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映画『マイ・ベスト・フレンド』ー人生で最高に愛する親友へ

 最初から感想を言ってしまうんですが、この映画は30代以上の悩める女性たちにぜひ!ぜひ!観て欲しいです。たぶんこの二人の気持ちは、同年代の女性じゃないと理解できないと思う。男性にはまず受けないでしょう。

マイ・ベスト・フレンド(原題:Miss You Already)2015年公開 112分
監督:キャサリン・ハードウィック
主演:トニー・コレット、ドリュー・バリモア

映画『マイ・ベスト・フレンド』のあらすじ

 子供のころ出会ってから、ミリーとジェスは何をするにも一緒の大親友。自由奔放で楽観的なミリーはバンドマンのキットとデキ婚し、その後キットの事業が成功して裕福な家庭を築く。一方ジェスは真面目で堅実な生活を送り、整備士のジェイゴと結婚したが不妊という問題を抱えていた。
 環境が変わっても家族ぐるみで仲良くする二人だったが、ミリーに乳がんが見つかる。事実を知ったジェスはミリーを支えるも、ミリーは両乳房を切除することになる。ジェスは少ない貯金をはたいて不妊治療をして、とうとう念願の子供を身ごもるが、傷心のミリーには言えずにいた。
 両胸を失い不安定になったミリーはキットとも上手くいかず、酒場で出会った若い男と関係を持ってしまう。さらにキットが開いたパーティーにも参加せず、ミリーは心配するジェスを無理やり誘って昔憧れた「嵐が丘」の場所に行く。
 二人は小旅行を楽しむが、そこでもミリーが酒場の男と遊んでいたことを知り、ジェスは怒り一人で街に戻る。ミリーは自分の過ちに気付きジェスに謝罪し、二人はまた友情を取り戻したのだが…。

映画『マイ・ベスト・フレンド』の感想と考察

 ここまで真っ直ぐリアルに女の友情を描いた映画ってなかなかないんじゃないですかね?女の友情を描いてる作品はありますが、どれも表面的だったり綺麗なところだけ見せたり。揉めるのは男が絡んでいるか妬んでいるかって感じでしょうか。

 ミリーとジェスは正反対の性格や生活をしています。自由で奔放で何に対してもポジティブ、行き当たりばったりで享楽的な女性のミリー。真面目で堅実、恋愛もお互いが惹かれ合いゆっくり愛を育むジェス。
 別にどちらが正しくて間違っているというのはないですが、アリとキリギリスの話を思い出すと、どうしてもジェスのほうに自分を重ねてしまいますよね。実際この映画の主人公(視点)はジェスだと思います。

 ジェスにとってミリーはいつも自分より先に何でも手に入れる人。予定外の妊娠をミリーはキットに報告して結婚しますが、ジェスがこの立場ならこんなにすぐ決断できないと思います。
 しかもバンドマンでチャラチャラしてるキットが、妻子のために事業を興して大成功!リッチなファミリーになっちゃったんですから、正直真面目に頑張ってきた人からしたら「えー…」って感じですよ。(少なくとも私はそう思っちゃうかも。)
 それでもジェスも、好きな仕事をしつつ素敵な人と出会い結婚できましたからね。ただ、不妊という問題に直面し…ここでも私なら「また私が得られないものが!」って思っちゃいそうです。嫌な奴ですね、私。(笑)

 そんな悩みを抱えるジェスに対し、ミリーもまた乳がんという大きな問題を抱えることになります。乳がんというのがポイントだなと思いました。すべての女性にとって、特に見た目を大切にするミリーにとって、胸を失うっていうのは耐え難いことですよ。
 両方の胸を失い、キットとの溝も深まり、酒に溺れたミリーは若い男と浮気してしまうんですが、これは若いころやっていた享楽的なものではなく、自分が女性であることを感じるための行為だったんでしょう。ミリーはそれほど女性としての自信を失ってしまっていたんだと思います。それでも浮気は許されるものではありませんが。
 今まで散々何にでも付き合ってきたジェスも、さすがに浮気には激怒して「何やってんだよ!」と怒鳴ります。たぶん初めて親友にこうやって怒鳴られて、ミリーも自分が間違ってたと気付けたんでしょう。キットや母親から言われるよりも、強い力を持っているんでしょうね。それほどミリーにとってジェスは大きな存在なんですよね。

