る工程がブラックボックスになっている「完成品のインスタント食品やコンビニ弁当」を好む。

これは人づてに聞いた話だが、現代を生きる子供たちは「友だち家で出されたご飯を食べれない」らしい。
聞いて驚いてしまった。
友達といえ、他人である。
知らない人が素手に触れた食材で作られる料理を生々しく感じてしまう気持ち」があるのかもしれない。
ちなみにそんな失礼なヤツ友達にいたらパンチです🤛

少し話が逸れたが、今の贅沢な現代社会を生きる上で生成された潔癖さをこの作品で感じることができる。

○感想


箇条書きにて。

⭕️読む時は心してかかれ
⭕️安易に人にプレゼントする本ではない
⭕️ある程度のメッセージ性を与えることができる為、刺さる人にはスペシャルなプレゼントにもなる
⭕️所謂(いわゆる)、諸刃の剣である
⭕️本作はページ数も少なく、すぐ読み切れるくらいのボリューム。(2時間もいらないかな?)
⭕️心がバグってるやつは食事がバグっている
⭕️登場人物の誰に対しても共感できない
⭕️感情をミキサーでグジャグジャにされる感覚
⭕️感謝を忘れてはいけない
⭕️言いたいことはちゃんと言おう
⭕️食べたくないものは食べたくないとちゃんという
⭕️ご飯を食べる時いただきますをちゃんと言おう
⭕️食べ終わった時はごちそうさまでしたと言おう

○さいごに

この作品が芥川賞に選ばれるということがすでに私たちのメッセージである。

「いただきます」
「ごちそうさまでした」
「ありがとう」

を忘れずにちゃんと言おう。
現場からは以上です。


てづくりに感謝を。お米一粒に敬意を。

2023/11/12

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