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「おでんの生存確認」と「安兵衛さん」

「彼女は心底気の毒そうに、
瀕死のおでんに手をかざした。」



数年前、駅なかの居酒屋にて。
とりあえず、おでんで一杯飲ろうという段で
テーブルへ運ばれてきたおでんへのリアクションです。

ストレッチャー(深皿)に乗せられたおでんがあまりに生気を欠いていたため、息をしているか確認したのだと思います。

なかなか味わい深いシチュエーションですね。
確かに元気なさそうな食事を見ると心配になりますもんね。

確かに食べ物には「旬」というものがあり、
お料理には「食べるべきタイミング」があります。

蕎麦は打ちたて、ギョウザは焼きたて。
カレーシチューに、煮豆がめ煮はひと夜越しが美味しい。

しかし、おでんに関してはこれはたいへん難しいのかも知れません。

だしがしみていなければ「まだ若すぎる」
機を逸してしまえばくたびれて「虫の息」

好みも人それぞれであるし、煮あがりもタネごとに違う。

ちなみに僕の好きなタネはちくわぶ、くるま麩、練りもの全般。煮込み具合は味がしっかりと染み込み円熟味を増したものが好い。

これに和がらしをコテッとのせて食べたいのです。

かたわらに肩肘張らないキレのいい本醸造酒でもあれば、2時間でも3時間でもゴキゲンということになります。

ああ、おでん食べたい。

誠におでんというのは奥深い世界だなあと思う今日この頃です。


ということで、与太もほどほどに。
今日はマイベストな「おでん屋さん」をご紹介。

「安兵衛(福岡)」

写真のおでんです。
見た目は黒いのですがしょっぱくなく、上品まろやか。

味はしみしみ。大将のおすすめでお願いすれば
その時の「食べどき」の種をよそってくれます。

締めのご飯と漬物まで美味しい、歴史ある銘店です。
お近くにお立ち寄りの際は、ぜひ。

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