 この映画のテーマは「友情」なんですが、ミリーとジェスの強く結ばれた友情を感じるには、冒頭の子供時代のシーンが必要です。最初見たときはただの説明だと思っていましたが、出会ってから「何をするのも一緒だよ!」という二人の約束のようなものが、エンディングに大きく関わってきます。
 私にも散々迷惑かけてそれでも「一番だよ」って言ってくれる親友が一人いるんですが、なんかその子とすっごい被っちゃってもう号泣号泣でした。たとえ環境が変わっても絶対に変わらない絆って、きっと人生で一番大切なものなんでしょうね。

*正反対同士だから愛し合える関係(ここからネタバレあり)

 ミリーとジェスですが、ジェスの立場で考えると「なんでこんな破天荒女と仲良くしてるの?」と思いがちですが、私はミリーだから良かったんだと思います。
 同じような性格の人同士が友達になるのは、気楽だし仲良くなるスピードも早いと思います。でも、自分と正反対の人と一緒にいるのも、実はすごく刺激的で不思議と惹かれるものがありますよね。
 友情だけじゃなく、恋愛においてもそういうことってあると思います。自分に持っていないものがある人って、自分に足りない部分を埋めてくれるような心地よさがあるんですよね。
 もちろん腐れ縁もあると思います。ジェスが嵐が丘のホテルでミリーと完全に関係を断っていたら、ミリーは希望を失っていたと思いますし、ジェスも一生後悔していたと思います。お互いに支えて支えられている関係だと分かっているから、もう一度友達に戻れたんでしょう。

 私の涙腺が壊れたのは、ミリーが出産するジェスの元に駆けつけているシーンです。
 がんが転移して入院し日に日にやつれていくミリー。そんな状況だと分かっていても、ジェスは看護師に「ミリーを呼んで!」とお願いします。ミリーもそれを知って「いかなきゃ!」と言い、元女優の母親が大活躍してジェスの出産に無事立ち会えます。
 ミリーの出産のときはジェスが立ち会ってますから、二人にとって出産立ち合いは「当たり前!だって二人は何するにも一緒だもん!」なんでしょうが、ミリーがジェスのために自分のことは二の次で駆けつけるところは、本当に二人の友情にただただ泣くしかありませんでした。
 このときミリーは自分の病状とか全く考えてなかったんじゃないですかね。あと、奔放なミリーだからできた行動なんだと思います。ジェスもビックリはしたでしょうが、きっと「ミリーなら来てくれると思った」って思えたでしょうね。

 先ほど書きましたが、私にも腐れ縁で大切な親友が一人います。彼女は10代のときにデキ婚をして、現在は3児のお母さんをしつつ好きな仕事もやっています。私は20代中盤で結婚して、現在は子供のいない専業主婦をやっています。
 環境は全く違う私と彼女ですが、これも20年近い腐れ縁なのか、お互い無い部分を埋め合っているのか、単純に波長が合うのか、自分視点なので分かりませんが、この映画を観てますます彼女のことが大切で特別なんだなって感じられるようになりました。

 自分が幸せなとき、大切な人がつらいときだったら…。そう考えると、人生ってうまくいきませんよね。親友でも家族でも、自分以外のことって一生かかっても100%知るのはできないと思います。自分ですら自分自身の全てを知らない人のほうが多いんじゃないでしょうか。
 でも別に全てを知る必要なんてなくて、お互いが少しずつでも常に思いあってさえいれば、一度結ばれた絆がほどけることはないと思います。人生でミリーとジェスのような素敵な友情を築ける人がいるのは、一生の大きな財産なんでしょうね。

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