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【TENJIKU香取】地域活性化の拠点へ。案内人・丹野さんへインタビュー

こんにちは。旅が好きなヤマクボです!
今回、すごい旅人求人サイトSAGOJOを利用し、千葉県にあるTENJIKU香取に滞在してきました。

現地では、TENJIKU香取の女将である丹野かすみさんにTENJIKU(※)への想いをお伺いしました。「TENJIKU香取ってほかの地域のTENJIKUとどう違うの?」と思っている方に、読んでいただけると嬉しいです。

※『TENJIKU(テンジク)』とは、旅人が「地域のお手伝い」をすることによって無料で宿泊(2泊〜最大1ヶ月)できる、旅好きのための拠点です。地域とより深く関われる新しい旅のスタイルとして、その拠点を全国へ拡大しています。 ーーSAGOJOホームページより

TENJIKU香取、現地案内人のご紹介

まず、現地案内人である丹野ご夫妻のプロフィールをご紹介します。

・丹野啓太さん(写真右)
愛知県生まれ。小学生の時に親の転勤で北海道の札幌へ。
学校卒業後はスポーツインストラクターを経て、家業の造園業に従事。
40代で行政書士になり、北海道の池田町へ移住
その後、町議や古民家カフェ経営を経て、2020年秋に千葉県香取市へ移住。現在55歳。

・丹野かすみさん(写真左)
茨城県水戸市生まれ。
マスコミ、イベント会社、地方自治体などに勤務。営業、広報などに従事。
2017年に啓太さんと結婚。2021年TENJIKU香取オープン
現在、TENJIKU香取の女将兼営業担当。現在53歳。

縁もゆかりもなかった、千葉県香取市への移住

ーーお二人が千葉県の香取に住むようになった経緯を教えてください

私も夫も、千葉県の出身ではありませんでした。夫は愛知で生まれ北海道で育ち、私は茨城出身で東京や愛知で仕事をしてきました。

私たちは2017年に結婚し、3年ほど北海道と茨城で遠距離生活をしていました。その後、一緒に住むことになり、空き家サイトで家を探していたところ、たまたま香取の古民家が目に止まったんです。

夫婦で香取周辺を散策してみた時に「子どもの頃に育った町の風景に似ているな」「地元の人の雰囲気が好きだな」と夫は感じたようで。香取への移住を決めました。

ーー現在、香取ではどんな生活をしていますか?

夫は、行政書士として遺言相続の相談や農機具の修理など、地域の困りごとを解決する仕事を幅広く行っています。

私は、TENJIKU香取の女将として旅人を迎えたり、お客様の開拓、イベントの企画、香取の農産物を広める活動を行ったりしています。

偶然のめぐり合わせで生まれた「TENJIKU香取」

ーーTENJIKU香取はどのように生まれたのでしょう?

香取の古民家を購入してしばらくして「うちの祖母が住んでいた空き家がある。そちらも買わないか?」と近所の方から勧められました。

迷っていた時に、たまたまSAGOJOの方に出会ったんです。その時に「香取の古民家を、旅人の拠点になるTENJIKUにしませんか?」とお声がけいただいたことがきっかけです。

ーー最初は、宿を始めるつもりはなかったのですね。

そうなんです。SAGOJOの方とお話ししているうちに話が決まり、母屋とは別にお向かいの古民家を購入して、2021年11月にTENJIKU香取としてオープンするに至りました。

TENJIKU香取を始める”覚悟”

ーーTENJIKUを始めるにあたり、大変だったことを教えてください

まず、古民家を大幅に改修する必要がありました。築55年経っていたこの家は、10年以上空き家でした。水道やガスの修理が必要でしたし、トイレが外にしかなかったので、室内にトイレを作る必要もありました。

床もシロアリにやられてボロボロだったのでフローリングに張り替えました。経費削減のために自分たちでDIYしたり、若い大工さんに頼んだり、SAGOJOの旅人やボランティアの方に手伝ってもらったりもしました。

DIYに取り組むかすみさん
手伝ってくれたボランティアの方と、新しく作ったトイレ

ーー大変な労力がかかったのですね。

はい。労力以外に資金も必要でした。改修にかかった金額は土地建物別で約600万円。銀行からお金を借り、覚悟を決めてTENJIKU香取を作りあげました。

ーーご自身で借り入れもされたのですか!

そうなんです。私たちの想いに賛同いただいた千葉県の銚子信金さんの「ソーシャルビジネスローン未来」という社会課題を解決するための融資制度でお金を借りました。

夫は町議を務めた経験が、私もマスコミや自治体で働いた経験があり、地方の社会問題に関心がありました。私は2021年から相模女子大学院の社会起業学科でも地域活性化について研究しています。

香取は人口減少や高齢化など地方特有の問題を抱えています。TENJIKU香取が、地域の社会課題を解決するための拠点になればと考えて、真剣に取り組むことにしました。

TENJIKU香取を訪れた旅人たち

SAGOJOホームページより

ーーTENJIKU香取には、これまでどんな旅人が来ましたか?

