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NPSの導入準備#1_NPSは単なるアンケートでなく経営システム

転職を機に、SaaSプロダクトの企画を担当しています。(いわゆるPdM)
まだまだ入社して日が浅いため、PdMと呼べるには程遠いのが実態です。

そんな中、プロダクトの改善点をユーザー起点で実施することを目的に7月頃を目途にNPSの導入を検討しています。

いまやNPSによる評価が消費者側も一般的になっていますが、導入する立場としてちゃんと原理原則を知っておきたいと思いNPSの教科書とも言える本を手に取りました。

ツールはちゃんとその意味を理解して利用しないと効果が薄れてしまうのでしっかり読み込んで行きたいと思います。

文字数:約5,600

参考図書

第I部 ネット・プロモーター・システムの基礎

第1章 悪しき利益と良き利益、そして究極の質問

・経営者はロイヤルティの高い顧客は何度も自社の製品やサービスを購入し、友人に紹介し、貴重なフィードバックを提供し、価格にそれほど敏感でないと分かっている
・一方でリーダーの顧客志向を日々追いかけ、議論し、管理するのはやはり財務指標
予算のプレッシャーやコスト計算などに日々追われ、近視眼な見方に流され、顧客や従業員に背を向けるような意思決定を行い、「悪しき利益」としか呼べない安易な餌に誘惑されるがままになる
良き利益は顧客の熱心な支持によってもたらされる
満足した顧客は実質的に企業のマーケティング部門の一員となり推奨者(プロモーター)となる
良き利益を生むための顧客へのアプローチは「自分がしてほしいことをする」と言うシンプルな教訓に帰着する
・主に財務会計のレンズを通して自社の成功を測定している企業はロイヤルティなど無用で、リレーションシップなどどうでもよく、顧客第一でなく利益第一であることと等しい
・良き利益と悪しき利益を識別するための質問は「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか」である(=NPS)
NPSはどんな企業の顧客も3つのカテゴリーに分類できる
①プロモーター(推奨者)
+ロイリヤティの高い熱心な顧客で、自らが継続購入客であり、友人にも顧客になるように薦める

②パッシブ(中立者)
+満足はしているがそこまで熱狂的でなく、競合からの働きかけになびきやすい

③デトラクター(批判者)
+劣悪な関係を強いられた不満客

高いロイヤルティを誇る企業は競合他社に比べてマーケティング費用や新規顧客獲得コストを大幅に抑制できる

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P40〜68

第2章 成果を測定する基準

従来の顧客満足度と実際の顧客行動、企業の成長との間にほとんど関連性が見られない
・究極の質問に行き着くまでに4,000人以上の顧客に関して詳細な情報を入手してテストした
・究極の質問は理に適っている、なぜならサービスや製品を本当に気に入っている人々は自分が大切に思う人にその企業を紹介する
顧客は二つの条件が満たされない限り、個人的な推奨を行わない
①その企業が優れた価値を提供していると顧客が信じていること(理性を惹きつけるもの)
②そこ企業とのリレーションシップに対して顧客が良い感情を持っていること(感情に訴えるかけるもの)

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P70〜87

第3章 NPSが利益ある成長をもたらすメカニズム

NPSはあらゆる事業部に導入可能な単一の基準
・NPSのメリットは売上成長に直結しており、行動を引き出せること
・質の高い顧客とのリレーションシップの構築には大きなコストがかかる
・より良い顧客リレーションシップの経済的価値を理解するには、批判者→中立者か推薦者に変えることにどんな価値があるかを理解しなくてはいけない
NPSの向上にどのくらいの価値があるのかを定量的に示すためにLTVに着目すると、推薦者、中立者、批判者で格段の違いがある。さらにこれを以下に分解して考える
①顧客維持率
・批判者の離反率は高く、リレーションシップの期間も短く収益性は低い
・顧客としての平均的な継続期間を予測するには、「薦めますか」の質問とあわせて、顧客になってからの期間も聞けば良い
②価格
推薦者は他の顧客ほど価格に敏感でない
③年間購入額
・推薦者の購入額は批判者よりも早いペースで増加する、これはより多くの品目を贔屓のサプライヤーに集約する傾向があるため
④費用対効果
批判者は頻繁に苦情を寄せるので、サービスの手間がかかり、貸倒のリスクも高い
⑤口コミ
・評判や推奨に惹かれて選んでくれた新規顧客の割合を必要ならば調査し定量化しておく
・これは新規顧客のLTVは、販売費やマーケティング費用の節約分も含めて全て推奨者に割り振る
・逆に否定的なコメントは批判者から発信されるので、これにより成長を妨げられる場合のコストは批判者に割り振る
・このコストを推測する簡単な方法は、否定的なコメント1件で肯定的なコメント何件分が相殺され、潜在的な紹介者が何人失われるのかを推定すること

