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こんな職務経歴書はイヤだ!シリーズ その1

IT業界の中途採用はサバイバル

IT業界はかなり人材の流動性の高い業界である。私の現在の勤務先でもご多分に漏れず、一定数出ていく人もいるし、その分入ってくる人もいる。
もちろん入ってくる人が優秀であるに越したことはないし、採用担当リソースが限られている中、効率的に優秀な人を採用するためには人材エージェントの助けを借りることになる。

※ちなみに人材エージェントについては以前にまとめ記事を書いたのでそちらもよければ読んでいただきたい。

人材エージェント経由の実態

基本的に人材エージェントを使うと、それなりにきっちりとした経歴の人を推薦いただけることが多い。
といっても、めちゃめちゃハイスペックな人は元の年収が高すぎたり、そもそも大手企業志望だったりで、弊社に推薦していただけることは少ないので、あくまで「比較的」というレベル。というのも、求人広告だと未経験者の応募が圧倒的に多くなってしまうので、経験者を推薦いただけるだけでもありがたいという事情である。

と書いたが、人材エージェントと言えど、たまにヤバイ職務経歴書を送ってくることがある。
本来は職務経歴書のレビューも含め、きっちり仕上げて推薦するのが人材エージェントのバリューなのでは?と思わなくはないが、そこはピンキリなので仕方がない。
そんな中で、「これはさすがに勘弁してほしい」という職務経歴書をシリーズで紹介していきたいと思う。
これから転職しようという人は、是非反面教師にしていただきたい。
なお、実経験がベースになってはいるが、機密には配慮しつつ多少のフェイク・デフォルメは入れてあるのであしからず。

こんな職務経歴書はイヤだ!「謎の技術書所蔵アピール」

SE・ITコンサルの職務経歴書といえば、履歴書とは別に、参画したプロジェクトの内容・規模・その中での役割・使用した言語/ツール/OSなどを、最新のものから順番に並べたものを作ることが多い。
その経歴がイコール技術者の経験値・ケイパビリティになるからだ。
そして、その結果何が自分のアピールポイントなのかというのをサマリ的に書いてあると非常にわかりやすい。

最近だとプログラムの作品集とも言える「ポートフォリオ」をつけることも多い。実際に作ったサイトやgithubのURLが貼ったりしてある。
私の経験では、実際に「すげー!」ってなったことはあまりないのだが、未経験人材だとITに対して本気であることが窺い知れるので印象は悪くはない。(もっとも最近は未経験者のポートフォリオがプログラミングスクールで習ったものらしく、ほぼ同じという問題もあるみたいだが・・・)

話を戻す。自身のプロジェクト経歴と、追加のアピールポイント、この構成を守ること自体は大切だが、アピールの仕方があまりにも謎というケースがあった。
年齢的にはベテランと言える領域のその方曰く、多種多様なプログラミング・ツールを勉強しているとのことで、どうやらその勉強熱心なところをアピールしたいようだ。

ただ、業界経験の長い方ならわかると思うが、単にいろいろな技術を知っていることだけで評価されることはほとんどない。その技術を使ってどういう実績を残したかが重要なのだ。(地頭の良い人は初めてみる技術であっても、既知の技術との共通点をさらりと見つけて、あっという間にキャッチアップするものである。)
なので未経験者ならともかく、いい年した経験者が勉強熱心さをアピールするということ自体、実務でのアピールポイントがないと言っているようなものである。

そして一番驚いたのが、その勉強熱心さのエビデンスとして、自分の本棚に所狭しとならんだ技術書の写真が添付されていたことだ。
なんというか、、、突っ込みどころが多すぎて言葉が出なかった。

なぜ技術書アピールがダメなのか?

この時感じた私の違和感をもう少し分解してみようと思う。
まずこれらが本人の所蔵かどうかも分からないし、所蔵している=理解しているでもない。そして理解していたとしてもそれを実務で活かせるかどうかも別である。

これが、例えば最新の「ブロックチェーン」について出版されている本は全部読んでいるとか、実際にブロックチェーンのコミュニティで活動しているとか、そういうストーリーのある一貫したものであれば話は別だが、単に手あたり次第色んなジャンルの本を乱読しただけのようだ。

「実務で活かせるか」という意味では資格試験も同じことが言えるのだが、IPAやベンダーがきちんと難易度設定をしている試験であれば、少なくとも当人の努力や理解力の量・質は担保されている。そこに資格試験の意味がある。
資格試験についても以前記事を書いたのでよろしければ・・・


話を戻す。
つまりはこの方の技術書自慢は、意図やストーリーが不明で採用側にまったく刺さらないのである。
こういう独りよがりの職務経歴書を作るということは、恐らく聞き手や読み手のことを考えたコミュニケーション・ドキュメンテーションもできないと言ってよいだろう。
実際に短期間での退職・転職を繰り返しており、空白期間もある方だったが、恐らくコミュニケーションに難があるのではないかと思う。そしてその短所を埋めるために知識武装を試みたのだろうか。と考えると多少の同情心も沸いてしまう。

採用側になって初めてわかること

といった風に偉そうに書いた私ではあるが、実際に応募する側だった時はここまで採用側の気持ちを考えたことはなかった。
やはり当事者になってみないと見えない景色、分からない視点というものがあるように感じる。
今後も採用側の目線で気づいたことを本シリーズで書いていきたいと思う。


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