087 Queenが好き (前編)

『映画 ボヘミアン・ラプソディを見て』

1.
 ボヘミアン・ラプソディを見た。
吉祥寺オデヲン、平日の昼間なのにめちゃくちゃ人が入っていた。

 Queenを初めて聞いたのは、14歳の頃、木村拓哉・略してキムタク、もっと略してキ、が主演していたドラマ、プライドにより日本でリバイバルブームとなったタイミングでだった。
 ブームを受けて発売となった『Jewels』という日本のみのベスト盤を聞いたり、当時ネット上で見かけた、いかりや長介さんの追悼Flash(めちゃくちゃ時代を感じるね)に使われていた、『Don’t Stop Me Now』を繰り返し聞いたりしていた。
なので、今回もエンディングで流れた『Don’t Stop Me Now』で、チョーさんの顔が浮かんだ。そんな人はこの世に何人いるのだろうか。

 高校生になり、自分もバンドをやったり、曲を作るようになって、いろいろと音楽を聞き漁った。
その過程で、おじさんの部屋にあった、Queenの『GREATEST HITS』を発見し、久々に聞いてみた。
中学生の頃聞いた印象とは随分違い、ボヘミアン・ラプソディの曲構成や発想のすごさに感動した。
Pink Floydなどプログレが好きだったので、プログレ的印象にも結びつけて繰り返し聞いた。

2.
 ちょうどその頃、NHKのドキュメンタリーというか、ファンが集まって話すような番組でQueen特集をやっているのを見た。

 そこで改めて、メンバー4人の人となりや、全員が作曲をすることと、その作風の違いを知ることが出来た。
 体育会系的縦社会ノリや、ロックバンドにありがちな男世界男世界したマッチョイズムが苦手な僕は、Queenのインテリンバンド的な佇まいを見て、改めて好きになった。
当時ハマり始めたXTCとも似たような、『THE理屈っぽい英国人』的ロジックで発想される曲や、文化系的空気感が好きになった。(フレディのマッチョイズム、というかマッチョな体型は、これが男の世界だぜー!!というものとは違って、本人の繊細な人格が根底に透けて見えていたので、すんなり馴染めた)

 今回の映画でも、口論するシーンでの「ケンカの仕方が、めちゃくちゃ理屈っぽい英国人・文化系ですやん!
」というところにシビレた。俺だけ!?

 中でも衝撃的だったのは、ブライアン・メイの「天体物理学の博士号を持っている」という異色の経歴、ギターを自作した、VOXのアンプを何台も積んでギターオーケストレーションしてしまう…などの「真面目すぎて変態」的な知的探究心だ。

 今も昔もそうなのだが「ロックはクズのやる音楽だぜー!!」(めちゃくちゃデフォルメした意訳ですが)的な地方ライブハウスっぽいノリが好きではなく、10代の頃から一貫して、そういう精神性の音楽や考え方に心底ノレなかった。
ライブハウスに出入りしていたときに、そういうノリに無理やり合わせようとしてもやっぱり無理だった。

 そんな中で出会ったブライアン・メイの「ド文系な理屈・発想・探究心」が生む音楽的感動にいたく惚れ込んだ!!!!そうだよね、これでいいよね、ブライアン!!!と思えた。
同じような意味で、XTCのアンディ・パートリッジも僕の中でアイドルである。

 難しい発想の曲が多いが、ライブをやり続けたから、スタジオアルバムでも頭でっかちにならず、肉体感やライブ感のある演奏がパッケージングされているところも好きだ。XTCと並んで、文化系が目指す究極のバランスの音楽だ、と思っていた。
(XTCは一時期からライブ活動をやめ、肉体感が失われて頭でっかちになってしまうが…そのバランスも好き。)

 そして、18歳ぐらいの頃には「ブライアン・メイはピックのかわりに、6ペンス・コインでギターを弾いている」という逸話を聞いてまたしても衝撃を受け、
「真似するっきゃない!!!」と自分も一円玉でギターを弾いていたのだが、弦は削れてボロボロになるし、ただただ指先が銀色になって終わった。
昔からこういうところがある。ただ、それぐらい好きだったのだ。

(続きます)


うれしいです。