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月またぎレビュー2016「1月→2月」

だいぶ遅くなりましたが今月分です。

【アート】
あざみ野フォト・アニュアル「考えたときには、もう目の前にはない 石川竜一 展」 @横浜市民ギャラリーあざみ野
昨年の木村伊兵衛賞の受賞作家。はじめてじっくり見たけど「沖縄」という注釈に収まらないとても豊かな写真家でした。今は「沖縄」から離れ、サバイバル登山に挑んだ新シリーズ「CAMP」の展開がはまっていて期待です。
ちなみにこの数日後、沖縄のロケハン資料を探している人がいたので『絶景のポリフォニー』とか『okinawa portraits』とかをおすすめしておきました。2月21日(日)まで。

あざみ野フォト・アニュアル「平成27年度横浜市所蔵カメラ・写真コレクション展『自然の鉛筆』を読む」 @横浜市民ギャラリーあざみ野
1844-46年に出版されたタルボットによる世界初といわれる写真集『自然の鉛筆』を軸に、19〜20世紀の初めにかけて写真とカメラが多くの人に広まっていく様子を見ることができます。この『自然の鉛筆』の中で、「記録」「描写」「複製」など、写真が抱える諸問題に踏みこんだ言及が既になされていることも知ることができてよかった。
同書は日本語翻訳に論考がついた形で出版されます。→『自然の鉛筆』
2月21日(日)まで。

村上隆の五百羅漢図展 @森美術館
日曜美術館で村上隆さん本人が、自分の集大成だと言っていましたが、まさにそう。描画線、構図、色彩、図像の引用など、あらゆることが複雑に重なりあってて、完成度の高さに息を飲みます。色使いと手数の多さ、形の奔放さも刮目ですが、それらの点で特徴付けられがちな「アウトサイダーアート」と比較しても、及びもつかないほどの緻密さが全体に走っていて壮絶な見応え。3月6日(日)まで。


【映画】

「傷物語Ⅰ 鉄血編」
背景がすごい、さすがの映画クオリティ。それからなるほど、四肢欠損の女性がのたうちまわる描写は、地上波では厳しいのだろうなと。会話劇に興じるあまりなかなか進まないストーリーは、西尾維新なのでまあしょうがない。


【テレビ】
「僕だけがいない街」
原作の漫画が高く評価されているらしい、というのはなんとなく知っていましたが、想像以上におもしろい。タイムリープものでありながら、「やり直し」の時間的な幅が絶望的なほど広いため、リニアな緊張感と伏線の緻密さに目が離せません。

「昭和元禄落語心中」
(だいたい)毎回、作中人物が演じる落語が一本まるまる聞けるのがすばらしい。そしてそれを演じている声優がいるんですよね。演じる声を演じる、というそのすごさに打ち震えます。声優といえば、昔は苦手だった田村ゆかりさんや小倉唯さんにも最近では矜持を見出せるようになってますが、またそれとは別の次元で心地よい聞きごたえがあります。


【本】
『SWITCH Vol.34 No.2 ◆ 藤原新也 新東京漂流』
藤原新也さんは著名な写真家ですがあまりよく知りませんでした。津田大介さんとの対談がスタンスを掘り下げていてわかりやすかったです(対談は津田マガで完全版を読む)。掲載の写真には、AKBからハロウィンの渋谷、SEALDs、陸前高田や福島、沖縄から小保方さんまで。なるほど、このニュース性。
それから先日TPAMで見た、韓国のユン・ハンソルとグリーンピグによる「語りの方式、歌いの方式―デモバージョン」では藤原新也の「全東洋街道」から「パンソリ」が引用されていて、不思議なつながりを感じました。

『ある島の可能性』 ミシェル・ウエルベック
文庫版が発売になり、未読でしたがつい先ほど購入。ポーランドの演出家、マグダ・シュペフトさんが上演した、という話であらすじを聞きましたが、オカルトとSFが折り重なる世界観にとてもひかれます。ぜひ舞台作品も招聘してほしい。表紙写真は『プラットフォーム』の文庫版も手がける伊丹豪さん。

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