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短歌まとめ(2022年8月、25首)

#今日の短歌  でつぶやいた短歌のまとめとコメント。


家の庭で育てている鉢植えのパセリに、芋虫が10数匹集っていた。すぐに葉は食い尽くされ、芋虫たちはただ葉のない幹に取り残されていた。悔いても食うべきものはなし。その後芋虫たちは一匹ずつ徐々に姿を消していった。


自分はモスバーガーでイートインしていたのだが、ふと上を見上げるとせっせと巣作りする蜘蛛が見えたので思いついた歌。持ち帰り商品を待つ人は自分の頭上に気づかない。


五節をそれぞれ「ア段〜オ段」の仮名を重複せず使用した短歌。


自分の中に自分は居ない。自分の外にも自分は居ない。近づくまでもなく、ただ遠くに居るのだ。


終末を望むのであれば見てみたい景色のひとつ。誰一人の影もない夕暮れの荒野に、銀色の月が無限に墜落していくのだ。


死と生と人との三角関係。死を問わずして、生とは何かを問いたことにはならない。死は人が誰かなど問いはせずに訪れるし、どう生きたか、どう生きるかによって、その人がどういう人なのかが問われうる。


戦争は続く、災害は起こる、差別は止まず、飢えは途切れない。遠くで起こる如何ともし難い多くのことに心を痛め、何かできないかと細やかながら寄付をする。そうして自分の気持ちに区切りをつけ、安心して忘れる。現実はそれで何かが変わったとも言えないのであるが。


「波立てぬ」は「涙でぬ」であり、「水面泡無き」は「皆も逢わなき」でもあり。曳船道に引く船もなく、誰にも見えない場所で独り歩むのみ。


忘れるのは人間の才能だと思う。記憶するのは努力。いずれ努力は才能に追い越されてしまうものだ。


手の中に蝶はいない。でも影の中にだけ蝶が飛んでいるようだ。ひらひらと泳ぐ羽根を突き刺すように光が降り注ぐ。手の中に蝶はいない。


残るかどうかは預かり知らぬことだ。実のところ残しているわけではない(のかもしれない)。


補陀落は観音の浄土とされる伝説の山。ぼんやりと船出は始まり、いつの間にやら最後の航海に注がれている。


ブレーキランプの赤が滲んで夜になる。闇の膿漏を感じつつもバスに揺られて眠れない帰り道。ガラスに反射するスマホの画面など見たりして。


見かけなくなった近所の人が、いつの間にか亡くなっていたりする。別れもないまま、自分もいつかそうやって消えていくのかな。消えていくのだろう、と思う。泣いていても、知らない誰かが泣いている想像をすると、すこし慰めになる。


電信柱は景観を壊すとやら。人が人の生活のために建てたものも、人の目に映る美しさに適わなければ邪魔者とされ、壊されることすら望まれる。作ってくれとは頼んでない? そうでしょうとも、誰もが頼まれずともやってくれることを口にせず期待しているじゃあありませんか。何よりの絶望は、人のためにどれほどの時間と労力をかけたとしても、空の美しさの前には塵同然となりうるのが、厳然たる事実だということでしょうな。


ウキウキしたまま山向へでも飛んでいくがいい。


「狂う想」はロビンソン・クルーソー、金曜はその友フライデー。ただ独り完成した宇宙を持とうとも、その有限を越える手を伸ばしてみたい。でも無限花序は、別に無限ではない。有限との方向性の違いに過ぎない。


悟りたいと思えば思うほど悟りからは遠ざかるよね、と坂口尚の『あっかんべェ一休』で読んだ。死ぬまで悩みと悟りの繰り返しだと。それを悟ることは終わらない悩みの始まりかもしれない。


ピーチティーの甘い香り、滑らかな陶磁器、百合の毒でも添えてみなければバランスが悪い。


本当の本当に美しいものはすごく恐ろしくて、なぜと言うに、それを見ている私の目と存在が最も余計なものに思えてくるほどに完璧に美しいから。生涯に一度はそれくらい美しいものと出会えるといい。


息吹から凪まで。風はちょっと地殻まで行きたがっていただけなのにね。


赤ん坊は人形を「人の形」だと思っているのだろうか。ゆくゆくはそれと学んでいくのだろうが。


文脈を脇においておくなら、「死ぬなら一人で死ね」という言葉ほど可笑しな発言もない。誰もが一人で死ぬしかないではないか。まるで自分は一人では死なないような顔をして。誰もがひとりで耐えて、堪えて、絶えていくのだから、「死ぬなら一人で」などとわざわざ口にするものじゃない。自らの領域を侵されることを恐れた、獣の威嚇のようなものにすぎないとしても…。


差された傘を上から見たら、花の輪のように見えたので。


などと口にする裏で、悲しんだ友のつぶやきを見て、楽しくひとり遊びしているのかもしれないね。あんな日も、そんな日も、あったりなかったり。


以上。

 覚えとくためじゃあなくて どうかして忘れるために僕は歌うよ

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