2021年秋のプレオープンからこれまでに、8名の旅人を迎え入れました。コロナ禍の影響で受け入れをお断りしていた時期もあり、まだ少数ですが……。

旅人は20代、30代の若者が中心で、地域活性化や地域との交流・農作業のお手伝いに興味がある方が多いですね。

ーー来た旅人はどんなことをして過ごしていましたか?

近くに畑を借りているので畑仕事を手伝ってもらったり、DIYや庭を整備してもらったり、男性には力仕事をお願いすることが多かったです。

あとは、香取を気ままに散策してもらい、周辺の神崎や佐原を含め、香取という地域を肌で楽しんでもらっております。

TENJIKU香取で得たもの

ーーTENJIKUを始めて嬉しかったことはありますか?

TENJIKUを訪れた旅人の男性が、この春に香取市の隣にある茨城県神栖市の「地域おこし協力隊」になったことです。

彼は、もともと地域活性化に関わりたいという想いを持っていて海外のゲストハウスや他のTENJIKUも数多く訪れていました。TENJIKU香取に来て、夫とお酒を飲みながらいろいろと話し、茨城や千葉の名所をめぐったことがきっかけで、この地域に深く関わりたいと感じたようです。

啓太さんと地域について語り合う旅人
TENJIKU香取周辺の風景

よその若者が旅人としてやってきて、この地域のことを一緒に考えてくれるようになった。TENJIKUを始めてよかったと思える出来事でした。

これからのTENJIKU香取

ーーまだ始まったばかりのTENJIKU香取。これからどんな場所にしていきたいですか?

旅人の方に農作業のお手伝いをしてもらったり、気軽に遊びに来てもらったりする中で、地域との繋がりを築いていける場にしたいです。

これまで来てくれた旅人の方は「自分で植えたじゃがいもを収穫しにまた必ず来ます!」と言ってくれたり「次は田植えの時期に手伝いに来ます」と言ってくれたり。そういった新しい繋がりができることが非常に嬉しいんですよね。

ーーそうやって、少しずつこの地域に関わる人が増えていくんですね

ゆくゆくは旅人を通して、外の地域と香取をつなぐような場所にしていきたいです。

地方はどこも同じかもしれませんが、新しいことに興味がある人はどんどん東京などの大都市へ出て行ってしまい、地方は高齢化して保守的な場所になる傾向があります。

TENJIKU香取に経験豊かな旅人が集まり、旅人の経験や知識をシェアし合える場にしたい。そして、新しい価値観を地域の人に伝えてくれる「現代の塾」のような場にするのが理想です。

ーー塾ですか!面白そうですね。

香取の谷中という地区には、明治から昭和にかけて私塾が3つもあり、全国から文学家や芸術家が訪ねてきて、子どもたちや地域の方々に勉学や詩歌を教えていた記録が残っています。

その歴史そのままに、古民家が学びの場になり賑わいが生まれるといいなと思っています。

啓太さんとお酒を飲みかわす旅人

特に若くて新しい考えを持つ人たちに、この地域に関わってほしいです。今後、少子化や過疎化、農業人口の減少などの問題がますます深刻になりますが、関係人口を増やすことで地域を盛り上げていきたい。

香取に暮らす人が笑顔で幸せでいられるように、TENJIKUから少しずつ変えていきたいと思っています。

「香取がみんなの田舎になってほしい」

TENJIKU香取、オープン当時の様子

ーー最後に、これからTENJIKU香取に行ってみたいと思っている旅人に、ひとことお願いします

私たちは、いつかTENJIKUでみんなのおじいちゃん、おばあちゃんのような存在になりたいと思っています。

みなさんには、自分の田舎に来るような感覚で香取に遊びにきてほしいです。「仕事に疲れたから香取にホッとしに行こう」「美味しい炊き立てのごはんを食べにいこう」とか「成田空港が近いから、旅帰りに香取に寄ってみよう」と、そんな風に思い出してもらえると嬉しいです。

いつでも気軽に香取を訪れてもらいたい。そして地域のことも一緒に考えてもらえたら、私たちはとても嬉しいです。

編集後記

TENJIKU香取の前で。ヤマクボと1歳の娘。

現時点で、全国に13拠点あるTENJIKU。
それぞれ形態も、込められた想いも様々です。

TENJIKU香取は丹野さんの地域への想いから生まれた大切な場所なのだと、今回のインタビューを通して実感しました。

地域活性や地方創生に興味のある旅人さん、ぜひTENJIKU香取を訪ねてみてください。エネルギッシュな丹野さんご夫婦が、いつでも喜んで迎え入れてくれますよ。

(この記事は2022年4月7日に取材、執筆しました。)

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