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【王からの手紙8】アフガニスタンでお邪魔している家に警察署長が来た。

 アフガニスタンの初日の夜をジャララバードで迎えた。その夜は、”少し前まで戦地だった場所に自分が居る”と言う事実と、その場所で”守られている”と感じていることの、恐怖感と安心感と同居する不思議な感覚の中で、私は眠りについていた。


【後日追記】
 本記事にてたくさんスキを頂けたようです。
 いつも皆様ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。


この話は、以下を読んで頂くと、より楽しめます。お時間のある方は是非ご覧いただければと思います。

また、文中に出てくる王様の話は、以下のものとなります。

※ 今回のコラムは、避難勧告が出ている国、エリアへの渡航を推奨するものではありません。昔の旅の情緒を伝える目的で投稿をしておりますので、あらかじめご承知おきください。


 翌朝、窓から差し込む光で目を覚ました。

 寒さからくるまっていた毛布から出られず、しばらく床でゴロゴロしながら微睡んでいると、カーリーが来た。

 …朝ごはんを用意してくれていた。

「ゼリフ、ハニフ ※△◇▼☆★☆!」 


 ご飯を食べながらカーリーが何か言っている。1日で何が変わるわけではないが、なんとなくカーリーの言っている事は分かる気がする。

 多分、

「ゼリフとハニフはもうすぐ来るよ!」

 と言っているのかなと思っていた。

 これが、もし「もうすぐ」ではなくて、例えば「昼過ぎに」でも、私にはまったく予定はなく時間だけはある。
 もし、「今日来れない」ならもっと悲しそうな顔をしているはずだが、表情は、「昨日言ってた通りに」のような普通の表情をしていた。

 だから、ま、のんびり待ってたらいいかな…

 ご飯を食べ終わり、少しのんびりしていると、2人のアフガン人が部屋に入ってきた。

 「Hello!」

 英語だ!!!

 うん、これは間違いない、噂のゼリフとハニフだろう!ちゃんと挨拶しないと!

 向こうからしたら、勝手に来て、勝手に居ついているあやしい外国人に違いない!


王子様の可能性もあるわけだし…失礼がないようにしないと「不敬罪」みたいな罪がある国もあるわけだし、出来る限り丁寧にやってみないと!見た感じは2人とも王子感はないねんけど…


 「どうもはじめまして!日本から来たやなぎやと申します。昨日よりお邪魔させていただいております。カーリーには昨日から大変お世話になっていて、本当に心づくしいただき感謝します。パキスタンのラワールピンディでお父様に助けていただき、今ここにおります。(以下、ペラペラ大げさに話したけど省略)」

 ちゃんと言えたかな…どきどき…



「おーやなぎや!俺がゼリフだよ!この服を見ての通りアフガニスタンで警察やってる。私が兄だ!」



 …えらいポップな王子様だな笑


「はじめまして、私がハニフです。仕事は医者です。ゼリフの弟です。」


 弟の方がちゃんとしてるやん!なんだこの落差は???

 兄弟でこんなに違うものなのか???


 王子様じゃないかと思って、色々構えていたが、2人のフランクな私への応対に、少し安心した。そして1つ私は確信したことがある。

 こいつら、絶対王子様とかじゃない!

 (特に兄のゼリフ!笑)

 カーリーとの、言葉で意思疎通できないコミュニケーションも、めっちゃ面白かったが、2人との英語で話を出来る安心感に、私は2人との会話を楽しい、時間を気にせず様々話し込んでしまった。

 私の話もひと段落したところで、お昼前になりゼリフがこういった。


「やなぎや!ご飯食べようか!あとちょっと今から人呼ぶから。」


 へ?


 人呼ぶってなに???


 私がよく分からない展開に戸惑っている間に、カーリーは昼ご飯の用意をはじめ、ゼリフ(兄)はさっさとどっかに行って(きっと人を呼びにいったのだろう)、ハニフ(弟)も知らない間にどっかに行った。


 ほどなく、カーリーがご飯を持って来て、並べているとゼリフ(兄)が帰ってきた…


2人の警察の制服を着た男達とともに




 いや、ゼリフよ、分かる。うん分かる。
 きっと、この2人はゼリフの多分友人か何かなんやと思う。
 なので、
 「日本人の客人が家に来てるんだ!ぜひみんなでもてなさないか?」
 的な好意で、呼んできてくれているのだとも思う。

やけど、イキナリ制服の警官とか来たら、なんも悪い事してなくてもめっちゃ怖いからな!


 ゼリフよ、落ち着いて考えてみよし!
 もし、日本(じゃなくてもいいよ、異国でもいいよ)で初対面のまだ「この人いい人なのかな…」みたいな若干不安のある状態で、イキナリ、

 「ちょっと人呼んでくる!」

 って言われて、帰ってきたら制服の警察2人と一緒って…

 絶対、怖いよね?
 絶対「俺、なんかしたっけ?」って思うよね!?


 と言う私の気持ちはつゆ知らず、ゼリフは帰ってくるなり真っ直ぐ私のところに来て、全開の笑顔で、2人を紹介してくれた。

 へ?なんかこの人めっちゃ偉い人なん?署長…みたいな感じ?


 や、ゼリフくんよ、そんな偉い人連れてきたら、なんか私、マークされてる気がするんですけど!


 「署長!こいつが目的もなくアフガニスタンに来た怪しい日本人ですわ…今のこのアフガニスタンに目的も来る外国人なんて普通ないでしょ。何か悪の組織と繋がってて悪い事するかもしれませんぜ。とりあえず今のところ何にもしてないので泳がしときますか…」

 みたいな事言われてたらどうしよ💦


 最初は、ほんの少しだけ警戒していたが、食事を一緒に食べて雑談をして警察たちの満面の笑みをみているうちに、
「私の危惧は考えすぎなのだろう、もし本当に私をマークして何かしようとしているのであれば、それはもう仕方ないか…」
 と思えるようになった。

 …それにしても、ハニフ(弟)はどこいったんだろう。

 そして、そんなお昼の時間をゼリフと、ゼリフの同僚の警察官たちと楽しく過ごしていた、とあるジャララバードでの午後。

 いよいよ最終回 続きはこちら


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