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デザイン経営の本質とはなにか?~デザイナー・エンジニアが上流を担当することについての危惧~

こんにちは。榎本です。
今日はデザイン経営について話したいと思います。

なんで、ディレクターバックグラウンドでデザイン経験(グラフィックデザイン・プロダクトデザインなど)がない僕がデザイン経営?と疑問に思った方もいるかもしれませんが、広い意味での「デザイン」を自分は最近していたのではないか?と感じたためです。

では、デザイン経営の本質と実態で起きている問題ということで見ていきましょう。

デザイン経営で起きている問題

昨今、デザイン経営をはじめとしてデザイナー・エンジニアがより上流を担うという試みが非常に多いと感じています。
個人的にはこの動きは大歓迎で、どんどん推進していくべきと心から思っています。

しかし、実際複数社でデザイン経営を実践するときに、この上流を担っていることで困る問題が非常にあります
それは大体のデザイナー・エンジニアが上流を担当したケースで次のような問題が起きているからです。

・デザイン経営やバリュープロポジション、アジャイル経営のようなフレームワークをただ当てはめてなぞって、キレイなアウトプット(資料、パワポが多い)を作って終わりのケースが大半。

・「デザイン」を広義の意味で、ということを言いつつ、狭義の意味のデザインで問題解決を図ろうとする。(ミッションやビジョンをおしゃれなカードにして持ち歩けるようにする、会社のカルチャーを表現するポスターをつくる、デザインガイドラインを作ってそれに遵守させる)

・デザイン経営が事業課題や経営課題と紐付いていなく、優先度の低いことで逆に事業の成長を妨げるような動きが多い。(ブランド認知が課題でないフェーズで、appleのようなブランドを見た目の統一感だけで作ろうとして、動きが遅くなる。)

・デザイン経営を組織の中で独立した持たせて、予算が降りる反面、既存組織との調整が困難なままカオス化する。

これらにあげたものは、複数社で共通して見かけられていて、その全てが狭義のデザイナー・エンジニアとしては非常に優秀で、かつ意識が高いためビジネス一辺倒の経営ではいけない!という課題意識を持ちつつも、こうした問題が起きるため、半年~数年でその問題に気づいて結果、その時の失敗体験をベースに本来的なデザイン経営などの取り組みを再度しようとしてもしづらくさせる、という負債を残すケースです。

そして、これらはすべて抽象思考力の差が生み出していると思っています。
ただこれらを実務面で素晴らしいアウトプットを出せるエンジニア・デザイナーにもとめてできるというのは、上位0.01%程度ではないか?と思っております。
そもそもスペシャルなスキルを持ちつつ、こういったジェネラルなスキルを持つことは非常に難易度が高いため、責めることはできないでしょう。

デザイン(経営)の本質

さてとはいっても、今のビジネス一辺倒で機械論的に指標を分解したり、短期的な収益だけを評価するマネジメントスタイルに問題があることは間違いないです。

デザイン経営はそもそもそういったところの問題意識から始まっているはずで、ユーザーを中心としたり、分離している部署をデザインで全体性を担保することが役割かと思っております。

デザイン(経営)の本質とは次のようなものではないでしょうか?

コンセプト(本質性):企業や事業として立ち返る哲学・思想を核としてまとめたものをベースとすること。
ストーリー(一貫性・設計性):コンセプトをベースにして、一貫した担保されるような設計をすること。
ディレクション・マネジメント(全体性):ストーリーを各所と調整して、全体性を無理ない形で保つこと。

一般的なグラフィックデザインは、ストーリーの部分でコンセプトに沿う一貫性を保ちつつ、細部のディテールまで伝わるように完成度の高いものを作ることが強調されています。
それが狭義の意味のデザインの意味かと思います。ストーリーの中でも一部を普段の業務では専門性特化して強めているからです。

デザイン経営が求められる課題背景

ではそれぞれの要素で欠けていることで起きている問題を見ていきましょう。

■コンセプトの欠如
大半の日本企業が欠けているのはここではないでしょうか?ユーザーのことは度外視もしくは、科学的な手法でだけ理解をしようとして、結局は利益だけを追求する形になっています。それでは、結果的にうまくいかず、経済成長も一切していないのも伺えます。
そして、これを作成するには哲学や思想をベースとした抽象的な取り組みが必要になり、ただのデザイン思考の付箋を使ったワークショップでは不十分なのです。

詳細はこちらにまとめております。

■ストーリーの欠如
次によくあるケースがこちらです。ほとんどの企業で僕はまともな経営戦略を見たことがありません。あるのはただ利益をKPI分解したものや、重要課題のリストであり、差別化のための一貫した戦略=ストーリーではないです。機械的な分解で終始していて、統合されたものではないんですね。
これを作成するのも、ユーザー視点だけではなく、ビジネス(持続性)・技術(実現性)との設計された一貫性が必要になるのですが、高い視座でこれを実施することは難易度が高いと思います。

■ディレクション・マネジメントの欠如
最後にかなり困難となるのは、ストーリーをいざ描いても現実問題は様々な対処すべき問題がおきます。おそらく現在の日本企業の経営で一番困難なのは、予算をミートさせて投資家の期待に沿うような、投資家マネジメントでしょう。ストーリーを描いても、それ通りいかないことがある=完璧な計画はないので、それの調整が求められます。
デザイン経営でよく独立部署としてクリエイティブ部門などをもたせますが、問題になるのはここでしょう。組織運用フローに沿っていないので意思決定フローや組織調整が非常に煩雑になってしまうのです。
派手ではないのですが、もっとも現実課題としては重要なことかと思います。

それでもデザイン経営は求められる

最後に、それでも日本にはデザイン経営が急務でしょう。
30年間、先進国の中で唯一経済成長しておらず、課題となっているのはイノベーションです。

そのイノベーションのためには、上記の要素が必要なためです。
ただし求められるハードルは非常に高いと思います。それでもやっていく、そして負債を残さないようにやらないと、さらなる悪循環の渦に飲まれることになります。

完璧な人材はいなくても要件があれば、チームで解決していけると思うため、このnoteがなにかの助けになれば幸いです。

僕も模索中のため、ぜひいろいろご意見ください!

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