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【過去ログ】恋する二酸化炭素

これは、片想いについて綴ったものである。

そう書いたものの、実は何か書くネタがあるわけではなく、だからこれから何を書こうか困っていたりする。何故、こんな恥ずかしくて甘酢いっぱいテーマでペンを走らせねばならんのか、理由はわからない。しかし、それにはきっと訳がある気がするのだ。或いは、そう思いたいだけかもしれないが。
ただ一つ言えるのは、僕は今パンツ一丁だってことだ。

片想いについて、パンツ一丁で語ることなどあるのだろうか、と僕の理性が本気で悩みはじめた。本能は言う。いや何を言うか、物を書くのに格好などそんなの関係があるか。。人はパンツ一丁になると「そんなの関係ない」と発言する権利を得られるのだ。そんなの関係ねぇ!!

僕が片想いをしていたのはいつ頃だったか。 

こういうのは実録が面白い。(ただし、面白いと思うのは他人で、自分はただ恥ずかしいだけで面白くなかったりする)

中学生の頃、僕には間違いなく好きな人がいた。これは大事なことだが、「好きかも?」という曖昧で日本的なシロモノではなく、僕には珍しく、確固としで明確かつ明瞭な「好き」だった。
僕の自伝が刊行されるとすれば(されるわけないが)、彼女は間違いなく僕の「想い人」として記録されることだろう。

そんな彼女は同じ文芸部で、
無論、黒髪の乙女である。

黒髪以外はあり得ない。僕の好みがどうとかではない。校則が他のカラーリングを許さないのだ。彼女の長い黒髪は梅酒のコマーシャルみたいにさらりとして美しい。…かと思えばまとめ方は「おさげ」というこのギャップ萌えである。無意識の産物なら純粋に可愛らしい。作為的なら一生ついて行きたい策士っぷりだ。

女性的な美しさと、少女的な可愛さ。その間にあるはずの溝〈ギャップ〉を彼女は自由自在に行き来してみせる。その度にトキメク馬鹿な男子がいるもんで、それが僕なのだからやれやれである。

プールの授業後に現れた彼女を見て、僕は蜃気楼がみせる夏の幻かと思ったが、なに、ただの女神だった。彼女のヘアスタイルの初期設定はおさげだ。その形態を維持するヘアゴム、その拘束から自由になった黒髪は、水気を帯びたまま肩の下まで垂れていた。ヴィーーーーナス。那須高原。髪が乾くまでの午後の授業中はボー那須タイムだ。

我思う故に春あり。要するに、僕は思春期だった。

彼女のことを思うと、何やら胸の辺りがモヤモヤして、そのモヤモヤはため息となって、不定期な間隔で吐き出され、空気中に溶けていった。

「恋する二酸化炭素」
「やくしまるえつこの曲みたいだね」


僕のため息が地球温暖化に貢献しはじめた頃、僕の頭の中を泳ぐ思考のほとんどは彼女にまつわるエトセトラとなっていた。カニ食べいこう。北海道いってみたい。

片想い、今ではもっぱら、肩重い。

閑話休題

片想い前提で話しているが、実際の真相は闇である。なぜなら告白を控えたからだ。
控える、といえばあたかも「本当は告白とか全然余裕なんだけど、空気を読んでやめておく」大人なニュアンスになりませんか。ところで、「骨なしチキン」って凄い悪口に聞こえるよね。

そんなわけで、当時の彼女の気持ちは知りません。前半で彼女は女神だとか散々気味の悪いことを書きましたが、実際は何も考えていません。あの時の僕はただただ彼女の存在にドキドキしつつも、ただただ話して笑わせたい、彼女の笑顔がみたいと願う少年でした。
思春期だからエロい妄想すればいいのに、脳内紳士がそういった下劣な妄想の一切を封じ込めていた記憶があります。いつから好きになったかは不明ですが、思春期の恋などそういうものなのかも知れません。話してるうちに、好きになってしまうのです。頭の中を春にしてしまうのです。

述懐、おわり。







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