山/Mt.yama

主にエディトリアル・タイポグラフィのお仕事をしています。専門領域にとらわれない風通しの…

山/Mt.yama

主にエディトリアル・タイポグラフィのお仕事をしています。専門領域にとらわれない風通しのよい記事が書ければと思っています。建築と本が好き。

最近の記事

スクリプト体から考えたこと

最近、自分の中ではじめてのスクリプト体ブームが来ている。 スクリプト体は手書き文字をベースにした書体で、文字同士が流れるようにつながっていく字形を持つものが多い。書体化しているものの多くは名のあるカリグラファーによる書法のお手本を使用していて、それらは日本でいう書道のように各々のスタイルを持っている。 一口にスクリプト体と言ってもそこにはつくられた時代、技術、作者の嗜好が反映されている。 こういった書体は使える場面が限られる印象があるのと、どうしても和文とは合わせにくいた

    • 名刺をつくらせてくれませんか?

      山です。 突然すいません。ひとつ相談があるのですが、僕にあなたの名刺をつくらせてくれませんか? この名前でnoteとTwitterをはじめて3ヶ月くらい経ちました。その間に、いろいろな人と知り合えたり、一方的に興味を持って近づいたりと個人的には楽しくやれていると思います。 匿名で始めたのでほとんどの人は現実でのつながりはありません。ですが、なんとなく他の人の生活が並走していることを感じられるのがここまで自分に前向きな影響を与えるとは思いませんでした。 お互いを微妙に知らな

      • よい本の条件

        本づくりに関わる仕事をしている人は、著者にしろ、編集者にしろ、デザイナーにしろ、ほぼ全員が「よい本」をつくりたいと思っているだろうし、もちろん自分もそのひとりだ。 ただ、当然この「よい本」の捉え方についてはさまざまで、好みや立場に限らず、ブックデザインを仕事とするひと同士でも意見が異なることは珍しくない、というよりもそのほうが明らかに多い。 誰でも自分にとってのよさを長い時間をかけて醸成してきているはずで、簡単にそれを定義したり枠でくくるのはナンセンスだ。 じゃあなぜこん

        • ウィム・クロウエルから考える

          山です。 先日(と書いてからだいぶ時間が経ってしまったけれど)、新元号の発表に続いて紙幣を刷新するという話題が世間を賑わせました。僕の追っていた範囲ではネガティブな見方が多いようで、書体(特にアラビア数字)やレイアウトに違和感を持っていたり、人物の肖像じゃなくてもいいんじゃない? といった意見がありました。 共感できるもの、さすがにそれはイチャモンだろうと思うもの、いろいろですが総じてこれらは発表されたデザインへの反射的・即物的な応答だったように感じられ、まあそんなふうにな

        スクリプト体から考えたこと

          平成のデザイナー10人て誰だろう?

          明日、新元号が発表されるらしい。あんまり関心を持っていなかったけど、発表されたら急に平成が過去のように感じられるのかなとふと思った。(実際に変わるまでにはもう少し時間があるけど。) そうなるとなんとなく平成の振り返りをしてみたくなるから不思議だ。なんだかんだで僕はこの30年に思い入れがあったらしい。 この間、「平成の建築10選」というのがツイッター上で流れてきた。自分でも何が入るかなーと考えていたのが結構面白かったので平成のデザイナー括りでやってみようと思う。 選んだ

          平成のデザイナー10人て誰だろう?

          [建築プレゼン 4] 「正しさ」の難しさ

          山です。 先日、友人に誘われて、とある大学の卒業設計の公開講評会に行きました。実際の講評の場を見るのは久しぶりだったのですが、会場はたくさんの人で埋まり、かなりの盛況ぶりだったと思います。来ている人も他大学の学生や卒計を来年以降に控えた下級生が多かったようで、その雰囲気は自分が学生だった当時と変わらない高揚感がありました。 僕自身も講評会がはじまる前は、力の入った模型を楽しんだり、ボードからでは読み取れない部分を想像したりと期待していたのですが、学生のプレゼンがはじま

