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買った本、借りた本①:エマソン『自己信頼』

まずは自己紹介から。
川崎市多摩区の生田に住むサラリーマンです。実家は麻生区で、独身時代東京に住んでましたが結婚を機にまた緑の多い川崎市北部に戻ってきました。
小田急線がちょうど向ヶ丘遊園駅までの複々線化を完成させる頃だったので、昔と比べて随分快適な路線になったなぁと思っています。
登戸のribot coffeeに通っています。そこで知り合った皆さんに読んだ本の話をしたり、自分のinstagramに本の感想を書いていたところ、2021年冬のBOOKBOOKBOOKというイベントで私物の本やレコードを販売する機会を頂きました。
その時、立ち寄ってくださった方々とのやり取りが楽しく、最近では登戸駅前のミライノバという広場で不定期に「住民本屋」という企画で屋台形式の古本屋を開催しています。

こちらでは読んだ本のご紹介をしたいと思います。特に学生時代から社会科学の本を読むことが多かったのでそういう本を取り扱います。

さて、今回はラルフ・ウォルドー・エマソン著『自己信頼』です。


エマソンは、19世紀のアメリカ・ボストンに生きた作家です。大学で学んだ後、キリスト教の牧師となるのですが、教会制度を巡って、教会と対立し、神への信仰よりも、内なる自分の信じるところに従えと主張を大きく変えます。
少しだけ引用します。
『外からの支援をすべて退け、ひとり立つときにのみ、人は強くなり、勝利を手にする。自らの旗下に集う者が増えれば増えるほど、人は弱くなる。ひとりの人間は、一つの町より優れた存在であるはずだ。他人には何も求めるな。そうすれば万物流転の世にあっても、あなたは唯一不動の柱として、周囲のものすべてを支えるようになるだろう。』
なかなかに過激です。檄文といってもいいくらいの熱量を感じます。決して論理的ではなく、自由に感情の赴くままに人を鼓舞する文章が続きます。私達に語ると言うより、エマソン自身が自分を鼓舞するために書いたとも言えそうです。
彼は、今まで当たり前とされてきた社会の成り立ちに疑問を持って、まず自分が思うところ、心の中にあることの実現を優先しようとしたからです。反発も大いにあったでしょう。彼は様々な説教を文字にして書き残していますが、中でも「自己信頼」が後の世でイノベーションを起こしてきた人達の座右の書となり、広く長く読み継がれてきたそうです。
かと言ってそれは「あなたには特別な力がある」とか、「前世では貴い存在だった」とかスピったり、逆に「あなたが上手くいかないのは先祖の悪事が祟っているからだ(だからお布施で浄化しよう)」とかの非合理な脅しではありません。今そういうのが社会を騒然とさせてますが、そうではなく。

もう一カ所引用します。
『持って生まれた力があるのに、どこであれ自分の外側に価値あるものを求めた結果、人間はこんなにも弱くなってしまった。』
これは「個人主義」というものです。個人の価値を重視する考え方です。

社会が大きく変わるときに、私達一人一人がその変化に気づき、その自分の感じるところを発表したり、皆と意見を交換して、実現していく事がとても重要で尊いです。決して大きな事ではないけれど、何かを成すことの大変さをふまえ、それでも自分を信じよというメッセージが本書にはこめられていて、じわじわ心にしみてきます。偉人が座右に置いてきたのもなんだか分かる気がします。

翻って私達に置き換えるとどうでしょうか。何か自分で新しい事を始めるとき、あるいは自分や家族のこれからを考えるとき、地域の困りごとをご近所さんと考えるとき、「自分がやりたいこと」があるのならやり切る時の励ましが必要になります。この本はそういう励ましを与えてくれるかもしれない本です。

見たもの、聞いたもの:ヴィンチェンツォ

本の事だけ書こうと思ったのですが、他にも面白いものは世に溢れているわけで。NETFLIXで「ヴィンチェンツォ」という韓国製のドラマを見たのですが、これが大当たり。


イタリアマフィアに貰われて養子になった韓国の少年が後年イタリア弁護士資格を取る。マフィアの顧問弁護士になった、その名もヴィンチェンツォ・カサノ。裏も表も社会を知り抜いて、ボスの死をきっかけに韓国に戻る。そして。。ってどんな話だろうと思うのですが、下町のビルの立ち退きから始まって韓国全体を巻き込んだ凄い話になっていきます。社会の裏も表も呑み込んだ壮絶な話なのに、カサノ氏と同じビルの住人達との掛け合いで三分に一回笑えるのが素晴らしいです。私達は何かを成す力が備わっているし、それを発見し、大切に育てていくいうテーマは「自己信頼」と共通すると思います。
(本稿は川崎市多摩区の登戸・向ヶ丘遊園付近で配布中のZINE「ノートリボ」に掲載した文章を、加筆修正の上記事にしております)

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