20代のころ好きだったKくん⑥~アイスとかき氷と腕まくり編~
彼女がいないことが判明しても、私はKくんにどうすることもできなくて。ただKくんはそんな私の感情の機微など知らないもんだから、相変わらず萌え爆弾を落としてくるのです。
仕事中は相変わらずどうでもいいことを私に聞いてきたり、私が有給で一週間不在になる話をすると「じゃあ今日の〇〇さん(二人とも嫌いな上司)っていうLINEしますよ(笑)」とか言ってきたり。(実際にLINEはくれない)
職場の飲み会があると若手の私たちはいつもはじっこで動かなきゃいけないので席が近くになることが多くて、ある程度宴席が落ち着いてくると二人で「飲み会めんどくさいねー」「俺酒飲まないんでつまんないっすよー」「ポテト頼んじゃう?」「俺スイーツ食べたいっすよー」っていう会話をこそこそしながら楽しんでたり。
毎日毎日彼とのやりとりに胸躍らせながら、ときに苦しくなりながら私は片思いを楽しんでいた。
ある日私は午前にとれるはずだった契約がすべってしまい、手続きもやり直しになるし、めちゃくちゃ落ち込んでいた。その日の午後、Kくんの取引先に同行する予定が入っていて、午前のバタバタしているときにKくんから電話が来て、「今日もってく書類って〇〇と〇〇でいいんでしたっけ?」って何度も何度も教えた書類のことを言われて、いつもなら彼のことがかわいくて仕方がないので、何度も説明した内容でも説明してあげたりとか、書類の準備とか全部やってあげてたんだけど、私も忙しいし、ちょっと面倒くさくなって「もう何度もやってるからわかるよね?」ってちょっと突き放した言い方してしまった。そしたら彼が「すみません💦自分でやります!」っていって電話は切れた。
そして同行訪問の時間になり、彼の車に乗り込むと、彼が私のご機嫌をとろうとあせあせしている姿がかわいくって。ちょっといじわるしたくなって、「Kくん何度もやってるんだから一人で大丈夫でしょ?」って言ってみた。
「そんなこと言わないでくださいよー💦」
「今日嫌なことあって気分が乗らないんだよねー笑」
「えー、どうしたら元気でますか?」
「そうだなーアイスかな?」
「よし!じゃあアイス食べましょう!」
そういって彼はコンビニに車を停めた。
「ヤンマーさんなにがいいですか?」
「えーじゃあガリガリくんで」
「わかりました!」
Kくんはものすごい速さでコンビニでアイスを買ってくると私に渡してきた。
「めっちゃ早いんだけど(笑)」
「通常の2倍の値段のガリガリくん買ってきました!これでヤンマーさん元気出してください!」
もうやだぁぁぁぁぁぁああ好きになっちゃうよー!!!!!!!!
「めっちゃご機嫌うかがわれてるんだけど私(笑)」
「ヤンマーさんがいないとだめなんですから!」
照れ隠しで素直に喜べない私、今思うとかわいくないなぁ。
「このあと契約がとれたら帰りにかき氷食べましょうよー。〇〇町に気になるお店があるんですよ」
「いいねーかき氷おいしそー!」
まってまって、これはどこまで本気の誘いなの!?私わかんないよ!結局契約はとれたけど、時間的に食事する時間はなくて、特にその話題が出ないまま会社に戻ることになってしまった。
その後、彼と私がかき氷屋に行くことはなかった。もしかしたら、いつか彼と行けるかなって思ってたんだけどね。
会社から戻ってきて、契約の後処理で私と彼はパソコンに向かって黙々と作業していた。Kくんはなぜか腕まくりしていて、たくましい二の腕があらわになっていてドキドキしていたら、嫌いな上司が通りかかってK君にこういった。
「おい、K!なんでお前腕まくりしてるんだよ!ヤンマーに男らしいところ見せたってしょうがないだろ!」
Kくんは困ったように苦笑いするしかなくて、私もムカッと来たけど大人の対応しなければと思い、「そんなことないけどなぁ~うふふ☆」と言ってやり過ごした。上司が去った後にKくんが私に近づいてきて真剣な顔してこそっと言ってきた。
「あれ、ヤンマーさんに失礼ですよね…」
ずきゅーん
当時の私は今現在よりも痩せてるとはいえやっぱり周りの女の子に比べると太ってて、上司や先輩から散々体がでかいだの親方だの言われて、馬鹿な私はへらへら笑って「ひどーい!」とか「秋場所は頑張ります!」とか冗談で返したりして。だからKくんがそんな風に言ってくれたのが嬉しくて。でもやっぱり素直になれない私はふざけてしまった。
「でもね、私前からその腕まくり気になってた(笑)」
「なんかくせなんですよ~。別にやる気があるわけじゃないんですけど、これがあればヤル気ある風にみえるかなってww」
「なにそれふりだけ?ww」
「こうすれば実績もあがりますかね?」
「むしろもっと腕まくりすればいいんじゃない?ww」
優しくて、かっこよくて、思いやりのあるKくん、すごく好きだったな。
Kくんのことを思い出せば思い出すほど、今好きな人と共通点が多すぎて、私はまた同じ道を歩み始めているんだろうな。勝手に好きになって、勝手に盛り上がって、あっという間に離ればなれになって、時間とともにに失恋していって…。
Kくんとの思い出は、思い出しては大事にしまって、思い出してはしまって、を繰り返して、この思い出は誰にも話したことがなかった。みんなが誰と出会って、デートして、付き合って、結婚して子供が出来てっていう話をしている中、こんな中学生レベルの片思いの話なんてできなかった。誰にも知られずに片思いして、人知れず恋をあきらめて、すごくしんどかった。
もうKくんほど好きになれる人は現れないと思ってたけど、また人を好きになって。ただ、好きな人に毎日会えなくなって、来るはずのない連絡を毎日毎日待ち続けて気が狂いそうになるのをこうしてKくんとの思い出を書くことによって気を紛らわせるために長々と毎日書かせていただいております。まだもう少し彼との美しくもほろ苦い思い出に浸りたいと思います。
次回もまだKくんとの楽しい思い出ストックがあるのでもう少し続きます。
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