          [建築プレゼン 4] 「正しさ」の難しさ

          建築学科を出て違う分野に進むこと

          山です。 書きたいことはいろいろあるのですが途中で止まっていたり画像用意したりで、下書きばかりが増えていく一方です。難しいですね。 さて、最近知り合いを通じて大学院生から進路の相談を受けました。 内容は、いま大学で建築を専攻しているけれど、違う分野での就職を考えているというものです。正直、就活らしい就活の経験がないので相談してくれた彼が満足いくようなことは言えなかったなあとその後落ち込んだのですが、話を振り返るとこれは自分が学生時代に気にしていたことでもあると感じました。

          建築学科を出て違う分野に進むこと

          [建築プレゼン 3] 文字の声色を聞き分ける

          山です。 卒制シーズンもひと段落しそうですね。今は就活に向けてポートフォリオに精を出している人も多いのではないでしょうか。 今回は前回の「読みやすさ」とは違った角度から、プレゼンやポートフォリオでの書体の選び方について考えてみたいと思います。 まずはみなさん、印象に残っている声ってありますか。 発言した内容ではなく「声」そのものです。 小さいけどなんだか惹きつけられる声、しっとりとした落ち着きのある声。同じことを言っても笑える声とそうでない声。 また、アニメなんかで声優

          [建築プレゼン 3] 文字の声色を聞き分ける

          僕が建築をスキになった話

          山です。 僕が建築をスキになったのは「建物」と「建築」が違うものなんだと気づかされたときです。それは今でも強烈に印象に残っている同級生の作品でした。 大学2年生の最初の課題は「雑木林に別荘を設計する」というものでした。ほぼ最初の設計課題のため、敷地の与条件や制約などはほとんど無く、各々が自由に理想的な別荘を考えていました。 なるべく木を切らない形を考える人や、リアルな家族構成を設定する人。今思えば、実に健康的な「ザ・はじめての設計」という雰囲気でした。 当時の僕は、まわ

          僕が建築をスキになった話

          [建築プレゼン 2] 小さい文字こそ大切に

          山です。 建築学科は学内・外にかかわらず多くの卒制展が開かれ、そこでたくさんの作品を見ることができますが、そこで特に気になるのが小さな文字の読みにくさです。 たくさん考えたから全部入れたい! となることもあるかもしれませんが、それでは読みたいという気持ちを起こさせることはできません。 ボード内での小さなサイズのテキストはプレゼンボードの上手/下手がはっきりと出る部分のひとつです。 読ませたい? 読ませたくない?その前に一応前提として、その小さい文字が読ませるためのものかど

          [建築プレゼン 2] 小さい文字こそ大切に

          [建築プレゼン 1] 文字の大きさは大丈夫?

          山です。 前回は簡単な自己紹介と、noteで書きたいことについてでしたが、今回から具体的な建築プレゼンのお作法について書いていきたいと思います。 第1回は「文字の大きさ」についてです。 といっても、これは「プレゼンボードで読みやすい文字のサイズ」とか、「この文字サイズが熱い!」とか、そういったことではありません。 今回お伝えしたいのは、情報を正しく伝えるためには適切な文字の大小関係があるということです。 優先順位を表現しよう具体的にA1サイズのプレゼンボードで考えてみ

          [建築プレゼン 1] 文字の大きさは大丈夫?

          [建築プレゼン 0] プレゼンが3割上手くなる方法

          はじめまして。山です。 僕は学生時代は建築を学んでいました。興味の中心だったのは建築のドローイングや図面表現で、その延長でポートフォリオや本づくりにハマり、今では書籍のデザイン、特にエディトリアルやタイポグラフィに関する仕事をしています。 このnoteは、プレゼンボードやポートフォリオなど、いわゆる建築プレゼンに役立つデザインの作法と考え方を紹介していく予定です。 なぜ建築プレゼンなのか、それは、僕がいま書籍のデザインでやっていることが、そういった建築の表現にもとても有用

          [建築プレゼン 0] プレゼンが3割上手くなる方法