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観能録

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さらっと、濃い。大槻文藏『夕顔 山ノ端之出・法味之伝』(2019年5月18日)

さらっと、濃い。大槻文藏『夕顔 山ノ端之出・法味之伝』(2019年5月18日)

今年は、例年よりも能を観ることができてません。が、今日は何としても行きたい舞台。

昨年11月、銕仙会の定期公演で同じ『夕顔』を舞われた大槻文藏さんが、今回はホームの大槻能楽堂で〈山ノ端之出〉に加えて〈法味之伝〉の小書もつけて再演されました。

観世流で『夕顔』が出るときは、けっこう〈法味之伝〉の小書も多いです。普通は序之舞なのですが、〈法味之伝〉になると一セイの「優婆塞が行ふ道をしるべにて」の前

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2018年の観能ふりかえり

今年も慌ただしくて、なかなか能を数多く観るという機会には恵まれませんでした。それでも、何とかかんとかやりくりして、観に行くことができました。ほんとは11月から12月にかけて観た大槻文藏『夕顔 山ノ端之出』(11月9日:銕仙会)、塩津哲生『夕顔 山之端之出』(11月25日:喜多流自主公演)、大槻文藏『芭蕉』(12月5日:国立能楽堂定例公演)は、どれもすばらしく、個別に書き置くべき舞台です。もし時間を

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孤独と人恋しさと:大槻文藏『姨捨』

孤独と人恋しさと:大槻文藏『姨捨』

※これまでTumblrに投稿してたのですが、なぜか投稿できなくなってしまったので、こちらに書くことにします。

※本文は敬称略です。ご了承のほど願い上げます。

亮之会(2017年9月24日:大槻能楽堂)

大槻文藏『姨捨』
シテ:大槻文藏、ワキ:福王茂十郎、ワキツレ:福王知登・喜多雅人、アイ:茂山千三郎、笛:野口亮、小鼓:大倉源次郎、大鼓:守家由訓、太鼓:三島元太郎、後見:大西智久ほか、

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強靱な身体運用こそが、美を現出させる:梅若万三郎『半蔀』(2018年4月14日、篠山春日能)

強靱な身体運用こそが、美を現出させる:梅若万三郎『半蔀』(2018年4月14日、篠山春日能)

篠山春日能に参じるのは2度目。今年は梅若万三郎『半蔀』、茂山あきら『寝音曲』、そして大槻文藏『鉄輪』。今回は天気がすぐれず、途中から雨風が強くなった。それゆえ、茂山あきら『寝音曲』と大槻文藏『鉄輪』については雨風を気にしながら観ることになったため、ここで書くのは控えておきたい。

さて、万三郎の『半蔀』、予想を上回る成果だった。

名ノリ笛でワキ(福王茂十郎)登場。取り立てて何事もないけれ

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埋火のようなあたたかさと荘厳さ:梅若万三郎『姨捨』(2018.10.20)

埋火のようなあたたかさと荘厳さ:梅若万三郎『姨捨』(2018.10.20)

2018年10月20日、橘香会(国立能楽堂)。

本来の仕事の一環である資料調査が長引いて、馬場あき子さんの解説、山本東次郎『箕被』は聴けず観れず、仕舞から入場。

万三郎の『姨捨』、たしかに瑕はいくつかあった。詞章の錯誤や失念(後見の大槻文藏が適切に支えて事なきを得た)であったり、何より足の弱りからくる〈弄月之型〉での二度の下居のし損ね(三度目で文藏の介添を得て弄月之型。ただ、やや寸詰まりになっ

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