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プロポーズされたのにフラれたわけ

「もう時効かな……」と静まり返ったリビングで一人呟いてみる。
実は、20数年封印していた話があります。

若かりし頃のお話、少しお付き合いいただけますか?

どこまでノンフィクションかは私のみぞ知る!笑

社会人1年目、同期入社のT君(以降、彼と呼びます)と意気投合しお付き合いをする事になりました。2人で話し合い、社内恋愛なので誰にも話さず隠し通すことにしました。

彼は優しくて、良く笑う、そしてとても頭の良い人でした。
私が相談したことに対して、いつも期待以上のものが返ってくる人でした。
どれだけ長く一緒にいても気が楽で、気を使わずに好きな事が言えたり、時にはお腹をかかえて大爆笑したり、今思えばこんなに一緒にいて楽しいと思える人なんてそうそういるものじゃないとわかるのですが、その時の私は若かったのでこの有難みがまだわかりませんでした。

好きな気持ちがずっと続いて、順調に迎えた3年目の私の誕生日に
「話したい事があるんだ」と彼から。

ピン! ときましたよ。
だけどね、その時の私の気持ちは嬉しいというより「まだ聞きたくない」でした。

その時の私は、本業では本社勤務に抜擢されたり、プライベートではモデル事務所に合格してモデルとしてのステージを少し踏み出したばかり。
まだまだこれからチャレンジしたい事がたくさんあったのです。
今だったら、結婚とチャレンジしたい事の両立はできたと思います。
ただその当時は「結婚=何かを諦める」そんな方程式が私の中にあったのです。

予想通り……
「やえちゃん、結婚して下さい」と人生初プロポーズをいただきました!

もちろん嬉しい気持ちもありました。
そこで私は「これからの事はゆっくり考えていこうね」と返事をしましたが、今すぐにでも結婚準備を始めたかった彼との温度差を感じました。

その後半年程、今まで通り仲良くお付き合いを続けていた中で新たな「事件」が起こったのです。

彼の職場の派遣社員が彼のことを好きになり、猛アプローチを仕掛けている事を知りました(以降、派遣さんと呼びます)
私と彼は職場が違うものの、同じビル内だったので、階段などで彼と派遣さんが親しげに話をしている所や、派遣さんが廊下で見つけた彼に嬉しそうに駆け寄る所を目撃したりしました。
そしてその頃から、彼は今までオープンにしていた携帯を隠し始めるようになりました。

ある日デートでの帰り際、突然の彼の言葉…
「色々わからなくなってきたから、考える時間が欲しい。一度別れたい」
理由はわかっていたので聞きませんでした。

私は彼と派遣さんとの事に気付いていたし、その間で揺れている彼の気持ちもわかっていました。そもそも私の本音は(言えなかったけど)まだ結婚したくない……別れたいとの彼の申し出を受けました。

そしてまた「事件」が起きました。
彼からの別れを受け入れた1週間後の事です。

突然彼から電話がかかってきました。
「やえちゃん、あれから色々考えたんだけど、やっぱり俺にはやえちゃんしかいない。
やり直して欲しい、結婚のことも進めたい」
その言葉に嘘はなさそうでした。

しかし1週間経って冷静になっていた私は即答しました。
「やり直すのは無理だよ」
理由はこれからも色々な職場で他の女性と仕事で接する事があると思う、その度に同じ心配をしなければならない事、なにより彼に対する信頼が無くなった事でした。

お断りして半年後、彼は県外に転勤となりました。
しばらくして偶然にも、彼の転勤先へ出張となった私は、彼が元気か顔くらい見てこようと彼の席に行って話をしました。

そこで衝撃の事実が!
彼が「俺、結婚するんだ」相手は例の派遣さんです。

私のところに戻ろうとしたのに、派遣さんとの仲を終わらせてなかったんだ。
その日は複雑な気持ちで新幹線に乗り帰ってきました。

後日、彼の友人(私達の同期です)から真実であろう事を聞かされました。
私と別れた時、彼は派遣さんを突き放したそうです。
その数ヶ月後、彼は県外へ転勤に。

派遣さんは彼の事が大好きで結婚がしたかったのでしょうね。
電話をしたり、手紙を書いたり、手料理を持って会いに行ったり、とにかく彼の力になろうと一生懸命だったそうです。

