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井戸水の思い出

処暑も過ぎたというのに
蛇口から出る水がぬるい
ぬるいというかぬるま湯
お湯早く沸いて助かるが
蒸し暑さから帰ったら
冷たい水で手を洗いたい

ふと初めて訪れた長野の井戸水を思い出した


祖父の葬儀に
いつもは仕舞ってあるワンピースで出向いた

厳かな筈の葬儀だが
子ども達はてんやわんや
とうとう誰かがお坊さんの頭をペチッと叩いて
全員二階へ追いやられた

もちろん二階でも大騒ぎ
時々誰かのお母さんがやってきて
「静かにしなさいっ!」
一瞬シーンとなるが
階段を降りて行き
一息つくと
何故だか一斉に大笑いの大はしゃぎ


葬儀を終え火葬場へ行き
青空にのぼる煙を眺め
父の実家に戻った

家に入る前に
背中に塩をかけ
手を洗っている

「どうして?どうして?」
母に聞いた
「そう決まってるの。お清めよ」

順番が回ってきて
お気に入りのワンピースなのに
塩かけるなんてひどいと思いながら
手を差し出した

「つめたいっ!」
手がジンジンするほど冷たかった


大きな畳の部屋にみんなで集まり
お母さん達は割烹着を着てあっちへこっちへ
お父さん達は難しい顔をして何やら話している
開け放った窓の外は明るく
白い割烹着と黒い服と
樹の天井と柱
お線香の香り

「ちょっと待っててね」
そう差し出されたコップのお水は
とても美味しかった

「おばちゃん、おいしいっ!」
「あら、うちのお水はね、まだ井戸から引いてるのよ」
「おかわり!」
「あらあら、すぐ持ってきましょうね」

大きくなって
井戸水は地下水で
地下水は15〜16°に保たれていると知った


ひんやり冷たくて美味しかったな



※タイムリーにカンピロバクターの記事をみました。
この思い出は何十年も前のもので
父の実家でカンピロバクターによる被害はありませんでした。
また昨今の土壌汚染により井戸水が飲めない状況など残念でなりません。
身近なところから地球に興味を持ち楽しく知識を身に付けましょう※

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