・NPSそのものが目的ではなく、顧客とのリレーションシップの質を測定するだけであり、質の高いリレーションシップが収益性を伴う成長の必要条件であり十分条件ではない

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P90〜P116

第4章 エンタープライズの物語

・レンタカー会社であるエンタープライズ社のESQiと言う独自指標を元に顧客満足度と会社業績を伸ばした事例
<興味深い点>
①顧客への質問を「直近のレンタカーの利用経験に対して、どのくらい満足しましたか?」のひとつに集約した
②ESQiを全社的な経営指標にまで昇華した
③評価においてESQiの不正を厳しく取り締まった
④社員間、拠点間の連携を強めるために、投票制度を設けて、社員同士の改善を作った
レンタカー返却時すぐに「サービスはいかがでしたか」「利用体験をもっと良くするためにできることはありますか」「問題があった部分について何かできることはありませんか」と質問し顧客の利用体験向上に注力した

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P118〜136

第5章 NPSを測定するには

・ネット・プロモーター・システムは考え方はシンプルだが、信頼性の高い測定プロセスを作り上げるのは難しい
<NPS測定の原則>
①究極の質問を尋ね、それ以外の質問は極力減らす
・顧客の背景を理解するためのデータはもっと集めたくなるが、せいぜい追加質問は1つか2つに絞り少なく抑える
質問が多いと顧客の時間を浪費し、回答率を押し下げる
・質問が増えると複雑を増す原因となり、不要な追加コストを生む
顧客がつけたスコアの理由を深く知りたいなら、担当マネージャーや現場責任者が電話またはメールで回答者に連絡し個別の対話を設けること

②有効な評価尺度を選び、それを使い続ける
・1~5点法でエンタープライズのように機能している例もあるが、0~10点法が特に実用的
・ただし、国によって採点傾向に違いがあることは留意しておく
日本やオランダではほとんどの顧客が10点をつけない、一方ラテンアメリカでは10点が極めて一般的

③自社顧客調査(ボトムアップ)スコアと外部調査(トップダウンorベンチマーク)スコアを混同しない
・競合に対する自社の位置づけを把握する最良の方法は、トップダウンのスコアあるいは外部ベンチマークスコア
・企業は一般的に質問者も回答者も調査依頼者を知らない2重盲険(ダブル・ブラインド)法でスコアを測定している
・トップダウン調査が以下の3つのルールに従っているかが重要
A)適切な顧客がその調査に回答しているか
B)正直に回答しているか
C)競争相手との優位な差異が得られるための統計上十分なサンプル数か
トップダウン調査は相対的なスコアを求めるのに不可欠だが、毎日・毎週の改善には役立たない、改善のためにはクローズド・ループの仕組みが必要
ボトムアップ調査は学びを得て変化をもたらす強力な仕組み

④適切な回答者からの回答率を高めることを目指す
最も収益性が高く、最も推奨したいと思ってくれているコア顧客やターゲット顧客からフィードバックを集めることに取り組む方が良い
NPSは単なる意識調査でなく、顧客を分類し、具体的に定量化できる形で行動を予測することである
推奨者/中立者/批判者がそれぞれ何人いるのか、その理由はなにか、時間の経過とともにその数がどのように変化しているか、を正確に把握する
・サンプル数も重要だが、回答率にも着目し、低ければアプローチを再点検すべき

⑤財務データと同じ頻度でNPSの報告や議論を行う
・報告頻度を増やすほど新しいアプローチや戦術を試みて、それによる改善状況を検証する機会が増える
顧客との取引頻度が少なかったり、顧客が頻繁な調査に辟易とするなど、絶えず顧客からのフィードバックを受け続けることが難しい場合もあるだろうが、決して諦めてはいけない

