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002_AI 時代に問われる人間力

こんにちは。むーみんです。

今回は田坂広志さんの『能力を磨く』という本をご紹介します。

ライティングを始めて、自分の「好き」と「得意」がマッチした仕事に出会ったな、と日々感じていますが、そんな折に出会った本です。

本書は、インターネットが生活のインフラとなり、AI が台頭している現代において活躍する人材に求められる資質がシフトしていることを述べています。自分は AI にとって代わられる人材なのか?それとも、AI が生活のインフラとなった時代でも活躍できる人材なのか?ということを考えさせられます。

ぜひ、自分自身を振り返りながら読んでみてください。

AI が代替することが難しい能力

現代はかつてないほどの高度知識社会と言われており、知的労働の現場において人間に求められる能力は次の5つの能力に集約されます。

① 基礎的能力 ・・・ 知的集中力、知的持続力
② 学歴的能力 ・・・ 論理的思考力、知識の修得力
③ 職業的能力 ・・・ 直観的判断力、智恵の体得力
④ 対人的能力 ・・・ 非言語コミュニケーション力
⑤ 組織的能力 ・・・ 人間関係力、人間力

『能力を磨く』より

このように書いてみると、AI の方が人間よりも得意な能力と、人間の方が AI よりも得意な能力がそれぞれどの能力であるか、直感的に分かる方が多いかもしれません。

5つの能力のうち、①と②の能力は圧倒的に AI の方が得意です。
人間の脳は RAS という脳機能により、取り込む情報を取捨選択することで限られたリソースを節約し、自分の身を守りますが、AI は人間と比較すると無尽蔵に情報を蓄えておけるほか、学習により論理的に思考しているかのように情報をアウトプットすることができます。人間のように一度インストールした情報を時間経過と共に忘れてしまう、ということもありません。

そして、その際限ない記憶力、検索力により、AI は ③ の能力もじきに人間を凌駕する、と本書では述べています。

2016年に AI であるアルファ碁が、世界最高棋士の一人であるイ・セドル氏に勝利しました。知的な娯楽の一つである『碁』において、AI が人間に勝利したという事実は、まさにAI が膨大な情報と戦術の学習により、人間が長い時間をかけて習得してきた③の能力を、人間よりもはるかに短い時間で習得した、ということにほかなりません。

では、人間が AI よりも優れている能力は何か、というと、④及び⑤の能力になります。

④の対人的能力を、あえて「非言語コミュニケーション力」と表現したのは、人間は言語以外の情報で相手を理解することに長けているからです。
眼差し、目つき、表情、面構え、仕草、身振り、姿勢、雰囲気、空気など。
コミュニケーションの専門的研究によると、人間のコミュニケーションの8割は、非言語である、としています。
AI は、言語的コミュニケーションにおいては人間と同等かそれ以上に得意かもしれませんが、非言語コミュニケーション力を獲得することは難しいです。そのため、この「非言語コミュニケーション力」こそが、人間が AI よりも優位な能力なのです。

そして、④の能力を磨いていくことにより、さらに高度な能力が求められるようになります。それが、⑤の「組織的能力」です。分かりやすく言いかえると、マネジメント力とリーダーシップ力です。

ここで注意したいのは、AI 時代において求められるマネジメント力とは、ヒト・モノ・カネを Excel で管理したり、企業の経営目的のために従業員に「効率」や「生産性」を高めることを強要する「操作的マネジメント能力」のことではありません。

かつての工業社会では、操作的マネジメント能力を持つ人材が重宝されましたが、現代においては、メンバーの自発的行動を支援する「創発的マネジメント」へのパラダイム転換が生じています。

もう少し抽象的な表現をするならば、メンバーの「心のマネジメント」ができる人材が求められる時代になったのです。

AI に代替されない人材になるためには

さて、前項では AI による代替が難しい能力について述べてきました。
ここからは、AI に代替されにくい人材になるにはどうすればよいのか、について述べます。

人間が AI よりも得意な能力として、④対人的能力 と ⑤組織的能力 を上げました。
現代においては、④と⑤の能力、及び ③ 職業的的能力 を組み合わせた「実行力」のある人材が求められています。
もう少し具体的に表現すると、

自分の専門の仕事における新たなアイデアを生み出し、それを、自らの所属する組織の中で実現していく力

『能力を磨く』より

を持つ人材です。

アイデアを思いつき、周りに話すばかりで実行力に乏しい人は「アイデアマン」という評価で終わってしまいます。

ただのアイデアマンから脱却するためには、「現場変革力」を身につける必要があり、現場変革力とは、本書において以下のように定義されます。

現場変革力とは、優れたアイデアを発案するだけでなく、そのアイデアの実現を妨げる目の前の現実、すなわち、上司の判断、仲間の意識、職場の文化、会社の方針、技術的な問題、資金的な制約、制度的な壁、市場の現状、社会の仕組みなどを変えていくことのできる力

『能力を磨く』より

前項で、 AI はやがて ③ 職業的能力 においても人間を凌駕する、と述べました。そう、単に『アイディアを発案』するだけでは AI と変わりません。
人間だからこそできることが、アイディアを実行する ことなのです。

社会人でも、アルバイトでも、はたまた学生でも、周りを巻き込んで何かを作り上げた経験のある方なら分かるかと思いますが、人間一人でできることには限界があります。
チームとして物事に取り組むことで、自分に足りないスキルを補うことができ、一人で取り組むよりも、より大きなことを実現することができます。

この、「周りを巻き込む」「チームとして物事に取り組む」場面で求められる力が、④ 対人的能力と⑤ 組織的能力 なのです。

今からでも遅くありません。
人間特有の能力を育むことに今から挑戦してみませんか。

さいごに

実は、こんな文章を書きながら何を隠そう、筆者である私自身が現段階では AI に代替される人材 にほかなりません。
だからこそ、本書を読み進めれば読み進めるほど、どんどん不安になる自分がいたのです。

正直、対人的能力も組織的能力も苦手です。
でも、苦手だからといって避けていては、いずれ AI に淘汰されてしまいます。
その上、今は駆出しライターの身ですが、私は将来チームを組んで活動したい、と思っています。だからこそ、対人的能力も組織的能力も鍛える必要があります。

将来の自分へ期待を込めて。

将来の自分が、「この時、私はこんなことを書いていました。」という内容で、回顧録を書けたらいいなと思います。


それでは、また次の記事でお会いしましょう!

▼今回紹介した本
タイトル:能力を磨く
著者:田坂広志
発行所:PHP文庫


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