見出し画像

かわいいあの子

 大学受験に失敗して在宅浪人をしていたとき、家庭で色々あって犬を引き取ることになった。福島の山の中に置き去りにされていた雑種犬。顔は麻呂眉の黒柴、体は胴長の海外の犬種。三才ほどの女の子だった。

 当時家に常にいたのは私だけなので、散歩をするのも私、夜ご飯をあげるのも私だった。不思議なもので時間が分かるのか散歩やご飯の時間が近づくと、階段の下でソワソワしながら待っている。勉強のキリが悪く、少し待たせたときなど、切なそうに鼻をならし、私が散歩のひもを持って近づくと大興奮で暴れ回り手をペロペロとなめてくる。ご飯をあげるとパクパクとあっという間に食べる。

 私は独立し、彼女の世話は他の家族がするようになった。ご飯の味に飽きたのかパクパク食べることもなくなったし、年をとったせいか散歩の前の大暴れも些細なものになった。のそりのそりと歩くし、私が帰ったときのお出迎えも淡泊だ。でも、日当たりの良い窓際でじっと昼寝をしながら帰りを待つ姿は今でもとってもかわいい。


この記事が参加している募集

我が家のペット自慢

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?