見出し画像

センセイの電話

塾講師だったころの思い出を細々とつづっています。

授業以外の仕事も色々あって、その中でも重要視されていたのが保護者への電話だった。毎月1回は必ず全ての家庭に電話することと決められ、電話をかけた率で校舎ごとにランク付けされ、あまりにもかけた件数が少ないと怒られた。

だいたいどこの校舎でも、だれがどの家庭に電話するのかを分担していた。だいたい自分の担当教科の成績が悪いか、逆に成績が良くなった子の親と話すことが多かった。

私は電話という物が子どものころから苦手だったのだが、仕事なので仕方が無い。初めて校舎に配属されて、分担を言い渡されたときはどうしたものか悩み、手が震えたものだった。
その子の成績表とにらめっこして、一言一句台本を作ってかけ、周りで聞き耳を立てている先輩教師たちにダメ出しを受けながら毎日毎日授業以外の時間は電話のことばかり考えていた。

人間何でも慣れるもので、1年も経てば何も考えずに受話器をとり、「○○校のみかんです~」と流ちょうに話し出せるようになっていった。周りの先生たちも私の電話の会話に毎回聞き耳を立てている訳ではないと気づいたことも大きかったかもしれない。なんとなく、どんな話をすれば保護者が満足するかも分かってきたのかもしれない。とにかく苦ではなくなっていった。
何事も数をこなすのみである。

ちなみに、新しい職場で普通のサラリーマンとして過ごし始めた私は、相変わらず電話は嫌いである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?