雪解けの頃、湖の氷が溶けて魚が泳ぎ始める。
　一面の雪に覆われていたときには、その下に命の営みがあったことなど想像できなかった。
　動物ドキュメンタリーを手がけていた映像編集者の荒木は、山に入って動物の痕跡を探していた。
　フンや木の傷、足跡などを丹念に調べていくと近くにいる動物の様子がわかる。
　今、世界では動物が減り続けている。
　森を切り倒し、水を汚染してきたツケが罪のない動物たちに回っているのである。
　荒木は動物たちの声なき叫びを作品に留めて配信することが正義だと考えている。
　生物の多様性を保ち豊かな自然を守ることで、美しい地球の秩序があるのだ。
　山の中には危険な生物が多いし、雪崩に巻き込まれるリスクがある。
　使命感が今日も痺れる身体を突き動かしていた。