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【トルコ】イスタンブールで警察に捕まった話

昼過ぎに同じ宿の米国人ex氏とトルコで有名なBurakのレストランへ。サービス精神旺盛なウェイターと完成度の高い料理に大満足。ex氏は相変わらずのハイテンション。彼はこの後、トルコ人の女性とデート。羨ましい。俺は宿に戻って、ヨーロッパの行程でも考えようかなと思っていた。しかし、帰路の途中でまさかのアクシデントに見舞われた。

彼と別れ、往路と同じ道を辿りながら駅まで向かう途中、一人の男に腕を掴まれた。

ソイツは「Polis」とだけ言う。私服でいきなり腕を掴む警察なんている訳がない。海外ではよく、警察のふりをした詐欺師が旅行客を脅して金を巻き上げる事件が起きている。キルギスでも同じような経験をし、無視して切り抜けたことがあった。そして、先程までただ歩いていただけの自分に何の容疑があるのだろうか。これは詐欺師だなと確信し、腕を振り払い駅に向かった。ところがソイツはしつこく俺の腕を掴んでくる。気づけば3人の男に囲まれていた。羽交い締めにされ、「Polis!!Polis!!」と大声で怒鳴り散らしてくる。俺は男達にIDを見せろと怒鳴ったものの、見せてきたIDが本物であるかどうか判断ができなかった。もちろん俺は本物のIDなど知らない。しかし、本物の警察であればいきなり腕を掴むようなことはせずに、まずは自分のIDを見せて、いくつか質問をしてから、相手の身分証明書を確認するのが普通だろう。誘拐犯グループなのではないかとすら思った。負けるかよこの野郎。俺もすかさず、歩行者に向かって大声で助けを求めた。しかし誰も俺に手を差し伸べる人はいなかった。はあ、どこの国も結局そんな感じなのかとガッカリ。

結局4人に腕を掴まれて、なすすべもなく駅と真逆の道を歩かされた。黒い車に突っ込まれて郊外の倉庫でボコボコにされて金をふんだくられるのかと絶望していた。英語で何度も容疑を聞いても、男達は興奮して俺を連行しようとする。

行き先は黒い車ではなかった。高速バスならぬ、拘束バスだった。最初は普通のバスに乗せられたのかと思い、状況が全く理解できなかったが、周りをよく見ると、黒人やアフガニスタン系の人々が不安げな顔を並べて縮こまっていた。それで始めて状況が理解できた。男達は本物の警察で、不法滞在者のネズミ捕りをしているのだと。バスの中には、アーマーをしている警官がいた。顔がデカかった。

なるほど、俺は不法滞在者と誤解されたわけだ。それであればパスポートを見せて誤解を解けばいい。しかし、警察というのは頭がイカれてるもので俺を警察署まで連れて行くと言う。カザフスタン人だろうと意味不明なことまで言われた。そして、俺が道端で大声を出したのが気に食わなかったようだった。警察のフリをした詐欺があることと、IDが本物であるか判断ができなかったことを説明しても「Stay」とだけしか言わない。俺は犬じゃねぇぞ。

拘束バスには20名ほどいて、中には身分証明書がなく絶望している者や、パスポートとビザを何度も見せて脱出を試みる者もいた。パスポートを取りに宿まで行かせてくれと言う中東系の男がいたが、警官に怒鳴られて呆気なく退散。誘拐されてないだけマシかぁと思いつつ、顔がデカイ警官にいつ終わんの?と聞くと今日中という回答が返ってきた。ふざけんな俺は今日の飛行機で帰るんだよと嘘をかまし、万が一飛行機に乗れなかったら大使館にこのことを報告すると言った。すると様子が一変。俺のパスポートを確認し、ボスらしき人間と相談し始めた。ボスらしき人間が俺の所にやってきた。ソイツが話し始める前に先手を打たなければと思った。数日前の日付が押されている入国スタンプを見せながら、どうやったら不法滞在になるんだと追い討ちを掛けた。するとソイツは俺にバスから降りるよう指示し、「I trust you」とだけ言ってパスポートを返した。俺は何も言わずにその場から離れ、文字通り胸を撫で下ろした。

駅の喫煙所でタバコを吸いながら、出来事を反芻するも、不可抗力としか言えない。俺が大声を出したのは正しい判断だったと今でも思う。しかし、不法滞在者のネズミ捕りだったとは。やはりヨーロッパとアジアの中間に位置する国だけあり、複雑な移民問題もあるのだろう。

ドイツへ出稼ぎに行くトルコ人の移民問題だけでなく、トルコへ出稼ぎにくる外国人の移民問題もある。今回は不運にも、その渦に呑まれてしまった。

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