チューリップは2度咲く

小学校が春休みに入る前、
長女が学校からチューリップを植えた鉢を持ち帰った。
「花が咲くまでうちで育てるんよ。うえきばちは新学期になったらまた学校に持っていくの。」

4月に入って何日かすると、チューリップは花を咲かせた。
「(球根に)オレンジって書いてたけど、赤い花やん!」と突っ込む娘。

チューリップは夜になると花を閉じ、翌日、日が昇るとまた花を開く。
そうして花を楽しみながら数日が経ち、小学校も新学期を迎えたある日のこと。

庭に出た僕は、チューリップの花の異変に気付いた。
「?!」

昨日まで咲いていたチューリップの花は、大きな花びらをバラバラと落とし、茎と同程度の太さの”めしべ”だけが寒々と残されていた。
(ちなみに、チューリップの花びらは6枚あるように見えるが、そのうち3枚は”がく”で、正式な花びらは3枚らしい)

前日に見たとき、だいぶ花びらが弱々しくなってきたなぁ…と感じていたが、いきなりこの姿になるとなかなかの喪失感がある。
チューリップは、絵本や保育園のイラストなどにもたびたび登場し、なんとなく陽気なキャラクターというイメージを持っていたので、この姿とそんなイメージとのギャップに僕は言葉を失った。

やがて小学校から長女が帰宅。
「あっ」と言って、鉢に近づいた。

忘れることもあったけど、せっせと自分で水やりをしていた娘も悲しむだろう…と思って観察していたら、地面に落ちた花びらを拾い始めた。
「これで色水つくれる」

のちほど「めっちゃ赤い汁出た。手ぇ真っ赤や!」と報告があった。
鉢のそばには、花びらをつぶしたくずが残されていた。
(ちゃんと片付けなさい…)


娘が色水につかったことで、いくらか喪失感はかき消されていたが、
このnoteを書いているときにめしべだけになったチューリップの写真を見て長女は「これ、また花が咲いているみたいやね」と言った。

自分と違う感性を持つ人が近くにいる、ということで心が軽くなることもあるものだ。

この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?