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noteマガジン「ケアとまちづくり、ときどきアート」が書籍化されました。

noteで連載していた「ケアとまちづくり、ときどきアート」が書籍化され、2020年6月18日に中外医学社から発売されました。

このマガジンは、総合診療医の私、守本陽一と福祉環境設計士の藤岡聡子さんとで、2019年1月から9月まで連載していた月額noteマガジンです。街に出ていく医療者とその周りのまちづくりをする人たちに向けて、先進事例の紹介やそこから学べることを書いていこうと、僕が聡子さんを誘ってはじめたものです。連載をはじめた当初のマガジンにもはこんなことが書かれていました。

なぜケアとまちづくりが必要なのだろう?病院を地域に開いた方がいいのはなぜ?アートを介護に持ち込むと良さそうなのはなぜ?地域包括ケアシステムの中で一大ブームになっている「ケアとまちづくり」「ケアとアート」。多くの実践例に足を運び、自身も「YATAI CAFE/モバイル屋台de健康カフェin豊岡」で実践する医師の守本陽一(もりもん)と、「長崎二丁目家庭科室」を運営した福祉環境設計士の藤岡聡子(さとこ)が、ケアとまちづくりの実践例の良さ、エモさなどを因数分解しながら、読み手のあなたと、一歩先の理想のケアとまちづくりを考えていく。ケアとまちづくりの実践者だけではなく、ケア関係者、都市計画関係者、アート関係者、そして街で暮らす、すべての方へ向けて。

週1回連載し、ときにマガジンライヴとして、音声コンテンツも配信したりし、リアルイベント「第1回ケアとまちづくり未来会議in豊岡」(こちらは別団体で行ったもので、守本が実行委員長で聡子さんと西先生を登壇者で豊岡市にお呼びしたイベント)の成功をもって、9ヶ月間の連載が終了しました。

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(第1回ケアとまちづくり未来会議の様子 写真:igakiphoto)

その後、終わり方をどうデザインするかと聡子さんと話していたときに、書籍化の話が出た。「カタチになる」という意味では嬉しい終わり方でした。僕は急いで企画書を書いて、知人につないでもらった出版社に持ち込んでみました。「面白いですね」「意義のある企画ですね」とは言っていただきました。しかし、採算性を考えると、書籍化するためのゴーサインは出ませんでした。

書籍化は厳しいかと思ったときに、僕と聡子さんの共通の知り合いだった西先生が聞きつけて、連絡をいただきました。「僕に本を書いてほしいという依頼が来ているんだけど、このコラムを書籍化したい。どうだろうか」といった趣旨でした。ワクワクして、すぐさま返信したように記憶しています。緩和ケア医としての経歴も長く、文献に基づきながら、多くの書籍を書き、その文才を遺憾無く発揮している西先生に加わっていただけることは光栄でした。そういった経緯で、中外医学社さんからの書籍化が決定しました。

ケアとまちづくり、ときどきアート

この本は、医療者が街へ出ていく意義から事例の紹介まで書き、この本を読めば、街に出ていけるように設計しました。今、なぜケアとまちづくりなのかという疑問に答えるべく、健康の社会的決定要因や孤独のリスク、つながりのメリットなどについても書きました。そして、どうすれば街に出て地域活動できるのか誰と組めばいいのか誰もが生きがいを持てる地域共生社会とはとりあえず職場の施設を地域に開くには何から始めればいいか、など、多様な面から解説しています。ソーシャルキャピタル 、社会的処方、ポジティブヘルス、地域診断など話題のテーマについても、わかりやすく解説しました。

そして、マガジンから抜粋し、ケアとまちづくりの先進事例を書いている。駄菓子屋さん併設のサービス付き高齢者住宅「銀木犀」、団地でケアを展開する「ぐるんとびー」、外国人からこどもまで集まる高齢者住宅「はっぴーのいえろっけん」、団地でキッチンを営む「やまわけキッチン」、医師が住民と落語や演劇を行う「谷根千まちばの健康プロジェクト」、医師が屋台でカフェを行う「モバイル屋台de健康カフェ」、アウトサイダーアート「ヘラルボニー」、街の居場所である銭湯「小杉湯」、長崎二丁目家庭科室などを掲載した。「新しいケアのカタチ」を紹介しています。

