見出し画像

謝らなくていい値上げの実現のためにすべきこととは?

日経新聞に味の素の藤江社長のインタビュー記事が非常に興味深かったです。

趣旨としては、日本の価格は安すぎる。だから、賃金も安くなる、そして、貴重な労働力が確保できなくなる。だから、コストダウンの努力はするけども補いきれない部分は値上げを行う。世界的にも日本は値上げがしづらい社会だ。値上げを謝らずにできる社会にするために、企業体質の改善と価値の追求を進めていく、というものです。

大手食品メーカーとして、しっかりと先頭に立って価格改訂を進めていくという意志が表明されています。リーディング・カンパニーが価格を引っ張ってくれるのは、その他の企業にとっても追随しやすい環境を切り開いてくれていると言えます。

他にも、小売りとのパワーバランスにも触れており販売奨励金というメーカーとしてはプライベートブランド(PB)の脅威の中では触れることが難しいであろう点にも費用対効果を見直すと発言されています。メーカーの経営者としてはかなり勇気のいる発言だと思います。

マーケティングの観点から言って非常に正しいことを言われていると思います。マーケティング・ミックスの一つの価格(P)が重要戦略であることには間違いありません。でも、実は価格を決めるのは企業ではありません。その価格で買う、買わないを決めるのは顧客だからです。

だから、もしその価値が無いと思われれば顧客は迷わず安価なPB品を買うことになります。当初、値上げをして売上が落ちた冷凍ギョーザもすぐに回復したと言われていることからも顧客は味の素の冷凍ギョーザのブランド価値を認めていることになります。

この記事に一つ注文を付けるとするならば、原材料メーカーや下請け業者の価格改訂に対するスタンスについても言及して欲しかったです。

現在は大手企業が納入業者の値上げ交渉を受け付けないということは社会的に認められなくなってはきています。それでも納入業者にとっては大手企業相手の価格改訂には気持ち慎重にはなるでしょう。値上げ交渉の場はいまでも”謝罪”から入るところも多いはずです。

買う側の立場として、”値上げを謝らなくていい社会を創る”という姿勢を明確にしてくれればより一層、この記事の重みが増したと思います。「社員が『給料が安くて味の素の冷凍餃子すら買えいない』って言ってますから値上げさせてください」という理由でも応じるってくらいの強いメッセージならもっと良かったかもしれませんよ。

記事では、物価指数の伸び率のグラフが出ていますが、食料品(生鮮食品除く)の伸び率は全体と比較しても大きいとも報じています。今年は賃金上昇がしっかりと物価の伸びについていけるのかが鍵となるでしょう。そして、その議論には日本の雇用の7割とされる中小企業労働者の賃金も含まれないと「安い国」脱却にはならないでしょうね。

日曜日の日経記事を読みながら考えたことです。

最後までお読みいただき有難うございます。

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?