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母の墓前にプレスリーが流れた日①


母が旅立って約半年。まだ梅雨の明けきらない七月の上旬に、ようやく母の納骨をしました。

26年前に建てた父のお墓はメンテナンスが必要な箇所があったので、納骨に先立ってその修理をすると共に、兄達と相談して墓石にメッセージを入れることにしました。

父と母が私達に与えてくれたもの、そして私達からの父母への想い…色々考えて、「愛」そして「ありがとう」という言葉を選びました。
それからその言葉に添える花を、花言葉やエピソードと共に調べて探し、カーネーションとシオンの花に決めました。

カーネーションは言わずと知れた、母の日の象徴で、花言葉は「母への愛」「母の愛」。また白いカーネーションは、亡き母に捧げる花としても有名です。
元々は1907年にアンナ・ジャービスという米国人の少女が亡き母に白いカーネーションを手向けたのが始まりだそうです。そのアンナが提案した「母の日」が全米、そして世界中に広まっていったのだとか。

もう一つの花、シオン(紫苑)の花言葉は「追憶」「君を忘れない」、そして「愛の象徴」。
「追憶」「君を忘れない」といった花言葉は、今昔物語集に出てくる父を亡くした兄弟の話に由来しているようです。忙しくて墓参りに来なくなった兄に対し、弟は父の墓前にシオンの花を植え、雨の日も欠かさず毎日墓参りをしたといいます。

父母が与えてくれた深い愛情、私達から父母への愛と感謝、そしてずっと忘れないという追憶の想いに、これらの花がふさわしいと考え、文字と共にカーネーションとシオンのデザイン彫刻を入れてもらうことにしたのです。

しかし私達は絵心もない素人ですので、どのように石材屋さんにイメージを伝えたらいいかと悩んでいました。下絵を描くにしても、何かしらお手本やテンプレートのようなものがないと描けません。
そんな時に長兄が探してきたのが、ステンシルシートの制作・販売をしている「もじ企画」さんという作家さんのサイトでした。

ステンシルというのは、文字や絵の部分に切り込みを入れた型紙の上から、インクをつけたスポンジをポンポン押すなどして絵を写しとる手法ですが、確かにこの方法なら素人でも綺麗にデザイン画が描けますし、彫刻に適したデザインのものが多そうです。
もしかしたら石材屋さんに型紙を渡せば、それをそのまま彫って頂くこともできるかもしれません。でかした、兄!
ただ販売されている作品の中には、カーネーションのステンシルシートはあったもののシオンらしき花は見当たりませんでしたので、オリジナルデザインを特注することはできないか、「もじ企画」の作家さんに問い合わせてみることにしました。

もじ企画さんは普段はオーダーメイドの注文は受け付けていないようで、最初は困惑されたご様子でしたが、事情を話して再度お願いしてみたところ、なんと…!
花だけでなく文字も含めて、墓石のサイズに合わせたデザインをトータルで制作してくださる、と申し出てくださったのです!!
今思い出しても、こんなに親切な作家さんに出会えたことは、奇跡のような出来事でした。

そこからは、作家さんと何度もやり取りを重ねて細かく調整して頂き、私達の希望通りのデザインに近づけていくという共同作業が数週間続きました。
その過程では、私達から要望するだけではなく作家さんのほうからご提案を頂く場面もあり、私達五人家族の象徴として花の数を五つにしてくださるなど、こちらの思いを汲み取ってデザインに反映してくださいました。
またとても有り難かったのは、限られた時間の中でもYouTubeを観たりして墓石の彫刻作業について勉強してくださり、石材屋さんが彫刻しやすいように余白の幅などを計算してデザインしてくださったことです。
というのも、今回は既に建てている墓石に現地で彫って頂くため、あまり複雑なデザインは彫れないこと、余白が細すぎると墓石が欠ける恐れがあることを事前に墓所側から伝えられていましたので、それを考慮したデザインにして頂いたのはとても助かりました。そのようにして完成したデザイン画が、こちらになります。

こちらの完成したデザイン画を墓石に合わせた実物大に印刷して送ってくださいましたので、それを石材屋さんに郵送して彫刻の注文をしてからは、何のトラブルもなくスムーズに作業して頂くことができました。
ここに墓石の実物写真を掲載することは控えさせて頂きますが、おかげさまで完璧にイメージを再現して彫って頂くことができました。もじ企画さん、素敵なデザインを本当にありがとうございました♡

さて、そんなわけで墓石の彫刻が無事に完了しましたので、七月上旬に兄妹で集まって母の納骨と父のお墓参りをすることになりました。また実家で昔飼っていた犬のお骨もまだ埋葬していなかったので、この機会に一緒に入れてあげることにしました。
当日はお供えに父の好きだったビール、母の好きだったアメリカンコーヒーに菓子パン、その他果物やお花などを兄が買ってきてくれました。
それともう一つ用意したのは、兄妹それぞれに一個ずつ買った遺骨ペンダントです。小さいものですが、母のお骨をほんの少し分けてもらって持っておくことで、きっと心おきなく父のもとに母を眠らせてあげられるし、これからも母を身近に感じることができるのではと考えたのです。
そこで、納骨式の途中にその儀式を入れる旨を、あらかじめ墓所のスタッフに伝えておきました。

母は無宗教だったためお坊さんは呼ばず、家族のみが立ち会う形で式を行います。何の宗教的な縛りもありませんので、お経の代わりに母が大好きだったプレスリーを流すことにしました。
母の遺影を飾り、お供え物を並べて、プレスリーのバラードが流れる中、いよいよ納骨式が始まります。開けられたカロートの奥のほうに、26年前に他界した父のお骨が鎮座しているのが見えました。
兄が実家から持ってきた母のお骨がゆっくりとその隣におさまり、二人の間に愛犬の小さなお骨が置かれると、まるで父と母が仲良く寄り添っているように見えました。
父は26年間ずっと待ち侘びていただろうし、母も父のもとに早く行きたかったことでしょう。納骨をしてしまうと寂しくなるだろうと覚悟していましたが、むしろようやく二人を一緒にしてあげられたという思いで、なんだかほっと肩の荷が降りた気がしました。

カロートが厳かに閉められ、プレスリーの歌声に包まれながら感慨に浸っていると、ふと何か忘れているような気が…あ、あ、お骨をペンダントに分けるの忘れた!!
私達きょうだいも、墓所のスタッフも、誰一人として気づかないままお墓を閉めてしまったのでした…。
仕事を終えて帰ろうとしていた石材屋さんを慌てて呼び戻し、もう一度カロートをあけてもらったのは言うまでもありません。
「ようやくゆっくり眠れると思ったらまた開けられて、お母さんもびっくりしただろうね」と笑い合ったことも、後からは懐かしい思い出になるのでしょう。
手を合わせて空を見上げると、父母が空から並んで微笑んでいる気がしました。

(②に続く)

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