聡子さんは、「医療・福祉でお手本にしているところはほとんどない」と以前おっしゃっていました。もちろんケア関係者のリスペクトは大いに持っている方なので、ケアがダメといった話ではなく、医療や福祉の先進的な事例を作るには他の分野のいいところを取り入れていきたいという趣旨だと思います。その言葉の通り、聡子さんはアートやデザインの事例を数多くマガジンで紹介してきました。今回の本は、医療者向けであるため書籍に掲載できなかった事例も多くあります。詳しくは、マガジンの方をみていただけると嬉しいです。マガジンは、僕と聡子さんがそれぞれの記事に一言コメントを書いています。お互い、違う視点から事例や考えを見つめることで新しい発見につながるとの声をいただいているので、そちらも楽しみにしていただけるかと思います。

(上記マガジンは、元々の連載から告知等を除いた全35記事を掲載している)

最高にクールなイケてる表紙は、ヘラルボニーの作家、八重樫良さんの作品をお借りしました。八重樫さんは5月10日に亡くなられました。最期を前に、病床でこの作品の使用を許可してくれたそうです。ご冥福をお祈りするとともに心から感謝いたします。ありがとうございました。

「この本は医者の手に余る」という最高の帯をいただいたヤンデル先生のお言葉が似合う変わった本です。変わったケア関係者(とそれにまつわるまちづくりの皆さん)に手にとっていただければ、きっと面白いことが街中で始まっていくと思います。また医療やケアに関わることが少なかった人も新しいケアのカタチを考えることができる一冊です。手にとっていただければ幸いです。


作者プロフィール
西智弘先生(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター)
2005年北海道大学医学部卒。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。その後、2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修。2012年から現職。抗がん剤治療を中心に、緩和ケアチームや在宅診療にも関わる。一方で、一般社団法人プラスケアを2017年に立ち上げ「暮らしの保健室」「社会的処方研究所」の運営を中心に、地域での活動に取り組む。著書に『社会的処方』(学芸出版社)など。

守本陽一 (公立出石医療センター総合診療科 医員 YATAI CAFE 店長)
1993年、神奈川県生まれ、兵庫県出身。2018年に自治医科大学医学部卒業後、公立豊岡病院での初期研修を経て、2020年より現職。総合診療専門研修プログラム専攻医。学生時代から医療者が屋台を引いて街中を練り歩くYATAI CAFE(モバイル屋台de健康カフェ)や地域診断といったケアとまちづくりに関する活動を兵庫県但馬地域で行う。現在も専門研修の傍ら、活動を継続中。また地域活動を行う医療者とまちづくり関係者をつなぐケアとまちづくり未来会議でも活動している。日本学生支援機構優秀学生顕彰優秀賞、ソトノバアワード2019審査員特別賞受賞。共著に「社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法」「ケアとまちづくり、ときどきアート」など。

藤岡聡子先生(株式会社ReDo代表取締役・福祉環境設計士)
1985年生まれ、徳島県生まれ三重県育ち。夜間定時制高校出身。2010年、24歳で介護ベンチャー創業メンバーとして老人ホームを立ち上げた時から「老人ホームにはなぜ老人しかいないのだろう?」と問いを持ち続け早10年。2015年デンマークへ短期留学、その後起業。2017年豊島区にあるゲストハウスの1階で「長崎二丁目家庭科室」をつくり、住んでいる人の「好き」を起点にした表現の場に1000人以上が訪れた。2019年長野県軽井沢町に3人の子を連れて家族で移住。2020年4月に診療所と大きな台所がある所「ほっちのロッジ」を開始。在宅医療拠点を“ケアの文化拠点”と名付け、人の流れが生まれる、生き物のような場をつくろうと試みている。

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(株式会社Antaaさんの出版記念オンライン配信の際 出典:Antaaより)

最後に、マガジン35記事の中で、僕が好きな記事を紹介したいと思います。藤岡聡子さんが書いた月額マガジン、最後の記事です。表現の可能性、アートの可能性を信じ続ける聡子さんの決意と暖かさを感じました。もう少し聡子さんの挑戦的な部分を書籍に盛り込みたかったなぁという想いも込めつつ、こちらの記事、ぜひいろんな人に読んでもらいたいなと思っています。


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