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孤独の人 〜異人たち〜



 敬愛する山田太一先生原作、大林宣彦監督の映画「異人たちとの夏」が、舞台をロンドンに移しリメイクされたということで、こりゃ、もちろん行くっきゃないっしょと、犯罪蠢く(笑)歌舞伎町トーヨコ近くのTOHOシネマズにやって来た私なのでした。


 日本版は昭和の浅草の雰囲気がよく出ていて、なんといっても片岡鶴太郎と秋吉久美子の演技が素晴らしく(評論家に言わせたら、風間杜夫の演技こそ素晴らしかった、ということでしたが)、ストーリーはともかく、郷愁、それがこの映画の一番の魅力だったような気がしましたが、洋画版はどんな感じに仕上げているのか、興味深々です。


 一応、ネットで予習をしたところ、洋画版では名取裕子演じる、主人公の束の間の恋人(じつは幽霊)を男性の俳優が演じており、つまりは、日本とは違うゲイ映画としてリメイクしているわけなのですね。


 ですから、当然「そういう」シーンはあるわけで、私の隣に座っていた、多分山田太一原作ということで、何の下調べもせずに来てしまったと思われるご高齢のご夫妻などは、明らかに「そういう」シーンで動揺されていて、ちょっとお気の毒でした(笑)。

 どうも、脚本を書かれた方の思いが反映されているのだそうです。


 あんまり多くを書くとネタバレになるので(まあ、奇想天外なことが待っているわけではないが)詳しく書くことはしませんが、主人公をそういう、疎外された人間として描くことで、なんとも言えない、逃れようもない「孤独」感が、心の中にズシーンと襲ってくるのです。


 日本版における、異人界から人間界へと連れ戻す役割の永島敏行に相当する役者さんは出てませんからね。主人公は幽霊としかコミュニケーションをとっていないのです。

 孤独なのです。


 宇宙空間の中にほっぽり出されたような孤独ではなく、群衆の中に紛れていながら、誰とも心を通い合わせることができない、あるいは通い合わせないと心に決めた孤独。


 毎日誰かと顔を合わせ、軽口を叩いて、酒を飲んだり深い話をしているつもりでも、「でも人間、みんな孤独なんだよ」と、ガッと頭を押さえつけられたような気分になりました。


 でも、毎日を流れ流れて生きていると自覚しているときに、ふと立ち止まって観る映画としては最高だったと思います。オススメです。


 で、そんな話を友人にしたところ、

「ところでお前、映画はもうシニア料金で観れるんだよね」

 ……はっ、すっかり忘れておりました(苦笑)。

老後の楽しみになればと、というか、ボケ防止に、コツコツ始めてます。