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映画感想文 冬の旅 をみて

映画「冬の旅」を見た。監督アニエス・ヴァルダの作品。1985年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞を受賞している。フランスではかなりヒットしたようだ。地味な作品であり、これが今の日本でヒットするとは考えづらい。公式ホームページは下にリンクを張っておく。

大体の筋を書いておくと、主人公のモナはホームレスで冬の寒い中を歩いている。冒頭からモナは畑の溝で死亡していて、死亡する前までのことが描かれている。

モナは放浪者でフランスの田舎を歩いていく、どこまでも。どうして放浪を始めたのか、放浪する前の生活はどうだったのかは描かれていない。海で水浴びをしているところから映画は始まる。映画の中でもモナは海から生まれたと語られる。押井守の攻殻機動隊で素子がロボットとして生まれる様子が冒頭で流れるように、モナも海から生まれた。

モナの持ち物は少ない。持ち物と言えるものは寝袋とリュックだけだ。寝袋とリュックだけを背負い旅をしていく。時たま働いてお金を得ている。でも労働は嫌いで怠け者だ。モナは美人である。でも風呂に入らず垢まみれで汚い。ひどい匂いがする。怠け者で畑を貸すから耕して作物を育てろと言われてもやらない。酒を飲んでほっつき歩く。人の家に入って銀食器を盗む。決して善人とは言い難いものがある。

善人であるとは共同体のルールの中で生きることだ。共同体の中にいる限りルールに従わなくてはならない。法と明文化されているものもあるけれどそれだけではない。倫理観も含めてルールに従わなければならない。あれをやってはいけない、これをやってはいけない。なになにをすべきだ。全てがそうだ。

実際に放浪したら辛いことばかりだろう。でも時たま労働し、時たま愛される。社会というものの中で生きるのが当たり前になっている自分とは違う生き方だ。映画の中の登場人物がつぶやくように、私も自由に生きたいと言いたい。

ほとんどの人は自由を欲してはいない。こういえばそんなことはないと言うかもしれない。私を含めて自由よりも安穏な暮らしを求めている。幸福を求めていると言ってもいいかもいしれない。自由と幸福とは別のものなのだ。モナの生き方が幸福なのかどうかはわからない。ただリュックとテントを持って旅に出るべきなのだろうか。


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