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鈴木貴史『人材獲得競争時代の戦わない採用「リファラル採用」のすべて』日本能率協会マネジメントセンター

欲しい人材を採用できない企業がほとんどの時代となりました。従来の採用活動では限界を感じるようになっています。そこで登場したのが、「リファイル採用」だと言います。

海外では、「Recruiting is Marketing」(採用はマーケティングである)という捉え方が一般化していると言います。転職の潜在層にアプローチするチャネルがどんどん広がり、企業の投資優先順位の上位に位置されるようになっているとも言います。

日本でも求職者が受け取る情報量が増え、「アットホームな職場です」といった均質的なメッセージを信じることはなくなっていると言います。Z世代では、自分自身がなぜ必要とされているかという「パーソナル・パーパス」(自分がこの会社で働く意義)を重視していると言います。

米国のAirbnbという会社は、優秀なエンジニアの獲得競争でGAFAに勝つために、パーソナライズされた採用活動となるリファイル採用で、条件面で勝てなくとも、優秀な人材を採用できたそうです。

リファイル採用は、「リファイル(紹介、推薦)× リクルーティング(採用)」の造語で、信頼できる友人、知人からの紹介を通じた採用手法です。本書では、縁故採用や、強制的な社員紹介採用ではなく、社員が紹介したい仕組みづくりから始まるファンベース採用を提案しています。

リファイル採用は、良い会社をつくるための従業員体験の一つと位置付け、中長期の定量ゴールを設定し、定性的な状態目標も設定します。社内を巻き込むうえでのストーリー設計をし、リファイル採用が根付いた時にどのような組織になっているかという中長期のストーリーを語ることで社内を巻き込みます。

適用する社員の範囲を決め、協力会社からの引き抜き禁止など禁止事項や運用ルールを策定し、インセンティブ制度を設計します。インセンティブの金額が高すぎると紹介者の質が下がるという研究結果があるので、注意が必要とのことです。

スモールスタートで実績を出してから、全社展開する取り組みは、制度をブラッシュアップするうえでも、経営陣を巻き込むうえでのエビデンスづくりの事前運用という観点からも有効だそうです。

社員の心理的負荷を下げるため、一度はカジュアルにお会いします。見送っても内容をしっかりフィードバックします。社員が求人情報を認知しやすくし、リファイル採用のターゲットとなるペルソナの解像度を高めておくことも重要だそうです。

リファイル採用では、従業員にとってどのような「体験」となるのかを意識して丁寧に設計していく、採用マーケティングの考え方が求められます。

1 認知 リファイル採用を認知する。
2 共感 動機付けされて参加する。
3 行動 紹介する。シェアする。
4 ファン化 再度紹介したいと思う。

共感してもらうためには、What(インセンティブ)より、Why(ストーリー)が重要だそうです。また、透明性の高い情報で、自社を知るほど好きになるという「ザイアンスの法則」で、エンゲージメントを高めておくことができると言います。

また、自社を語るほど好きになるとも言え、声掛けのハードルを下げ、語る機会を増やすことも重要になってくるそうです。

成功させる5つのポイントとして、
1 認知を風化させないための、情報の角度を変えた継続的広報
2 共感を生むための、透明性の高い情報とストーリー
3 情報を集約してその場で確認、参加できる導線
4 行動ハードルを下げるようなコンテンツ設計
5 紹介後、いい体験で終わるコミュニケーション

最近は、内定者を巻き込んでいくリファイル採用が注目されているそうです。新卒の内定者にリファイルしてもらいます。

人材獲得に苦労している企業は、リファイル採用について学ぶ必要があり、本書は、そのために適した書籍であると思います。しかし、注意しないといけないことは、リファイル採用をするためには、いい会社にすることが必要であることです。

本書を読んで、新しい採用のあり方を考えてみることもよいのではないかと思います。





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