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【観劇】どうしても再会したかった物語〜劇団ジェット花子「起死回生のマイガール!」〜

(画像)起死回生のマイガール!のフライヤー。改めてこちらを見ると本当にフライヤー通りのあらすじだった。

オッス、オラ矢御あやせ。観劇一年生だ!
そんなオラだが、観劇一年生でいられる期間を一ヶ月切った今日、東松原にてこんなお芝居を見てきた。

「起死回生のマイガール!」劇団ジェット花子


冒頭から話を変えていくが、この世で一番面白い物語を知っているだろうか。

その物語は、ほとんどが世間の日の目を見ずに消えていき、そのほとんどは完結しないまま終わってしまう。

その物語は、緑地に植物の写真の入った表紙だったり、ヒーローヒロインなどの描かれた表紙を開くと、白い紙に鉛筆書きの大きな字で書かれている。ときに壮大でときに破天荒なその物語は、「あなた」を夢中にさせたことだろう。

夢中になって鉛筆を走らせ、夢中になって続きを想像し、わくわくをたっぷり含んで眠りに落ちたはずだ。

あなたはその物語とはいつしか別れ、あんなに夢中になって書いたはずなのに、日々の刺激によって離れ離れになり、もう一度開いた頃にはもうその先を書けなくなっていることだろう。

そう、世界一面白い物語とは、「あなたが自由帳で最初に書いた物語」である。

今日観劇した「起死回生のマイガール!」はそんな大人によって作られた、「自由帳から飛び出した世界一面白い物語」だった。

あらすじは極めてシンプルだ。
宇宙生物に侵略された地球。対抗しうる手段である刀は刀身を失っている。
タエは失った刀身を求め、最後の手段で単身、平行世界へと向かう。
そこで家族やクラスメイト、先生、ご近所の人や幽霊、宇宙人の力など、周りの人の力を借りて刀を復元し、なんだかんだこちらの世界にやってきた宇宙生物を倒す!

というもの。
要するに、女の子が家族や一癖もふた癖もあるけど性根の優しいご近所さんたちの力を借りて悪者を倒す物語だ。

この物語の愛おしいところは、絶対にハッピーエンドにたどり着くと約束し、それを裏切らなかったことだ。
この物語に裏切りなどは絶対に欲しくなどなかったが、見事にそれを成し遂げた。

多くの創作に関わる人ならば、誘惑に負けて細工を施しそうな展開がある。それを避け、あくまで王道を突き進み、あくまで走り抜けるように物語を終えたのだ。とても痺れた。

私は、この舞台に「あの自由帳の白いページの先」を見た気がした。それは確かに、予想のできてしまう結末かもしれない。だが、それでいい。
あの頃の私達が思い描いたのは、誰もが救われて、それでちょっぴり切ない物語だったのだから。

純粋で王道のそれは、その空気のような透明さと輝きさゆえに、私達は再び書くことができなくなってしまう。

それ故に、まともにやれば恥ずかしいのだ。
だが、この舞台にそんな恥ずかしさはほとんど見えなかった。
うまく、あの頃のワクワクやキラキラだけが抽出されていたのだ。

なせだろうと考えたところ、そこは演出による細工と団員・客演たちの腕によって見事にまとまっているからだと気付かされた。

登場人物たちは皆がみんな奇人変人のやべーやつらなので、それはそれで楽しくより愛おしさが爆発的に跳ね上がる。もはや四桁同士の掛け算である。

主人公姉妹の「こっちの世界の博士」をゴミを見るような目で見ているところが最高だったし、先生が勢いで脱いでしまったり、同級生が謎の変貌を遂げたところとか最高だった。

近所の私服でホークスのユニフォームを着てるおじいちゃんの狂気が好きだった。いるよね、こういう人!と絶対いねーよこんな奴!のちょうど間にいるのだ。ギリギリを攻めている。

更に、まっすぐ故に恥ずかしくなりがちなシーンは音楽を流し、ダンスで解説するのがまたいい。公演時間短縮に繋がり、あの世界から掴んで一度も離さなかったのが凄い。

とにかく、自然と笑顔が湧いてきて、心の底からエネルギーが湧き上がってくるような、わくわくしっぱなしの70分だった。


ここでこれを読んでいる皆様にお願いがある。
あの頃、ワクワクしながら自由帳を書いていた人がいれば、どうか、劇団ジェット花子の次回公演をぜひとも見てほしい。

※フライヤー画像は掲載許可を頂いています

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