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[建築プレゼン 2] 小さい文字こそ大切に

山です。

建築学科は学内・外にかかわらず多くの卒制展が開かれ、そこでたくさんの作品を見ることができますが、そこで特に気になるのが小さな文字の読みにくさです。
たくさん考えたから全部入れたい! となることもあるかもしれませんが、それでは読みたいという気持ちを起こさせることはできません。
ボード内での小さなサイズのテキストはプレゼンボードの上手/下手がはっきりと出る部分のひとつです。


読ませたい? 読ませたくない?

その前に一応前提として、その小さい文字が読ませるためのものかどうか、ということがあります。
建築プレゼンでは、読ませないけれど、そこにあることが重要な文章が少なからずあるからです。蓄積された思考や、設計の造形だけでは見えてこない側面を膨大な文章によって表現する。あるいは文字そのものをビジュアルの要素として扱う手法です。
僕の好きな建築家にBrodsky and Utkinという、ロシアのアンビルド建築家がいるのですが、丹念に書き込まれたドローイングとテキストは読めないけれどなにかすごいことが起こっている! と感じさせる迫力があります。

ですが、これらはあくまで小さな文字を用いたドローイング的な表現ということでここでは言及しません。(個人的には非常に好きな分野なのでそのうちまとめたいです。)

今回は小さいけれどちゃんと読ませたい、という文章の見せ方 にスポットを当てていきます。


小さな文字は字面率に注意

次の3つの文章を見てみましょう。

Macにも標準で入っている代表的なゴシック体です。これらはすべて同じ文字サイズと行間で組んでいます。さて、どれが読みやすいと感じるでしょうか?
左の「小塚ゴシック」と右の「こぶりなゴシック」を比べてみると明らかですが、同じ文字サイズと行間で組んでいても文字の間、行の間のスペースが違いますね。個人差はあると思いますが、特に画面で見るようなサイズだと多くの人はこぶりなゴシックが読みやすく感じるのではないでしょうか。

なぜ同じ文字サイズでこのような印象の差が出るかというと、それは各々の書体が持っている「字面率」の違いによるものです。

「字面率」とは読んで字のごとく、その文字が空間に占める割合のことです。和文書体は基本的にどんな文字でも正方形(全角)に収まるようにできています。ですが、この正方形の中でのサイズは一律ではなく、書体の種類によって大きく差があります。

小塚ゴシックとこぶりなゴシックで同じ文字を比べてみると、ひと回りこぶりなゴシックが小さいことがわかります。

それぞれの文字の字面率が小さいことで、文字が連続したときに隣り合う文字の間に空間がうまれるのです。

この例からわかるように、文字は大きければ読みやすいというわけではありません。むしろ小さな文字を扱うときには、より小さく、まわりにたっぷりと余白のある書体のほうが安定して読ませることができます。

ただし注意していただきたいのですが、これは小塚ゴシックがこぶりなゴシックに劣っている、という話ではありません。そうではなく、書体にはそれぞれ個性があり、それに見合った使い方をする必要があるということです。

適切な行間をとった小塚ゴシックとギチギチに組んだこぶりなゴシックでは比べるまでもないですね。(そしてこれは文章書きたがりの人にとって、特にありがちな失敗です。)
「この書体だから間違いない!」とか「かっこいい書体だからかっこよくなる」という保証はありません。むしろそういった書体で変な組み方をしているとわかってない奴だな……と思われるので要注意です。

図版のキャプションや何気ない解説が丁寧に組まれていると間違いなく好感度は高いです。繊細さをアピールしてモテモテプレゼンボードを目指しましょう。

ありがとうございます。
山でした。

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