派遣さんは諦めず、何度も何度も彼に「愛を与え続けた」のです。

私はと言えば、3年半のお付き合いの中で、お出かけ時の送り迎え、お店の予約、お買い物の荷物を持ってもらうのも、何もかも彼にしてもらって当たり前になっていて、彼から与えてもらうばかりでした。

そんな私でしたが、彼が結婚したいと思ったのは、当時目標を持ち夢に向かって一生懸命に努力をする姿がとても好きだったからだそうです。

「無償の愛を与えてくれる派遣さん」
「目標に向かって努力し続ける私」
の間で彼は揺れていたのだと思います。だけど彼は今すぐにでも結婚がしたかった。

そう、派遣さんを選びますよね。

プロポーズされたのに、フラれて、それなのにまた申し込まれて、断って、最後は浮気相手と結婚までされてしまうわけですが、きっと人生うまく出来ていて、彼と私は結婚する運命ではなかったのだと思います。

そして私はそんな「すったもんだ」の2年後に新たな出会いがあり、結婚し、2人の子宝にも恵まれました。
その後色々ありましたが、反抗期だけどなんだかんだで可愛い子供達と、私をメロメロにさせるうさぎ様と毎日幸せな生活を送っています。

「人生は無駄な事なんて一つもない」「自分に起こることは、偶然でなくて必然」あの頃があったから、今の私の人生がある。楽しかったことも辛かったことも振り返れば自分を成長させてくれた「愛しい」思い出です。
どうか、彼も元気で幸せな生活を送っていますように。

ずっと封印していた私の昔話はここでおしまいです。お付き合いくださりありがとうございました。

≪終わり≫

と言いたいところですが、実は続き!

その後、彼は某大手企業を辞めて公務員となり、派遣さんと結婚して幸せだかどうかは知りませんが(笑)お子さんもいて結婚生活を続けているそうです。

彼が転職をしてから20数年経ち、連絡も一切取り合わない、しかもお付き合いを周りに公表しておらず、彼の情報を私に入れる人もいない中どうやって彼のことを知ったのか…?
不思議でしょう?

なんとね、直接会う機会が出来たのです。別れてから20数年経って。

その時、私は会社で昇格し役職をいただき新しい部署へと転勤したところでした。
転勤先に同期で、新入社員研修を一緒に受けていたA君がいました。
なんとなんと奇遇な…そしてA君はビックリなことに、私の元彼T君と時々連絡を取り合う中で、今度T君も含めて3人で飲もうよ!となったわけです。

A君は知ってたのかな?
いや、知らなかったと思うんだけど…

その飲み会の後にね、私元彼のT君と2人でお茶したんですよ。

本当は笑い話で、あの時別れたくせにあの派遣さんと会ってたんだねーとか嫌味の一つでも言ってやろうかと思ったんですよ、だって私からしたら浮気されていたわけだし。

だけどね、彼と話したときにそんなこと一切言う気になりませんでした。

20数年ぶりの彼は、ハゲ散らかしてもなく(失礼な表現ごめんなさい)、老け過ぎてもなく、太ってもなく…見た目的なショックはありませんでした。

ではなぜ?何も言う気になれなかった?

それは私の中の記憶での、魅力的な彼とかけ離れていて、昔は楽しくてキラキラしていた人で、ポジティブでアイデアマンで…

20数年ぶりの彼は、あれあれ?こんなにつまんない人だったっけ?
ポジティブどこ行った??楽しいことへの追及は??人生つまんないの??人生の目標とかないの??

あーーーーー(チーーン、終了)

というわけで、この彼に嫌味も、冗談も、昔話も、笑い話も何も話す気にならなくなったわけです。

んでね、何が言いたいかといいますと
特に男性!忘れられない人がいるとかよく聞きますけど…昔であればあるほどそれは幻想!綺麗なままの記憶で残しておきたければ、会わない方がいいですね。

私は会って良かったですよ。
超現実主義だし、会って昔の美化された記憶が、現在に現実に塗り替えられて、なんだかすっきりしました。

「人生は無駄な事なんて一つもない」「自分に起こることは、偶然でなくて必然」とちょっと前に書いたけれど、そんなことを身をもって経験した、一つの出来事でした。

さて、これはどこまで「ノンフィクション」でしょうか。
真実を聞きたい方は直接飲みに(私はほぼお酒飲みませんけど)でも行きましょうね(笑)

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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