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知的財産戦略本部コンテンツ戦略WG委員に就任しました

 昨年の12月に、内閣府の知的財産戦略本部「コンテンツ戦略WG(ワーキンググループ)」委員に就任しました。

知的財産戦略本部とは

 知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、2003年3月に内閣に設置された機関である。知的財産推進計画の作成及び実施の推進が主要な業務

WIKIPEDIAより

 日本の知的財産(IP)をどうやって、活用していくかの戦略を考える重要な機関です。一昨年に拙著『最新音楽業界の動向とカラクリがよくわかる本
』は、音楽業界に転就職を考える人や、異業種から音楽ビジネスを分析したい人を対象に書いたつもりでしたが、内閣府や経産省の方々が付箋を貼り、下線を引きながら読んでくれていた姿を見て、書いてよかったなと心底思いました。音楽業界の過去についても、結構踏み込んで書いたので、業界内守旧派の方からは嫌われたかもしれませんが、日本の政策を決める人たちが参考にしてくれているなら、書いた甲斐がありました。

コンテンツ産業を日本の基幹産業にするために

 事前に事務局の方々とはお打合せの時から、熱量を感じています。第一回の会合でも、「コンテンツ産業を日本の基幹産業に」という方針が当たり前のように語られています。日本の産業界で、製造業が中心だった高度成長期から、文化・クリエイティブ産業の領域に、日本の価値・優位性が移ってきているというのは、実感していますし、僕も機会があれば、そういう発言を心がけてきました。ただ、日本政府の政策立案をしている方々が言葉にしてくれるのは、勇気をもらいます。

コンテンツ戦略ワーキンググループ及びCreate Japan ワーキンググループ
の検討体制について   内閣府 知的財産戦略推進事務局

 第一回は、コンテンツ戦略とCreate JAPANと二つのWGの合同開催でした。各界で活躍している方のお話が伺えたのは僕にとっても視野が広がり、刺激を受けることができる体験でした。
 僕も自己紹介を兼ねて、現状認識をお話ししました。以下のような内容です。

日本音楽界のデジタル敗戦という認識

 日本のエンタメ業界はこっぴどい「デジタル敗戦」をしたという認識が前提です。大負けしてしまったという前提を踏まえて、これからの来るWeb3と言われる時代で、リープフロッグ的にどう挽回するのか、次の大きなチャンスを逃さないという話をこういう場でしっかりすることが大切かなと。
 Web3はAIとブロックチェーンが基本技術・基幹技術として社会実装されていく時代と僕自身は定義しています。それは技術的な必然として必ず来るわけですが、Web3の時代はエンタメのプレゼンスは大きく上がっていくと同時に、個人がビジネスユニットになって、透明化されて、分散化された形でビジネスが回るようになると思います。そうなると、クリエイターの層の厚さという日本の強みが活かせるので、日本に大きなチャンスがやってくるはずです。そこは絶対逃さないようにしたいです。日本のメディア・コンテンツ業界は、デジタル化がおそらく世界一遅れているので、課題はたくさんあります。それらを少しずつ改善していくことも大切ですが、必ず来ることが確定しているWeb3的な未来について考えて、そこからの逆算が、より重要なのではないかなというふうに思ってます。

日本からの学びを活用して米国で成功したK-POP

 韓国は、日本のクリエイティブ、ビジネス構築 のやり方、方法論などをすごく勉強されて、日本のマーケットから収益上げて、日本がやらなかったデジタル化とグローバル化を徹底的にして、再投資していって世界で成功してい る。彼らのベースには日本の方法論があったと。ではなぜ日本が海外でコンテンツが売れなかったかというと、誰も本気でやらなかったからであると、 自分自身も含めて、そういう認識を持っております。また同時に、韓国は「選 択と集中」をとても上手にやっていると。翻って日本の強みは何かと考えると、クリエイターの層の厚さを背景とした多様性と、作品の蓄積であると思うので、「選択と集中」に比べて世界で広めるやり方には難しい部分もあると思うのですけれども、しっかり日本ブ ランドを世界中でキュレーションしていくということが大事だと思っています。

韓国の「選択と集中」、日本の「多様性と蓄積」

 今日もクリエイターの話がありましたが、n次創作的なものが日本のお家芸で、クリエイター個人を単位にしたクリエイターエコノミーの生態系をつくっていくのが 大切で、n次創作的なものちゃんとビジネスの仕組みにするイメージが良いのでははないかなと思っております。 音楽は個人でできないことがなくなりました。アニメやゲームはまだ大きな資金がないとつくれないではないですか。音楽は個人が家のパソコンで完成形をつくれる時代になっていて、SNSやUGMでヒットが出る。なので、Web3のルールやトンマナというものは、インターネットの初期がそうであったように、 音楽が「実験場」になってくると思います。また音楽はゲームにも映像にもアニメにも、いろ いろなところに入っていくものなので、Web3のルールを音楽を起点に考えていくのがよいのではないか、そして仕組みをつくり始めるタイミングでは無いかと思っています。

文化・クリエイティブ産業と人材育成の重要性

 視座を少し上げると、インバウンドとの相乗効果も含め、「文化・クリエイ ティブ領域」を日本の基幹産業にしていくという感覚は非常に大切です。大きな課題は人 材育成、特にデジタル人材です。ビジネス開発、BizDevが足りないというお話が先程か ら出ていますが、全くそのとおり人材育成は急務です。ところが、エンタメ領域に関して言うと、産学連携的なことが既存の教育機関がほとんど機能しなという前提 に捉えてデジタル人材を育てていく仕組みを考えていかなくてはいけないであろうなと。 今の教育機関の強化は、現実的では無いというのが率直な感想なので、それは政府にも、今日は文科省の方がいらっしゃるかどうかは分からないですけれども、ご理解いただいた上で、エンタメのデジタル人材、プロデュース人材、グローバル人材をどう育成していくのかを業界としても考えていく必要があるのではないかなと思ってます。

 ざっくりこんな趣旨のことを申し上げました。興味のある方は、全体の議事録はこちらにあります。

頑張っている人の背中を押す文言を政府方針に織り込む

 第3回会合では15分ほどお時間を割り当てられて、音楽ビジネスの今後について発表するように言われています。頑張って、日本政府の方針が良い方向に向かう、頑張っている人の背中を押せる文言を知財本部の方針に書き込めるように頑張るつもりです。

 日本のエンタメがデジタル時代にそして世界で稼げるように、「デジタル敗戦」からの復活を、華麗にリープフロッグしましょう!

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モチベーションあがります(^_-)