⑥調査単位を細かくして、より早く学習し、責任を持たせる
・財務データの測定は全社レベルだけでなく、事業/製品ライン/地域/店舗別など細かい単位で測定すれば個人や小さなチームが意思決定を行えるようになり、また結果に責任を負わせることが可能になる
・NPSについても同じような正確さと細かさが求められる
・注意すべきことは「特定の顧客接点(サービスデスクへの問い合わせなど)における満足度」と「全体的な顧客リレーションシップに対するロイヤルティ」とを区別すること
・顧客サービスにおいては「問い合わせいただいた問題はすべて解決しましたか?」という質問に続き「弊社を友人や同僚に薦めますか」と2つ質問をすればよい
・顧客リレーションシップについては「薦めますか」という質問とその理由を絞って、より幅広い顧客とのサンプルに対して調査を行うことができる。理想的には顧客セグメント/顧客別収益性/問い合わせの種類/サービス上の問題点別などマネージャーが結果を整理できるようにデータを組み合わせて利用できると良い

⑦正確さを担保し、バイアスを取り除く
<NPSの測定値に影響を及ぼす4つの要因>
A)報復の恐怖
・顧客が否定的な評価をつけることで、人気の新製品を供給してもらう順序が下がったりすることを恐れて否定的な評価を避ける傾向
・正直なスコアを引き出す方法は、守秘性を保証すること。例えば個々のスコアを非公開にし、担当窓口には平均スコアを報告するなど

B)収賄と互助
・実施側が高い評価を得るために賄賂や優遇を行うリスク

C)サンプルの偏り
・人為的なNPSを押し上げる最も簡単な方法は批判者に調査票を送らないこと
・ごまかしを別にしてサンプルの偏りは必ず存在する。中立者や批判者に時間をかけて調査に答えてもらうことは難しいため、推薦者の回答率が必然的に高くなる
・このバイアスを最小にする唯一の方法は、適切な顧客サンプルから非常に高い回答率でデータを獲得する仕組み

D)点数インフレ
・フィードバックが改善につながると思えなかったり、否定的なコメントをするとその追加調査のために居心地の悪い議論になりそうだと思うと、顧客は否定的なコメントを躊躇するようになる
・対処法としては、適切な時期に第三者を通じてフィードバックを求めることと、正確にスコアをつけることの重要性を示すこと

・NPSの調査方法は対面、メールなど複数あるが、その方法によって数値が変わってくる(一般的にメールのほうが素直に答える傾向がある)
大切なことはフィードバックを集める方法に一貫性を持たせること

⑧顧客のスコアと行動の相関を実証する
フィードバックに対するバイアスやごまかしを効果的に取り除く方法は1つだけで、個々の顧客のスコアとその後の実際の行動との相関性を定期的に検証すること

ネット・プロモーター経営
顧客ロイヤルティ指標NPS「利益ある成長」を実現する
ISBN978-4-8334-2033-4
P138〜165

<所感>

NPSのことを知るためにAmazonやWEBでどの本が良いか検討していました。
最終的にNPSを発明した本人であるフレッド・ライクヘルド氏の本を購入しました。
最初にこの本を手に取った時の正直な感想は「0~10のアンケートだけなのに、やたら分厚い本だな」でした。

しかし、いま第I部まで読んでみて、「読んでおいてよかった!」と思っていますし、NPSがなぜ誕生し、ここまで広く普及しているのかをかなり理解できました。

この本の序章にも記載されていますが、

NPSは単に顧客満足度を測定する方法の一つでなく、ビジネス哲学であり、オペレーションを行うためのシステムであり経営者が関与すべき事柄

Net Promoter Score→Net Promoter Systemとし、経営の意思決定の仕組みにすることで顧客とのリレーションシップを強化することができる

この意味が良く理解できました。

また本文中の引用にはなりますが、NPSをScoreからSystemにするための重要なポイントは3つあります。
これも意識して導入しないと「一回測定して満足」で終わってしまいますね。

①なぜNPSの取組みが必要かを、経営課題の観点から経営トップが最初に組織に対してコミュニケーションし、その後もトップ・経営幹部が率先して顧客の声に触れ続ける
②推奨者をどう増やすか、どう顧客を喜ばせてファン顧客を増やすに、より焦点を当てる
③結果責任を個人・事業単位が感じ、継続的改善に繋げられる仕組みを作る

P175


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